日本語プログラミング言語「なでしこ」公式サイト

自宅について、賃貸と持ち家のどちらが良いのかという議論を時々見かけます。もちろん、双方にメリット・デメリットがあるので、一概にどちらが良いとは言えないと思います。とは言え、マイホームを購入する場合には、ローンを組むことが多いと思いますので、プログラミングでローンを組む場合の計算をしてみることにしましょう。実際に自分で計算するなら、ぐっとマイホームが身近になることでしょう。

お金を借りたら利息を払う必要がある

マイホーム購入において、最初に考えるべきポイントは、ローンの返済が可能かどうかです。高額な不動産を現金で買える人は多くありません。そこで、銀行でお金を借りて家を買うことになりますが、見過ごせないのが利息の存在です。当然、お金を借りたら利息を支払う必要があります。

どのくらいの利息がかかるのかは、お金を借りたときの状況に左右されますが、主要都市銀行の住宅ローンの利息は2017年11月時点で、平均1.243%程度(10年固定金利の場合)とのことです。そこで、今回は、金利(年利)1.3%で考えてみましょう。

1.3%と聞くとそれほど高くないように思いますが、実際にはどうでしょうか。仮に2000万円を借りたとすれば、年間で26万円(2000×0.013)もの利息がかかります。ただし、一般的に住宅ローンは、月々支払っていくものなので、毎月いくらずつ利息として払っているのかを計算してみましょう。

月々の利息の計算は「利用残高 × (年利 ÷ 365日)×30日分」になります。以下のようなプログラムで実際の利息額を計算できます。Webブラウザで使える「なでしこ簡易エディタ」に入力して実行してみましょう。

 元金=2000
 年利=1.3 ÷ 100
 利息=元金 × (年利 ÷ 365) × 30
 利息を表示。
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    初回の支払時の利息を計算したところ

実行してみると、2.1369...万円という結果がでます。つまり、初年度はだいたい月2.1万円ずつ利息を銀行に払っていくという計算になります。

月々の支払いシミュレーションのプログラム

もちろん、毎月お金を返済していくので、銀行に支払う利息は減少します。それで、もし月々10万円ずつ返済していくと決めたなら、10万円から約2万円を引いた約8万円を元金から減らします。そして、翌月は、借入残高の約1992万円に対して利息を計算し支払います。それで、借入残高(元金)が0になるまで繰り返し、この計算を続けるなら、何ヶ月後に完済できるのかが分かります。

それでは、支払いシミュレーションを、なでしこのプログラムで計算してみましょう。ここでは、2000万円を銀行から借り入れし、毎月8万円ずつ返済していくことを想定しています。

 # --- 設定する項目 --- (*1)
 借入金額_万=2000
 金利パーセント=1.3
 支払額_万=8

 # --- 基本的な計算 --- (*2)
 借入金額=借入金額_万 * 10000
 金利=金利パーセント / 100
 月利=金利 / 12
 支払額=支払額_万 * 10000
 元金=借入金額
 利息総額=0
 返済期間=0

 # --- 月々を計算 --- (*3)
 結果=「| 合計月 | 利息額 | 残額{改行}」
 (元金 > 0)の間
     # 利息を計算し元金(借入残高)を減らす --- (*4)
     利息=CEIL(元金 * 月利)
     返済額=支払額 - 利息
     元金=元金 - 返済額
     利息総額=利息総額+利息
     # 結果を美しく表示するための書式変換 --- (*5)
     Y=INT(返済期間/ 12) 
     M=(返済期間 % 12)+1
     返済期間=返済期間+1
     利息表示=利息を通貨形式
     元金表示=元金を通貨形式
     結果=結果&「| {Y}年{M}ヶ月 |  {利息表示} | {元金表示}{改行}」
 ここまで。
 # --- 結果表示 --- (*6)
 「返済年月: {Y}年{M}ヶ月({返済期間}ヶ月)」を表示。
 「返済総額: 」&通貨形式(借入金額+利息総額)を表示。
 結果を表示。

プログラムを実行して見ると、2000万円を返済するには、毎月8万円ずつ払うなら、24年4ヶ月(292ヶ月)が必要だということが分かります。このプログラムでは、ボーナス払いや金利の変動などを考慮していないため、実際のローン返済とは若干異なりますが、ローンを考える際の参考になることでしょう。

  • ローン計算の結果を表示したところ

    ローン計算の結果を表示したところ

それでは、この30行ほどのプログラムを確認してみましょう。プログラムの(*1)の部分では、基本的な値を変数に代入します。ここに挙げた変数の値を変更することによって、自分が計算したい実際の金額を求めることができるでしょう。

プログラムの(*2)の部分では、単位を「万円」で指定してもらった値に10000をかけて単位を揃えたり、これから計算する利息の総額や返済期間のための変数を0で初期化します。

そして、(*3)の部分では、「○○の間」構文を利用して、元金が0になるまで繰り返しプログラムを実行します。(*4)の部分では、元金(借入残高)を元にして利息を計算し、元金を減額します。このプログラムでは、年利を12ヶ月で割った月利を利用して利息を計算しています。

(*5)の部分では、月々の表を出力するために書式を変換します。そして、最後の(*6)の部分では、返済年月と返済総額、および、月々の表を出力します。

まとめ

どうでしょうか。マイホーム購入では、ローンを組んだ場合、不動産そのものの金額に加えて、銀行に利息を支払う必要があります。しかし、ローンの返済が完了してしまえば、その後は、家賃が要らなくなります。今回の計算では、2000万円の家なら、月々8万円を24年4ヶ月支払えば、それ以降は家賃が無料になるということが分かりました。

賃貸と持ち家に関する議論について、よくある結論としては「長く住むなら持ち家が得」というものが多いですが、今回の試算からも、それが分かったのではないでしょうか。しかし、マイホームを購入してしまうと、簡単に住み替えができないことや、自然災害による倒壊のリスクがあることなど、当然デメリットもあります。一般的に、マイホーム購入というのは、人生でも数少ないイベントです。そのため、どちらが自分にあっているのか、慎重に比較検討してみましょう。

自由型プログラマー。くじらはんどにて、プログラミングの楽しさを伝える活動をしている。代表作に、日本語プログラミング言語「なでしこ」 、テキスト音楽「サクラ」など。2001年オンラインソフト大賞入賞、2005年IPAスーパークリエイター認定、2010年 OSS貢献者章受賞。技術書も多く執筆している。