アイリスオーヤマは、DX清掃ロボット「JILBY(ジルビー)」を、2026年7月1日から発売する。
ソフトウェアとハードウェアの両方を、自社グループ内で初めて完全内製化した法人向け清掃ロボットで、今後3年間で1万5000台の販売を目指す。
アイリスオーヤマ 執行役員 ロボティクス事業本部の吉田豊本部長は、「アイリスオーヤマが取り組んできた5年以上のロボット事業の経験を生かし、様々な業種での導入実績を反映して完成させたDX清掃ロボットになる。日本のロボットメーカーベンダーとして、現場が求める最適なロボットソリューションを提供し、日本の労働人口の減少などの課題をロボットで解決することを目指す。ロボットをしっかりと社会実装させたい」と意気込みを語った。
スーパーやホームセンター、コンビニ、ドラッグストアなどの小売りのほか、オフィス、ホテル、病院、介護施設、工場、倉庫、自治体、公共施設などを対象に販売していくという。
「すでに清掃ロボットを導入している企業が、アップデートする形でリプレース導入を検討したり、従来の清掃ロボットの提案では導入を見送っていた企業が、AIエージェントなどの新たな機能に関心を持ち、話を聞いてくれたりといったケースが出ている。大手企業だけでなく、中小企業からも問い合わせが増えている。労働力不足が様々な企業で顕在化しており、清掃だけでもロボット化したいというニーズが生まれている」とする。
アイリスオーヤマは2020年11月に、ロボティクス事業に参入。清掃ロボット「Whiz i IRIS EDITION」や配膳用ロボット「Servi IRIS EDITION」といったサービスロボットを販売。さらに、ハードウェアを内製化した清掃ロボット「BROIT」を2024年に投入。また、SEQSENSEを買収し、自動移動型警備ロボット「SQ-2」を販売しており、これまでに7000社以上に対して、累計2万5000台以上のロボットを導入した実績を持つ。業務用清掃ロボット市場では、2023年から3年連続で国内トップシェアを獲得しているという。
2023年7月に買収したスタートアップ企業「スマイルロボティクス」(現・シンクロボ)により、ソフトウェアの内製化を進める一方、中国・大連の同社大連工場で自社生産を行い、ロボットメーカーとしての自立を目指しており、今回の製品が、完全内製化の第1弾となる。
「ハードウェア、ソフトウェア、サービスを一気通貫で提供する体制を敷き、ユーザーの声を、すぐに製品に反映できる点が、アイリスオーヤマのロボティクス事業の強みとなる。作って売るだけでなく、運用の定着まで伴走できるメーカーベンダーとしての特徴を生かす」と語る。
JILBYの開発にあたっては、同社がサービスロボット事業によって蓄積した知見をもとに、ユーザー目線による使用時の課題を抽出。清掃完了後に自動で充電ステーションに帰還する自動充電機能や着脱式バッテリーの採用、清掃中の稼働音を抑えた静音モードの搭載、10型大型モニターを活用した操作性の向上、家電事業で培ったノウハウをもとに、着脱しやすい集塵用紙パックの採用によるメンテナンス性の向上などを実現している。
また、LiDARセンサーや3Dカメラ、 超音波センサー、段差センサーのほか、センサー搭載バンパーの採用により、高い安全性を実現している点も特徴だ。
さらに、NTT西日本グループが提供する「AIロボティクスプラットフォーム」との連携により、フィジカルAIとしての活用を促進。タブレットやスマートフォンなどの端末を通じて、ユーザーとロボット間のテキストや音声による双方向のコミュニケーションを可能にしたり、蓄積した清掃データなどをAIが学習し、最適な清掃ルートや頻度、時間帯などを「AIエージェント」が提案したりすることで、清掃業務の効率化と最適化を実現する。
シンクロボの小倉崇社長は、「ユーザーイン設計という、アイリスオーヤマの思想を徹底して作りあげたロボットである」と位置づけ、「ユーザー目線での製品設計とともに、ソフトウェアを内製化しているため、アップデートや機能追加もできるようにしている。また、アイリスオーヤマでは、炊飯器や洗濯機など、毎日使用する家電を開発、販売しており、そこで培ったUXデザインの知見も生かすことができた。たとえば、操作するためのボタンの配置やサイズにもこだわっている。さらに、アイリスオーヤマの照明や環境関連製品などとの連携が可能になり、ロボット単体での販売に留まらず、サービス化した提案ができる」と述べた。
ビル設備やプラットフォームとの連携、複数ロボットの制御、環境にあわせた走行スピードの調整といった設定項目の追加などが柔軟に行えるほか、AIエージェントが、清掃状況をもとに、ゴミが通常よりも多いことを判断して、重点的に清掃するエリアを自ら提案したり、清掃結果のレポート提出、ブラシの交換時期の事前提案なども行ったりする。
「数多くの失敗を経て完成させた清掃ロボットである。スーパーやホームセンター、介護施設、病院など、様々な環境で動作するパラメータやアルゴリズムを開発した。また、JILBYは、マーカーを確認して、位置を確認しながら動作するが、暗い環境や明るい環境、西日が入る環境などでも検出できるように工夫した。安全に、安心して使ってもらえることにもこだわった」とする。
また、大山晃弘社長からは、具体的な開発指示があったことも明かす。
「自動スタートおよび自動充電の機能は必ず搭載するように指示があった。大山社長自身が、これまでのロボティクス事業の経験をもとにして、現場のニーズを理解しており、その思いがJILBYに反映されている」と語る。
JILBYの本体サイズは、約470mm×534mm×722mm、重量は約43kg。静音モードで約11.5時間、ノーマルモードで約3.6時間、パワーモードで約2.5時間の連続稼働が可能だ。
<動画>JILBYが動作している様子
なお、JILBYの名称は、Job(仕事)、Intelligent(知能的)、Labor(労働)、Bot(ロボット)、Your side(あなたのそばで)の頭文字を組み合わせたもので、清掃現場で人のすぐそばに立ち、知能的に働くロボットとなり、清掃パートナーとして価値創造を実現するという意味を込めたという。
サービスロボットの市場規模は、2022年には約4兆円だったものが、2028年には5兆円に達すると予測されている。また、政府では、AIロボティクス戦略を打ち出し、2030年までに6分野8タスクにおいて、30万台のロボットを社会実装するとともに、2040年には、全世界60兆円の市場において、製造業を中心に、約3割のシェア獲得、20兆円の市場獲得を目指している。
アイリスオーヤマの吉田本部長は、「ロボットの活用が経営課題となる時代が訪れている」としながらも、「清掃や配膳の領域では、ロボットの導入が進み始めているが、それが使われ続けているかといった点では課題がある」と指摘する。「ロボットによってDX化しても、充電が切れたり、紙パックがすぐに一杯になったりという些細なことで、すぐに人の作業に戻ってしまうことが多く、継続して使われにくい特性がある。清掃ロボットなどの活用現場に、DX主体者がいない場合が多く、継続的に運用改善に取り組む人材がいないことも要因のひとつ。ここにロボットの社会実装のボトルネックがある」と語る。
工場の現場では、生産性向上が経営課題となり、ロボットの導入による改善効果を追求する取り組みが顕著だが、清掃や警備の現場では、ロボット導入による効果を現場が主導となって検証することが少ないということも、運用や定着の難しさにつながっている。
その上で、「アイリスオーヤマは、これまでに2万5000台以上のサービスロボットを導入し、運用が継続されている実績がある。背景にあるのは、継続して利用するための仕組みづくりに取り組んでいる点。人が作業している業務フローのなかに、どう組み込んでいくかといった提案とともに、PoCに基づき現場に最適な清掃ルート設定を行うといったような細かい部分への対応も重要になる。ロボットは導入することで成果がでるのではなく、運用することで成果が出ることに着目すべきである」と述べた。
アイリスオーヤマでは、当初は、売り切り型での販売が中心だったが、現在は、サブスクリプション型を中心に展開。これも運用を重視する提案の強化につながっている。
掃除ロボットの性能だけでなく、運用、定着を重視するのが、アイリスオーヤマのロボティクス事業の特徴だといえる。











