DAIV10周年。将棋の研究にAMD CPU製品を展示。OKAMURAのチェアも
2026年8月1日。マイナビPLACE歌舞伎座タワーにて「将棋AIサミット2026 powered by DAIV 10th Anniversary」が開催された。マウスコンピューターが冠タイトルとなって開催された本イベントは昨今の将棋人気が背景なのか。定員の2倍を超える応募があったそうだ。
マウスコンピューターでクリエイティブ向けの製品となっているのが、タイトルにある「DAIV(Dynamic Approach Imagery of Visual)シリーズ」だ。今回はブランド発足10周年という節目を迎えた事もあって企画された。
会場にはAMD Ryzen 7 9700Xを使用したミニタワー製品「DAIV KM-A7G60 / KM-A7G70」と、AMD Threadripper 9960X使用の「DAIV FW-P6G80」 / AMD Threadripper PRO 9995WXを使用の「DAIV FW-P9G80」を使用したフルタワーワークステーションを展示。
いずれもNVIDIA RTX 5000シリーズを搭載した高機能製品となっており、AMD Threadripperマシンを実際に使える機会はあまりない。AMD Threadripper 9960Xで解析を行うと、48スレッドすべてCPU負荷が100%になっていたのは圧巻だった。
これらの製品のみを記載した「FOR SHOGI AI」と題した特別版のカタログも用意しており、力の入れ方をみせている。
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スポンサーブース。タイトルスポンサーのマウスコンピューターはSHOGI AIパソコンを4台持ち込み。手前がAMD Ryzen 7900Xを使用したアマチュア用パソコン。奥はAMD Threadripper 9960Xを使用したワークステーション
今回展示の製品がAMD CPUのみか? という問いに関して、スタッフは現在のIntelがP/Eという二種類のCPUコアを使用しているのに対し、AMDはフルパフォーマンスのコアのみを搭載しているため、今回デモで使用した水匠のようなCPUを多用するプログラムの動作でメリットがあると説明していた。
ちなみにNVIDIA製GPUを使用している理由として「将棋AIソフトのうち、GPUを使用するDL系のものが開発環境としてNVIDIA CUDAを使用しているため」と説明していた。
蛇足だが、かつてAMD Threadripper PROはCPU性能の高さで藤井聡太氏が「ぜひ使いたい」とツイート。
当時もRyzen Threadripper 3990Xを使用したパソコンを使っていたが、AMDはそれにこたえる形としてブランドCMに起用。当時最高峰のRyzen Threadripper PRO 5995 WXを将棋トレーニング用マシンとして提供している。
将棋AIとしてはCPUを多用するものとGPUを多用するものに分かれるが、CPU多用のソフトを高速に動かすためには現在、AMD Threadripper PROが最適だろう(が、500万という価格の製品をポンと購入できるのもトッププロだけだろう)。
今回のイベントにはOKAMURAも協賛。将棋の公式戦というと正座のイメージが強いが、椅子対局の朝日杯将棋オープン戦等スポンサー協賛やイベントを多数展開しているほか、棋士も自宅での研究時にOKAMURAの椅子を使用している。
今回もイベントでの椅子提供に加え、Contessa II/Sylphyの座り心地を体感できるようになっていた。
YouTuber「Suger」が中村太地八段と角落ち+AI補助3回で対戦
今回のイベントは5つのコーナーがあったが、一番興味深かったのはYouTuberが中村太地八段と角落ち+AI補助対局だった。
角落ちだけではSuger氏の勝利は難しいため「3回だけAIの補助を受けられる」という追加ルールが設けられた。制限時間は「一手大体20秒」。
DAIV FW-P9G80上で動作する将棋AIは局面ごとに多くの手を解析する圧倒的なパワーがある。来場者には評価画面が常にみられる状態で、評価値も揺れ動いていた。
Suger氏はAI補助を序盤では封印し、深い検討が必要となる中盤以降で使用した。しかし、3回利用したのちに追い込みをかけて中村大地八段の勝利となった。
対局後、中村八段はAI活用の難しさを説明した。将棋AIが示す最善手は必ずしも人間にとっての最善手に見えない事がある。それは最善手を指したのちも最善手を指さないと評価が急落する可能性があるためだ。読み、判断、方針の一貫性が不可欠であるという。
AIに大板解説はできるのか? 生成AIを使用した「駒あかり(仮)」
一般に将棋AIは、現在の最善手と評価値を示すもので「なぜそうなるのか?」という観点に欠けている。
この状況を変えようとしているが水匠チームでくまだこう氏が中心となって開発されている「駒あかり(仮)」だ。ステージは水匠の中心人物であるたややん氏と聞き手として小髙佐季子女流初段が登壇した。
デモンストレーションでは角換わりで早繰り銀から腰掛け銀になりつつ局面を例として扱い、駒あかりちゃんが単なる評価値の表示ではなく、人が指したくなる手やその手が進んだ際の危険性を説明していた。
また、将棋AIは悪手や疑問手の指摘が多いが、駒あかりちゃんは良い手に星マークを付けつとともに「ナイス」等の言葉でほめる機能がある。初心者のモチベーション維持の面で重要な機能だ。
仮に最善手でない場合にも単にミスを指摘するだけではなく、その局面での代替案を出すとともになぜその手がよいのかも文章で説明する。これもユーザーが今の手が悪いだけでなく、次にどのように考えればよいかわかるようになるという。
この文章生成はLLMを活用している。これまでに説明した要素を入れているほか「(この手を指すことで)三手先で飛車を取る布石となっている」のような戦略的な方針も言語化している。
また、解説者の口調を様々なキャラクターに変更できる機能が入っている。「弁護士」、「猫」、「ギャル」が例として紹介されていた。
将棋の学習が堅苦しいものではなく、気軽に楽しめる体験として提示されるが、解説のトーンが変わることで、同じ局面でも異なる視点や表現で説明されるのはユーザーの楽しみながら学べるだろう。
「駒あかりちゃん」は、従来の将棋AIでは理解が難しかった評価根拠を、自然言語で文章化する。単に評価値や最善手だけを示すのではなく、「なぜその手が最善手なのか」、「なぜその手が危険なのか」、「局面のどの要素が形勢に影響しているのか」を説明することで、ユーザーがAIの判断を理解しながら学べるようにしている。
現在の「駒あかりちゃん」は初心者向けに開発されているが、さらに開発が進めば、プロユースへの展開や、何らかの将棋サービスでの活用も期待されるだろう。
筆者は将棋を指さないが、今回のイベントは子供連れの参加者がおり、若い層にも将棋が浸透していることを印象的だった。次回の開催を大いに期待したい。















