ボッシュホームコンフォートジャパンは、同社が展開する日立ブランドの家庭用エアコン「白くまくん」事業の取り組みについて説明した。

ボッシュホームコンフォート・グループ 日本ビジネスユニット長の福家秀樹氏は、「白くまくんは、2025年に50周年を迎えた。その間、白くまくんの開発、生産拠点である栃木事業所での開発力の蓄積は大きな資産になっている。ボッシュグループのなかにおいても、家庭用エアコンのグローバル設計の中心的役割を果たすのが栃木事業所になる。日本を中心に家庭用エアコンを設計し、それを世界に展開していく。日本は重要な拠点である」と位置づけ、「ボッシュグループとの連携により、世界規模で空調業界、技術トレンドを日本からリードしていく」との方針を示した。

  • 白くまくんは、2025年に50周年を迎えた

    白くまくんは、2025年に50周年を迎えた

白くまくん、ボッシュ買収後も栃木事業所を重視する理由

ボッシュホームコンフォート・グループは、2025年8月に、ジョンソンコントロールズ日立空調の株式を100%取得。それに伴い、2025年9月1日付で、ボッシュホームコンフォートジャパンを設立し、日立製作所の商標ライセンシーとしてルームエアコン事業を展開。日立製作所時代から、エアコンの開発、生産を行っている栃木事業所は、雇用を維持したまま、新会社に移管している。

栃木事業所では、ルームエアコン「白くまくん」のほか、寒冷地向けルームエアコン「メガ暖白くまくん」、冷凍機向け横型スクロール圧縮機を開発、生産している。

一方で、ルームエアコンの普及モデルについては、中国から調達しており、エアコン2027年問題により、国内エアコン需要が拡大するなか、中国モデルの販売量を増加させているところだという。ピーク時に比べると、プレミアムモデルが中心となる栃木事業所での生産台数は減少しているが、中国生産モデルが全体の半数以上を占め、全体としては日本における販売台数を増やしている。

ボッシュホームコンフォート・グループでは、長期間に渡り、「HITACHI」ブランドを使用したルームエアコンを、グローバルに展開する権利を持つほか、「白くまくん」の製品名は、ボッシュホームコンフォートジャパンが有し、日本だけでなく、グローバルへの展開も可能になっている。

ボッシュホームコンフォート・グループは、ボッシュグループの「エネルギー・ビルディングテクノロジー」事業に属しており、空調機器関連ブランドとして、「HITACHI」ブランドのほか、「Bosch」、「Buderus」、「YORK」のブランドで事業を展開。世界に50以上の生産・開発ネットワークを持ち、国際的な生産および開発体制を構築。従業員数は約2万4000人を誇る。

  • ボッシュホームコンフォート・グループ 日本ビジネスユニット長の福家秀樹氏

    ボッシュホームコンフォート・グループ 日本ビジネスユニット長の福家秀樹氏

福家氏は、「専門性とグローバル化という両面を持たないと、空調ビジネスにおける競争力が発揮できない」と前置きし、「ボッシュホームコンフォートは、高い専門性を持ち、グローバルで戦うトッププレーヤーを目指している。かつては白物家電のひとつに捉えられていたエアコンだが、近年では、各国ごとの環境規制への対応、冷媒への対応、規模をベースにしたコスト競争力が求められている。地域のニーズに適応した効率的な暖房、換気、空調ソリューションを提供することで、グローバルとローカルの両輪での事業運営を進めていく」と語った。

なお、ボッシュグループ全体では、車載向けの「モビリティ」、生産設備向けソリューションの「産業機器テクノロジー」、ボッシュブランドの白物家電や電動工具などの「消費財」にも事業を展開している。

新体制でのエアコン事業、3つのメリット

ボッシュグループとなったことで、日立ブランドのルームエアコン事業には、3つのメリットが生まれると説明した。

ひとつめは、「技術力」である。

福家氏は、「とくに、ボッシュがモビリティ領域で強みを持つセンシング、AIに関する技術に期待している。安全という観点でもノウハウを活用することができるだろう」と語る。

すでに、ボッシュのグローバルR&Dとの連携協議を開始。センサー技術やAIといったモビリティ領域の先端技術を、空調に活用する可能性を検討しているという。

「ボッシュはモノづくりの会社であり、栃木事業所が持つ技術に対しても関心を持っている。相互に連携ができる部分が増えていきそうだ」としたほか、「モノづくりに対しての理解があり、日本のモノづくりとも親和性が高いと考えている。今後、栃木事業所への積極的な投資が行われることを期待している」とも述べた。栃木事業所では、新体制になって以降、2~3年先を見据えた技術開発をスタートしているという。

2つめは、「開発力」だ。設計、生産、調達を中心としたグローバルオペレーション力と、各国の規制への対応、設置やアフターサービスにもきめ細かく対応するローカルオペレーションを、高いレベルで、バランスよく実行できる体制を構築するという。

日本では、2027年問題と称される国内での規制への対応に加えて、日本全国を対象にした設置やサービスの強化を図る。

また、プラットフォームの共通化を視野に入れた開発にも取り組む考えを示した。

家庭用ルームエアコンのグローバルプラットフォーム開発本部長には、日立製作所時代からルームエアコンの設計を担当してきた能登谷義明氏が就き、日本主導で共通化を推進。日本向けルームエアコンの開発は、日本の開発チームが引き続き継続するとともに、海外向けプレミアム製品の設計を、日本の開発チームがサポートすることになる。これにより、海外市場で主力となる普及モデルにおけるグローバルプラットフォーム化を図る。

  • ボッシュホームコンフォート・グループ グローバルプラットフォーム開発本部長の能登谷義明氏

    ボッシュホームコンフォート・グループ グローバルプラットフォーム開発本部長の能登谷義明氏

福家氏は、「共通化する部分を増やして、開発、生産におけるメリットを出していく。この半年間で、そのための準備ができた」とし、「白くまくんで培った技術力をグローバルに活用することになる。グローバルと日本の強みを融合し、白くまくんブランドを、10年、20年としっかりと育てていくことが私たちの使命になる」と述べた。

今後は、アジア地域における「白くまくん」ブランドの製品展開も検討する考えも明らかにした。

そして、3つめが、「グローバル規制対応力・市場対応力」となる。

先行している欧州をはじめとした世界各国の環境規制への対応力や、AI規制、サイバーセキュリティに関する動向の共有などを通じて、グローバル規制への対応、市場への対応力を強化する。

ボッシュホームコンフォート・グループ 製品規制部 部長の佐野泰史氏は、「代替フロンの削減は、欧州では国際ルールであるキガリ改正よりも厳しい基準を設け、2030年には90%削減としている。日本ではキガリ改正をベースに、2030年に70%削減を見込んでいる」とし、「日本のルームエアコンの普及率は90%以上と高いが、北海道では60%程度である。また、欧州でも地域によって普及率が異なる。ボッシュと一緒になることで、日本のビジネスの構築や、日本の技術を欧州で活用するといった点でヒントがある」とコメント。福家氏は、「空調はインフラである。欧州では40℃を超える日が続き、日本でも、夏場に空調がないと命に関わる状態になっている。清潔、省エネ、快適性の向上により、品質の高い製品により、エアコンが、インフラとしての役割を果たせる安心感を提供していく」と述べた。

  • ボッシュホームコンフォート・グループ 製品規制部 部長の佐野泰史氏

    ボッシュホームコンフォート・グループ 製品規制部 部長の佐野泰史氏

  • 各国、特に欧州では環境規制への対応力が大きく問われる

    各国、特に欧州では環境規制への対応力が大きく問われる

日本市場の「白くまくん」はどうなる?

日本における「白くまくん」の製品戦略についても触れた。

「白くまくん」では、室内熱交換器の凍結洗浄や、Premiumプラズマ空清による「清潔」、ファンお掃除ロボやeco運転、2027年度省エネ基準に対応した「省エネ」および「節電」、カラッと除湿や風よけエリアセレクト、つつみこみ暖房による「快適」に特徴を持つ。

ボッシュホームコンフォート・グループ グローバルプラットフォーム開発本部長の能登谷義明氏は、「ファンやインバータ、熱交換器の効率化など、ハードウェアとして電気を使わない技術を省エネと定義し、センサーを使って、人のいる場所だけを空調するなど、電気を無駄に使わないことを節電としている。省エネ大賞は、13回の受賞経験がある」とし、「清潔、省エネ、節電、快適の4つに力を注いできた。今後もこの方針に変更はない。とくに、快適については、33年前から、『カラッと除湿』を搭載し、日本市場に提供しており、白くまくんの大きな特徴になっている」と述べた。

  • 省エネ大賞は13回受賞。「清潔」「省エネ・節電」「快適」の特徴でニーズに応える開発を行ってきた

    省エネ大賞は13回受賞。「清潔」「省エネ・節電」「快適」の特徴でニーズに応える開発を行ってきた

その上で、「『カラッと除湿』は、湿度を下げる機能ではあるが、湿度を単なる快適要素として捉えるのではなく、健康や空気の品質、住環境に影響する生活の基盤であると考えている」と位置づけた。

白くまくんでは、再熱方式の除湿を採用しており、冷たい風が吹き出す弱冷房方式と異なり、熱交換器で暖めて、適温に調整しながら冷やし、湿度を除去するため、温度を下げずに寒くならないという特徴がある。室外機を通じて、外に排出している熱を室内機のなかで利用していることでこれを実現。「室温を下げずに、約40%まで湿度を下げることができる。季節や用途にあわせた利用が可能になっているのが、『カラッと除湿』の特徴になる」と述べた。

40~60%の範囲で、5%刻みで湿度設定ができ、利用者の好みに応じて室温および湿度が設定できる「手動カラッと除湿」、ボタンをひと押しするだけで、寒くならずに快適な環境に除湿する「自動カラッと除湿」のほか、部屋干しの洗濯物をすばやく乾燥する「ランドリー除湿」、カビの発生条件を見張って自動で除湿する「カビ見張り除湿」、冬場には窓への結露対策ができる「けつろ抑制除湿」を用意。夏場だけでなく、雨の日や花粉の季節、梅雨や秋の長雨、冬場など、除湿機能を1年間使えるように進化させてきた。

  • 再熱方式の除湿により、寒くなり過ぎないという特徴を持つ

    再熱方式の除湿により、寒くなり過ぎないという特徴を持つ

  • 季節を問わず、除湿機能を1年間使えるように進化している

    季節を問わず、除湿機能を1年間使えるように進化している

栃木事業所には、モデルハウスを作り、環境試験が行えるようにしている。そこで、「カビ見張り除湿」の実験を行ったところ、部屋の湿度が高まるとそれを認識し、カビが成長しないといわれる水準の40~50%になるように自動で運転を開始。ソファの裏や家具の裏といったカビが生えやすいところで測定しても、この水準まで湿度を下げていることが実証できたという。

「梅雨の時期に自宅で利用するといった使い方はもちろん、長期間使用しない別荘でも、カビ見張り除湿を設定しておくだけで、人がいないときに、白くまくんがカビ対策をしてくれるといった用途にも便利である」とした。