米アップルは2026年6月25日、「Mac」や「iPad」など多くの製品の値上げを発表した。その背景には昨今のメモリ高騰が非常に大きく影響したと考えられるが、一方で「iPhone」は値上げがなされていない。過去の事例などから、その要因と今後のiPhoneの価格について考察してみたい。
実は今回だけではない、iPhone以外の製品値上げ
昨今の円安で急速に進んだ、スマートフォンやパソコンなどIT製品の価格高騰。2026年半ばにはその勢いがさらに増しているようだが、原因は既に多くの指摘がなされている通り、AIデータセンター需要の急増に伴うメモリやストレージの不足にある。
その結果、メモリなどの価格が数倍にも上昇したことが、IT製品の価格を大幅に押し上げる要因なのだが、その影響を受けているのは新製品だけに限らない。価格高騰の影響を、新製品だけでなく既存の製品価格にも転嫁する動きも進んでおり、とりわけ話題となったのがアップルの値上げである。
アップルは為替や部材価格などの影響を素早く製品に反映させる傾向が強いが、昨今のメモリ価格高騰を受けてか2026年6月25日、突如既存製品を一斉に値上げした。その値上げ対象となったのは「Mac」「iPad」「HomePod」「Apple TV」「Apple Vision Pro」と非常に多岐にわたる。
中には「Mac Studio」のように9万円超の値上げがなされた製品もあるし、比較的安価なモデルでも「iPad(第10世代)」が1万6000円値上げされて7万4800円となった。また10万円を切る低価格のMacとして話題になった「MacBook Neo」も、2万円の値上げがなされ11万9800円となっている。
ただその一方で、値上げがなされなかったのがiPhoneである。販路によって一部モデルが値上げされるケースはあるようだが、少なくとも2026年7月4日の執筆時点で、Apple Storeで販売されている従来モデルの価格は据え置かれている。
それだけに、MacやiPadが値上げされてもなお、iPhoneだけ値上げがなされないのはなぜか? と疑問を抱く声も多いようだ。ただアップルがiPhoneだけ異なるタイミングで値上げする、あるいは値上げを見送るケースは、これまでにも何度か起きている。
一例を挙げると、急速な円安が進んだ2022年には6月に、アップルはMacを値上げしたが、iPhoneやiPadの値上げがなされたのは7月に入ってからと、タイミングにずれが生じていた。さらに過去を振り返ると、やはり急速な円安が進んだ2013年にはiPadや「iPod」シリーズの値上げがなされていたが、この時はiPhoneの値上げ自体が見送られている。
既存iPhoneの値上げは避け、新iPhoneで一気に値上げか
こうして見ると、iPhoneはアップルの主力製品の中でも比較的値上げがされにくい、あるいは遅れて値上げがなされる傾向にあることが分かる。その理由はいくつか考えられるが、1つはiPhoneが、アップルの中で最も主力の製品であるが故だろう。
iPhoneの価格が高騰すれば単に販売数が減るだけでなく、「Apple Watch」「AirPods」など周辺デバイスの販売、さらには「App Store」をはじめとしたアプリやサービスのエコシステム利用にも大きな影響が出てしまう。それだけに可能な限りiPhoneの値上げは先送りし、他の製品の値上げで利益を出そうとしているのではないかと考えられる。
そしてもう1つは携帯電話会社との兼ね合いだ。国内において、iPhoneをはじめ多くのスマートフォンの販売数は、携帯電話会社経由が最も多い。しかもiPhoneは国内でトップシェアを持ち、携帯各社にとっても最重要の商材となっている。
ただそれだけに、iPhoneの値上げは携帯電話会社の販売にも大きな影響が出てしまいかねない。多くの販売が見込める販路に影響を生じさせないためにも、可能な限り値上げを見送る姿勢を取っているのではないだろうか。
とはいえ、アップルがメモリ価格の高騰をいつまでも吸収し続けるとは考えにくい。ではいつ値上げをするのかと考えると、やはり次のiPhone新製品発売時の可能性が非常に高いだろう。
既存製品を値上げしてしまうと消費者に与えるネガティブのイメージが非常に大きいが、新機種は何らかの機能強化も図られることが多いだけに、旧機種より値段を上げてもある程度の納得感が得られる。それだけに、可能な限り既存のiPhoneは値上げせず、新機種で一気に価格転嫁する可能性はかなり高いと筆者は見ている。
ただ日本市場ではここ最近円安も急加速しており、1ドル当たり160円台が相場となりつつある。アップルが円安に耐えられないと判断すれば、新機種発売を待たずに突如iPhoneの値上げがなされる可能性も十分あるだろう。iPhoneを少しでもお得に購入したい消費者は、既存のiPhoneを今すぐ、既存の価格で購入するのが最善となりそうだ。



