米モトローラ・モビリティが2026年7月15日、同社初となる横折りタイプの折り畳みスマートフォン「motorola razr fold」の国内発売を発表したが、MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)が、それを10万円も値引販売するキャンペーンを実施するという。スマートフォンの値引きに厳しい規制が敷かれる中、IIJが10万円もの大幅値引きを実現できるのには、MVNOという立場が非常に大きく影響している。
30万円近い折り畳みスマホを10万円引きで販売
2026年も夏真っただ中の7月に入ったが、スマートフォン市場では秋冬の時期を見越して新製品投入に向けた動きが再び加速しつつある。その先鞭をつけたのがモトローラ・モビリティで、同社は2026年7月15日に、新しいスマートフォン「motorola razr fold」の国内発売を発表している。
これは同社が2027年1月に海外発表したスマートフォンの1つで、「razr」と名が付く通り折り畳みスマートフォンの1つとなる。従来のrazrシリーズは縦折りタイプだったのに対し、motorola razr foldは同社初となる、横折りタイプのスマートフォンとなっているのだ。
実際、motorola razr foldは閉じた状態で約6.6インチ、開いた状態では約8.1インチの大画面ディスプレイを利用可能。別売りのペン「moto pen ultra」を用いることで、韓国サムスン電子の横折りタイプのスマートフォン「Galaxy Z Fold7」でカットさられたペン操作にも対応させるなど、大画面を活用しやすい仕組みが整えられている。
またチップセットには米クアルコム製の「Snapdragon 8 Gen 5」を搭載するほか、バッテリーも6000mAhと、5000mAhを超える大容量を実現。背面のカメラも広角・超広角・望遠の3眼構成で、全てのカメラが5000万画素であるなど、非常に高い性能を備えている。
それゆえmotorola razr foldは、横折りタイプのスマートフォンとして十分競争力があるモデルといえそうだが、気になるのはやはり価格だ。横折りタイプの折り畳みスマートフォンは特に値段が高い傾向にある上、昨今の円安とメモリ価格の高騰を受けてスマートフォンの価格自体がここ最近急騰しているからだ。
それゆえmotorola razr foldも、同社のオンラインストアでの価格は29万9800円と、一般消費者が気軽に買い替えられるとは言い難い価格となってしまっている。だがMVNO大手のIIJは、コンシューマー向けモバイル通信サービス「IIJmio」でmotorola razr foldを大幅値引き販売するキャンペーンを実施するという。
具体的には、IIJmioの「ギガプラン」の音声SIMまたはeSIMを番号ポータビリティ(MNP)で転入して契約し、それと同時にmotorola razr foldとmoto pen ultraとのセットを購入すると、キャンペーンが適用され19万9800円で購入できるとのこと。moto pen ultraの価格(1万2000円)も考慮すれば10万円を超える値引きがなされているだけに、大きな驚きがある。
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IIJのWebサイトより。IIJmioの「ギガプラン」の音声SIMにMNPで転入することで、30万円近いmotorola razr foldと、moto pen ultraのセットを10万円超の値引きで販売するキャンペーンを実施するとしている
独立系MVNOは電気通信事業法の規制対象外
ただここで多くの人が気になるのは、スマートフォンの大幅値引きが法律で禁止されているのに、なぜIIJは10万円もの値引き販売を実現しているのか? ということだろう。その理由は非常にシンプルで、IIJは法規制の対象外だからだ。
携帯電話会社によるスマートフォンの大幅値引きや、高額な違約金による契約の“縛り”などを規制しているのは電気通信事業法の27条の3(移動電気通信役務を提供する電気通信事業者の禁止行為)なのだが、全てのモバイル通信事業者がその対象となっている訳ではない。
現在、その対象となっているのは、1つに自ら基地局などのインフラを持つ携帯電話会社とその親会社や子会社、関連会社など。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯4社はもちろん全て規制対象だが、KDDI傘下で「BIGLOBEモバイル」を提供するビッグローブや、「J:COM MOBILE」を提供するJCOMの地域会社11社など、4社系列のMVNOも規制対象となっている。
そしてもう1つは、独立系のMVNOでシェア4%を超える事業者だ。4%というシェアは契約数がおおむね500万人相当とされているが、MVNOで大手のIIJや、「mineo」ブランドでサービス展開するオプテージであっても契約数は100万クラスに留まる。
それゆえ現状、独立系のMVNOは電気通信事業法27条の3の規制対象とはなっておらず、一連の禁止行為も適用されないことから、先のIIJの事例のように、携帯4社ができないスマートフォンの大幅値引きも自由にできるのだ。
規制対象が事実上、携帯4社とそのグループに限定されているのは、総務省がMVNOの競争力を高めたいためだ。シェアが大きく資金力が大きい携帯大手が、スマートフォンの大幅値引きや契約の縛りなどで顧客を囲い込んでしまうと、資金力に乏しい独立系MVNOの競争力が失われ寡占が進んでしまうことから、大手事業者に規制をかけて独立系MVNOの競争優位性を高めようとしている訳だ。
それだけにこの規制は、MVNOの競争状況に応じて見直しがなされてきた経緯もある。電気通信事業法27条の3の大幅な改正がなされた2019年当初、規制対象となる独立系MVNOのシェアは0.7%、契約数にしておよそ100万とされていたことから、実はIIJやオプテージも規制対象となり携帯4社と同じ規制がかけられていたのだ。
だが規制対象となった2社からは、携帯大手と比べ事業規模が小さいにもかかわらず、同じ規制がかけられることの負担が大きいとして反発の声が挙がっていた。それに加えて2019年以降、携帯大手が低価格の料金プランやブランドを強化したことで、低価格に強みを持つMVNOの競争力が急速に落ちていた。そうした背景もあって2023年に規制対象のシェアが0.7%から4%へと見直しがなされ、2社は規制対象から外れたのである。
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総務省が2023年10月に公表した「電気通信事業法施行規則等の一部改正について」より。当初独立系MVNO2社も規制対象だったが、その後MVNO全体の競争力が低下したこともあって規制対象のシェアが4%に引き上げられ、規制対象から外れることとなった
そして実は今後、さらに携帯4社傘下のMVNOも規制対象から外れる可能性がある。そのきっかけは、2025年末から総務省で実施されている「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」で、KDDIのグループ企業であるJCOMが、携帯4社グループのMVNOが独立系MVNOよりシェアが低いにもかかわらず、規制対象となっているためMVNO間での公正な競争が図れないと訴えたことにある。
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総務省「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」第4回会合のJCOM提出資料より。同社は独立系MVNOよりシェアが低いにもかかわらず、KDDIの特定関係法人なので電気通信事業法の規制対象で、競争上公正ではないと訴えていた
その後同委員会で議論がなされた末、報告書案では「特定関係法人を27条の3の規律対象外とすることが適当」とまとめられたことから、携帯4社傘下のMVNOも規制対象から外れる可能性が高い。ただ携帯大手がそのことを生かして潜脱行為をするのでは、との意見も多く挙がったこともあって、無条件ではなく何らかの対策がなされた上での規制緩和となるようだ。
そうしたことを考えると、今後は厳しい規制がかけられている携帯4社に代わり、規制の影響を受けないMVNOが、スマートフォンの大幅値引きを積極的に仕掛けて注目されることになるかもしれない。ただそもそも、スマートフォンの大幅値引きに反対して規制の礎を作ったのはMVNOの側でもあるだけに、そのMVNOがスマートフォンの大幅値引きを強化する流れが妥当なのか? という疑問は大いに生じる所だ。



