シャープと鴻海精密工業は、新規事業における戦略的協業に関する覚書を締結し、6月24日、大阪市内で、覚書に署名を行った。

  • (右から) シャープの河村哲治社長 CEO、鴻海精密工業の劉揚偉董事長、鴻海精密工業 E事業群総経理の林忠正氏

    (右から) シャープの河村哲治社長 CEO、鴻海精密工業の劉揚偉董事長、鴻海精密工業 E事業群総経理の林忠正氏

シャープの河村哲治社長 CEOは、「シャープは、2016年に鴻海から出資を受けて、10年になるが、この間、シャープと鴻海の関係は、大きく変化している。出資当初は、主に製造領域を中心とした協業を進めるとともに、高いコスト意識や、経営のスピードといった重要な経営基盤を学んできた。その後、鴻海の事業ポートフォリオが大きく変わるなかで、両社の事業構造の最適化を狙いに、互いに協力しあいながら、シャープのデバイス事業のアセットライト化を推進してきた。今後の両社の関係は、ともに新たな事業を作りだし、お互いのビジョンの実現に向けて歩みを進める共創パートナーへと進化する。今回のMOUは、関係性の転換を明確にして、両社が次の成長をともに実現していく強い意思を示すものとなる」と位置づけた。

両社では、協業フレームワークおよびコミュニケーション体制の構築を通じて、鴻海の「3+3+3」戦略に基づいた「技術」、グローバルでの「製造力およびサプライチェーン」および「新規事業創出基盤」と、シャープが保有するグローバルな「ブランド力」、「市場チャネル」や「サービスネットワーク」を組み合わせて、研究開発および事業化に向けた協業モデルを共同で検討し、市場開拓と新規事業の加速を目指すという。

鴻海の「3+3+3」戦略は、EV、デジタルヘルス、ロボティクスの3つの事業分野に、AI、半導体、次世代通信技術の3つの主要技術を組み合わせ、スマート製造、スマートEV、スマートシティという3つのプラットフォームの構築を目指すものであり、シャープの重点分野とも親和性が高く、新規事業創出における連携も期待できる。

  • 覚書に署名するシャープの河村哲治社長 CEO(右)と、鴻海精密工業 E事業群総経理の林忠正氏(左)

    覚書に署名するシャープの河村哲治社長 CEO(右)と、鴻海精密工業 E事業群総経理の林忠正氏(左)

シャープでは、新規事業を「成長領域」と位置づけ、AIインフラ、次世代通信、ロボティクス/インダストリーDX、モビリティに取り組む考えを示している。また、河村社長 CEO自らが新規事業立ち上げの責任者となり、2030年度には、新規事業で年間2000~3000億円の売上規模を目指す考えを示している。

河村社長 CEOは、これまでにも鴻海との連携を通じて、新規事業の創出を加速する方針を打ち出していたが、覚書を結ぶことで、より戦略的に協業を進め、連携強化を図ることになる。

同日に行われた定時株主総会において、河村社長 CEOは、「新規事業の加速を主な目的として、2026年4月に事業推進体制の見直しを行った。私自身が新規事業の責任者として、新たなCTOとともに、鴻海と緊密に連携を取りつつ、取り組みを加速する」と発言している。

  • シャープの河村哲治社長 CEO

    シャープの河村哲治社長 CEO

今回締結した覚書は、「AIインフラ・ソリューション」、「エネルギー・ESG関連アプリケーション」、「ロボティクスおよびスマートオートメーションシステム」、「次世代通信技術」、「スマートシティ」などを対象としたもので、市場ニーズに適合した革新的な製品やサービスの共同開発を推進するという。

第1段階では、研究開発プラットフォーム構築の検討を開始し、鴻海が重点成長領域としている「3+3+3」戦略に基づいた「AI」、「エネルギー」、「ロボティクス」、「EV」、「次世代通信」など、鴻海が保有する技術を、シャープの新規事業創出に活かすべく、共同研究開発の実施やPoCへの取り組み、市場投入を推進し、双方の競争力強化を図る。

また、事業開発プラットフォーム構築にも取り組むという。事業化および実装の重要な基盤と位置づけ、鴻海の製造能力やサプライチェーン、グローバルパートナーネットワークに、シャープのブランド力と市場における優位性を組み合わせることにより、日本を含むグローバル市場で新たな事業領域を共同で開拓し、事業展開の加速を目指す。

新規事業の取り組みのひとつとしてあげたのが、AIインフラである。

シャープは、AIサーバー事業への市場参入を表明しており、鴻海が開発、生産しているAIサーバーをシャープブランドで展開するとともに、AIサーバー関連製品やソリューションの展開も検討している。この領域における導入支援から製品供給、運用、保守までを手掛けることで、高性能コンピューティングの実現やAIアプリケーションの急速な需要拡大に対応するという。

  • 2人が署名した「新規事業における戦略的協業に関する覚書」

    2人が署名した「新規事業における戦略的協業に関する覚書」

河村社長 CEOは、「今回の連携の基本的な考え方は、シャープのブランド力、顧客基盤、幅広い実力と、鴻海の先端技術と圧倒的な調達力、製造能力、グローバルネットワークなどを融合し、AIインフラや次世代通信、ロボティクス、エネルギーソリューションなどの成長分野を中心に。新たな事業の創出と社会実装を、これまでにないスピードで加速していくことである。シャープは、これから本格的な成長ステージに入るが、そのなかで、今回の戦略的協業は、単なるこれまでの延長線上の取り組みではなく、次の成長を実現する原動力になると確信している。今後の展開に期待してほしい」と語った。

覚書締結式には参加したものの、その場では発言しなかった鴻海精密工業の劉揚偉董事長は、ニュースリリースのなかでコメントを発表。「鴻海にとって、シャープは重要な企業であり、高いブランド価値と顧客基盤を有している。一方、鴻海は世界有数の製造能力、サプライチェーンおよびイノベーション/研究開発能力を有している。グループ全体の観点から、今回の覚書締結を通じて、両社のリソース補完を強化し、AIやエネルギー、ロボティクスなどの成長産業で新たな事業モデルを創出し、シャープの企業価値および鴻海の競争力がさらに高まることを期待している」とした。

今後は、両社は市場ニーズと産業の発展動向を注視しながら、各種領域における協業機会を慎重に検討し、連携内容を段階的に実現させていくことで、長期的な価値創出に共同で取り組むとしている。