• 【決算深読み】シャープが3割増益の通期決算、新社長下の今期計画は減収も成長意欲

シャープが発表した2025年度(2025年4月~2026年3月)の連結業績は、売上高が前年比12.4%減の1兆8928億円、営業利益は同77.6%増の485億円、経常利益は同228.3%増の579億円、当期純利益は同31.4%増の474億円となった。

シャープの河村哲治社長 CEOは、「公表値に対しては、売上高、営業利益、経常利益で上回った。最終利益は目標を下回ったものの、特別損益が大幅プラスとなった前年度と比較しても、3割超の増益となった。また、ブランド事業は、競争環境の激化や需要の低迷などから減収となったが、営業利益は前年度を上回っている」と総括。「中期経営計画の初年度である2025年度は、デバイス事業のアセットライト化に区切りを付けることができ、さらに、収益力の改善や財務基盤を強化でき、将来への布石を打つことができた。再成長に向けた基盤の構築が着実に前進した1年になった。2025年度で、大きな構造改革には区切りがつき、2026年度からは成長に向けた取り組みを一層強化していく」と、今後の成長戦略に意欲をみせた。

  • シャープ 社長執行役員 CEOの河村哲治氏

    シャープ 社長執行役員 CEOの河村哲治氏

2025年度(2025年4月~2026年3月)業績は構造改革で改善

セグメント別業績は、ブランド事業の売上高が前年比3.3%減の1兆4318億円、営業利益は同5.4%増の860億円となった。

  • 2025年度(2025年4月~2026年3月)の連結業績

    2025年度(2025年4月~2026年3月)の連結業績

  • 2025年度(2025年4月~2026年3月)のセグメント別業績

    2025年度(2025年4月~2026年3月)のセグメント別業績

そのうち、スマートライフの売上高が前年比7.1%減の5979億円、営業利益は同29.5%増の284億円となった。ASEANでの冷夏により、エアコンの市況が低迷したことや、国内市場においては、洗濯機市場において、中国メーカーなどがシェアを拡大し、市場在庫が増加した影響で競争が激化したことで減収となったが、テレビ事業およびエネルギーソリューション事業における構造改革効果もがあり増益となった。

スマートワークプレイスは、売上高が前年比0.3%減の8338億円、営業利益は同3.5%減の575億円となった。PCは、Windows11への切り替え特需や、メモリー価格高騰に伴う駆け込み需要を着実に取り込んだことで販売が伸長。その一方で、他社攻勢の影響でスマートフォンの販売が落ち込み、売上高は微減。利益についても前年割れとなった。だが、前年度に計上した一過性収益を除くと、実質的には増益になっているという。

ディスプレイデバイスは、売上高が前年比6.4%減の4235億円、営業利益は前年同期のマイナス269億円の赤字からマイナス182億円の赤字に縮小した。

アセットライト化の進展により減収となったものの、車載およびモバイル用、産業用での改善が進み、営業赤字が大幅に縮小した。

シャープでは、構造改革費用として、198億円を計上。内訳は、亀山第2工場の生産停止に伴う費用として137億円、堺ディスプレイプロダクトの事業終息に伴う費用として12億円。連結子会社の構造改革に伴う費用として49億円、そのうち、シャープ米子の事業終息に伴う費用として7億円を計上した。

  • 2025年度は中期経営計画の初年度。再成長に向けた基盤構築ができたという認識

    2025年度は中期経営計画の初年度。再成長に向けた基盤構築ができたという認識

今期は市場環境が大荒れだが、高付加価値化を軸に立ち向かう

2026年度(2026年4月~2027年3月)連結業績見通しは、売上高は前年比6.5%減の1兆7700億円、営業利益は同0.9%増の490億円、経常利益は同32.7%減の390億円、当期純利益は同11.5%減の420億円とした。

「我々が努力した成果を示すことになる営業利益では増益を目指す。儲ける力は着実についており、財務体質も想定以上に改善している。2025年度は想定以上の需要があったことで、2026年度はその反動がある。だが、中期経営計画の最終年度である2027年度の営業利益800億円の達成を目指す」と述べた。

  • 2026年度(2026年4月~2027年3月)の連結業績見通し

    2026年度(2026年4月~2027年3月)の連結業績見通し

  • 2026年度(2026年4月~2027年3月)のセグメント別業績見通し

    2026年度(2026年4月~2027年3月)のセグメント別業績見通し

  • 2026年度の前提として、外部環境は非常に困難な状況であると認識

    2026年度の前提として、外部環境は非常に困難な状況であると認識

セグメント別業績見通しは、ブランド事業の売上高が前年比0.8%増の1兆4430億円、営業利益は同7.0%減の800億円とした。

「ブランド事業においては、外部環境悪化に適切に対応し、着実に利益を創出する一方、サービス/ソリューション事業の拡大に取り組む」との姿勢を示した。

ブランド事業のうち、スマートライフの売上高が前年比11.0%増の6640億円、営業利益は同44.1%増の410億円とした。

「環境や外部環境が厳しいなか、グローバル展開の加速と高付加価値化を軸に、増収増益を目指す」という。ASEANや国内のエアコン事業、ランドリー事業を中心に販売を拡大する考えだ。米国市場でのキッチン事業にも注力する。

「エアコンは、昨年度の冷夏の影響を受けたASEANでの落ち込みが戻ること、国内においては、省エネ規制の改定にあわせて旺盛な駆け込み需要があること、また、国内のドラム式洗濯乾燥機の販売も好調である。白物家電全体では前年比10%の増収、テレビでは5%弱の減収と予測している」という。

また、重点施策である「AIoT事業の強化」に関しては、家事領域での付加価値提案」と「機器・サービス連携」の二軸で価値向上を追求。「2025年度は、生成AI対応機器や生成AI活用サービスを次々と市場に投入した。あわせて顧客データの統合も進め、AIoTの本格拡大に向けた基盤を構築した。2026年度は、この基盤を活用し、AIサービスの事業化に取り組む。さらに、AIoTのグローバル展開を加速する」という。

さらに、AIの活用提案などにより、付加価値戦略を促進することで、材料価格の高騰などを背景にした価格転嫁も進めやすくなると見ている。

中東情勢の影響は、樹脂の使用量が多い白物家電への影響が大きいという。

「サプライヤーと緊密な連携を取りながら、材料を確保しつつ、コストアップには様々な手段によって対応していく」としている。

  • 2026年度、スマートライフの見通し

    2026年度、スマートライフの見通し

  • 重点施策である、AIoT事業の強化について

    重点施策である、AIoT事業の強化について

ブランド事業のもうひとつの柱であるスマートワークプレイスは、売上高が前年比6.6%減の7790億円、営業利益は同32.3%減の390億円とした。

Windows 11への切り替え特需の反動によるPC販売の減少や、メモリーやSSDの価格上昇に伴うコスト増加による小駅の悪化などにより、減収減益の見通しとしている。

PCの販売台数は、年間で約4割の減少を想定。Dynabookは営業利益で100億円を超える減少を見込んでいる。

だが、PCやスマホの反動などによる減少を除くと、スマートオフィス事業は増益になるという。

メモリーやSSDの価格上昇については、「基本的には売価反映で対応する」とした。

「PCは法人向けビジネスが中心となっており、価格への反映がしやすいが、スマホはBtoCが中心となり、とくに普及価格の製品では、価格転嫁の影響が、数量の減少に及ぶと見ている」と述べた。スマホでは、3割程度の販売台数の減少を想定しており、年間で約10億円のマイナス影響があると見ている。

また、中東情勢悪化に起因する樹脂や燃料価格の上昇については、「現時点では先行きの見通しが難しいことから今回の業績予想には織り込んでいない。今後のコスト増には、売価への反映やコストダウン、経費削減などにより、影響の最小化に取り組む」と語った。

さらに、「オフィスソリューション事業の継続的な伸長に取り組むとともに、業務用ディスプレイ事業においては、dvLEDを中心に、欧米でのプロジェクト案件の獲得を進めるなど、ソリューション型ビジネスの拡大を図り、スマートビジネスへの転換を加速する」との方針も示した。

スマートビジネスへの転換の加速では、高い市場シェアを持つ既存ハードウェアビジネスをベースにしたサービス/ソリューション事業を強化。高付加価値化を図るとともに、成長領域における新規事業の創出にも取り組む。

「2025年度は、オフィス向けITサービスが順調に伸長した。また、M&Aを通じて、成長パートナー2社を子会社化することができた。2026年度は、この2社とのシナジーを具体化し、サービス・ソリューション型ビジネスを拡大するとともに、新規事業の取り組みを着実に前進させ、事業変革を加速する」との方針を示した。

シャープでは、2026年3月に、大阪に本社を持つクラウドERP開発のシナプスイノベーションを子会社化するとともに、ニュージーランドでは、マネージドITサービスを提供するセキュアコムを子会社化している。

  • 2026年度、スマートワークプレイスの見通し

    2026年度、スマートワークプレイスの見通し

  • 重点施策である、スマートビジネスへの転換について

    重点施策である、スマートビジネスへの転換について

亀山第1と白山を黒字化へ、亀山第2の売却は複数企業が興味

ディスプレイデバイスは、売上高が前年比23.7%減の3230億円、営業利益は前年同期のマイナス182億円の赤字からマイナス60億円へと赤字を縮小させる計画とした。注力領域である車載向けパネルと、モバイル・産業用パネルの販売拡大に取り組むという。

「ディスプレイデバイス事業においては、構造改革を完遂するとともに、亀山第1工場および白山工場などの継続事業において黒字化を実現する」という。

亀山第1工場では、2026年度下期から新たな製品を生産し、白山工場ではIT関連の製品の生産を開始することを明らかにしている。

なお、亀山第2工場については、顧客需要への対応に伴い、停止時期が当初予定の2026年8月から、2026年12月に後ろ倒しとなることを発表した。

「お客様からの最終注文に対応するために、生産終了時期が伸びた。注文数量やモデルミックスが要因となり、赤字が残った」(シャープ 専務執行役員 CFOの小坂祥夫氏)

  • シャープ 専務執行役員 CFOの小坂祥夫氏

    シャープ 専務執行役員 CFOの小坂祥夫氏

これにより、2026年度通期業績予想のなかで、90億円規模の営業損失を見込んだという。

また、亀山第2工場の売却については、複数の企業からの問い合わせがあり、「2026年度中に売却先の目途をつけたい」と述べた。

一方、AIサーバーやEV、ロボティクス・インダストリーDX、宇宙の4分野を対象にした新規事業については、「取り組みを加速し、一日も早く、実行フェーズへと前進させていく」と述べ、「AIサーバーについては、2027年度中に、日本での事業参入を目標にしており、具体的なビジネスプランやスキームの立ち上げを急ピッチで推進している。事業体制の構築に向けては、M&Aも視野に入れている」と報告した。

AIサーバーは、鴻海が日本国内で生産するものだけでなく、鴻海が海外で生産するAIサーバーを日本で販売することも視野に入れている。

  • 2026年度、ディスプレイデバイスの見通し

    2026年度、ディスプレイデバイスの見通し

ブランド事業の存在感が増す、新社長は「再成長」へまい進

なお、シャープでは、2024年度まではブランド事業への投資比率が約4割だったが、デバイス事業のアセットライト化により、2025年度は約6割に拡大。2026年度は約8割をブランド事業に振り分け、成長を加速することになるという。

シャープの河村社長 CEOは、「再成長に向けた基盤の構築については、一定の手応えが持てる段階まで進めることができた」としながらも、「シャープの現在の事業構成を見渡すと、収益の中心は、依然として成熟領域であり、今後、持続的な成長を実現していくためには、新たな成長事業の早期立ち上げが不可欠である。また、中国企業の台頭などを背景に、競争環境が想定以上のスピードで激化し、収益基盤であるブランド事業が減収に転じており、立て直しが必要となっている。さらに、メモリーやSSD価格の高騰、中東情勢の不安定化、金利上昇や円安の定着など、外部環境の変化が、収益確保に対して強い逆風になっている」と指摘した。

その上で、「今後は、現在の中期経営計画における基本戦略を維持しつつ、新規事業の創出やサービス/ソリューション型ビジネスへの転換など、事業変革をより一層加速するとともに、成長の土台となる足元の収益基盤のさらなる強化に取り組む必要がある。加えて、鴻海との連携をこれまで以上に深化させ、Win-Winの関係を築くことで、取り組みスピードを一段と向上させていきたい。再成長に向けた課題をひとつひとつ乗り越え、成長軌道への転換を目指す」との考えを示した。

  • 将来の成長を見据えた新規事業の創出に取り組む

    将来の成長を見据えた新規事業の創出に取り組む

また、2026年度の方向性として、「足元の事業環境は非常に難しい状況が続いているが、2026年度は、成長の土台となる収益基盤を、いま一度、強化するとともに、事業変革を、スピード感をもって着実に前進させ、再成長に向けた新たな形を築いていく」と述べた。