2023年に初開催され、国内有数のAIイベントとして定着している「AIフェスティバル」。 2026年は11月7日に4回目となる「AIフェスティバル 2026 Powered by THIRDWAVE」の開催が予定されているが、このAIフェスティバルを主催するのが、PCショップ「ドスパラ」を運営するサードウェーブだ。
なぜサードウェーブがAIフェスティバルを主催するのか。その狙いをサードウェーブ社長兼COOの永井正樹氏に聞いてきた。
AIフェスティバル 2026 Powered by THIRDWAVE 開催概要
- 日時:2026年11月7日(土) 10時~17時
- 場所:ベルサール渋谷ファースト JR線「渋谷駅」東口より徒歩8分/地下鉄・東急「渋谷駅」C1出口より徒歩6分
AIアートから始まった「AIフェス」構想の原点
サードウェーブがAIフェスティバルを開催することになったきっかけは、2023年3月に開催された「第一回AIアートグランプリ」に協賛したことだという。
「第一回AIアートグランプリの開催後、AIの進化は早いので、第二回を半年後ぐらいに開催したいといった話がありました。そこで、AIアートグランプリに協賛するだけではなく、もっと多くの人にいろいろなAIに触れてもらう場を作りたいという考えのもと、AIアートグランプリに合わせて開催することになりました」(永井氏)
サードウェーブは、以前よりeスポーツに力を入れており、eスポーツに対応するPCを販売する一方で、2018年に「LFS池袋esports Arena」を開設。ハイスペックPCの性能を体感する機会を創出したり、eスポーツイベントを開催したりするなどして、日本のeスポーツ文化を支援してきた(2025年1月に「一定の役割を果たした」として営業を終了)。
現在は高校生を対象とした「NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」への特別協賛を継続して行っており、これは「eスポーツに真剣に取り組む若い人達に、甲子園のようなアウトプットする場を提供することが、チャレンジや成長の土台となって、eスポーツの普及にも繋がる」(永井氏)といった考えのもとで取り組んでいるそうだ。
AIフェスティバルに関しても、eスポーツへの取り組みと土台は同じだ。AIアートグランプリは、「AIを人間の表現手段として積極的に活用する方向性を探り、AIを駆使するアーティストの育成を目的」として開催が始まった。
そして、第一回AIアートグランプリの盛り上がりや、AIの進化の過程に触れる中で、AIを使って作り上げた成果物を、多くの人に見て、触れて、楽しんでもらうことが、AIクリエイターのチャレンジや成長に繋がる土台になる、との想いを強く抱いたそうだ。そのうえで、AIアートグランプリと同時に開催した方が相乗効果があると考え、併催という形でAIフェスティバルを開催することになったそうだ。
渋谷への移転でAIクリエイターの交流を拡大
4回目となる「AIフェスティバル 2026 Powered by THIRDWAVE」は11月7日に開催予定だが、開催場所がこれまでの秋葉原から渋谷の「ベルサール渋谷ファースト」へと移ることになる。
「これまでAIフェスティバルでは、AI関連のワークショップやトークセッション、AIハッカソンの決勝大会などを開催してきました。そういった中で、昨年(第3回で)非常に好評だったのが、『AIクリエイターズマーケット』でした。そもそもは、”AIでもコミケみたいなことができたら盛り上がるんじゃないの?”というアイデアでしたが、実際にやってみたら面白いものがたくさん出てくるし、参加している人たちがコミュニケーションしたり出展しているものを購入し合ったりとか、相互のコミュニケーションも行われてとても盛り上がりました。そこで今年は、AIクリエイターズマーケットの規模を拡大したいと考えて、広い場所に移ることにしました。AIクリエイターズマーケットは、3倍以上の100ブースほどの規模に拡大する予定です」(永井氏)
また、秋葉原会場は、ステージが地下、AIクリエイターズマーケットが2階のスペースで行われたが、上下に会場を行き来する必要があることで、全体として雰囲気や熱気が伝わりにくいという課題も感じていたという。これも、会場を移すきっかけのひとつとなっているそうだ。
規模を拡大したAIクリエイターズマーケットが、AIフェスティバル 2026の目玉となるが、もちろんこれまで同様にワークショップやトークセッション、AIハッカソンの決勝なども行われることになっている。
そしてもうひとつ、新たな取り組みとして実施されるのが「AIゲーム」コーナーだ。
これは、『80年代、ゲームセンターで最先端技術に触れ、未来を夢見たあの感動。これを現代版にアップデートして蘇らせる』というAI研究家の清水亮氏が掲げる「AIゲームセンター」構想を具現化するものだ。
この「AIゲームセンター」構想を実現すべく、AIゲームマシンの開発とゲームセンター開設を目的としてクラウドファンディングを実施したそうだが、100万円の目標金額に対して最終的に700万円もの資金が集まったという。会場でどういったゲームが出てくるのかは「当日までのお楽しみ」(永井氏)とのことで、興味がわいた方は実際に会場で体験してもらいたい。
民主化したAI。「使う」から「創る」へ導く体験イベントに
現在AIは、ビジネスシーンはもちろん一般の人たちにも広く普及している。年配者から子供まで広く親しむツールになってはいる。ただ永井氏は、一歩進んでAIを使った創作活動を行うという点に関してはまだまだだと感じているという。
「AIが身近な存在になったのは、スマートフォンで簡単に触れられるようになったことが大きいと思っています。子供もChatGPTを”チャッピー”と呼んでいるぐらいで、AIそのものは民主化していると思います。しかし、AIを活用してクリエイティブなことを行うという部分に関しては、まだまだこれからだと考えています」(永井氏)
現在、AIを活用することで、クリエイティブな作業のハードルが大きく下がっている。アプリを作るとしても、今やAIに指示を出すだけでコードを書くことなくできてしまう。それは、絵や音楽なども同様で、専門家でなくてもAIを活用することで新しいものを作り出すことが簡単にできるようになっている。
しかし、それを自分でやってみようというところにはまだ行き着いていない。だからこそ、AIフェスティバルやAIアートグランプリで展示されるAI作品に触れ、その作者と触れあうことで、自分もこういった作品を作りたい、活用したい、「自分にもできる」と思ってもらいたい。それこそが、今後AIの発展に不可欠と考えているそうだ。
AIの市場を盛り上げれば、いずれそれが返ってくる
ビジネスシーンではAIがなくてはならないツールとなっており、広く活用が進んでいる。しかし個人での活用となると、まだAIのキラーアプリやキラーコンテンツが見あたらないこともあり、ピンときていない人が多いのではないか、そう永井氏は指摘する。 そこで、まずは知ってもらうところが入り口になると考えているという。それに対する活動のひとつが「Dospara Creative Production(DCP)」だ。
「我々は、会員の創造活動を支援するプログラムとしてDCPという活動を行っています。PCを使った様々な創造活動に関するセミナーを実施していますが、そこでAIに関するセミナーを始めています。そこでAIの創造活動はどのようにやるのか学んでいただき、実際に体験する。そこがスタート地点と考えて取り組んでいます」(永井氏)
サードウェーブは、「GALLERIA」シリーズをはじめとしたPC製品の販売が本業だ。しかし、サードウェーブがAIアートグランプリに協賛し、AIフェスティバルを主催して以降、AIという観点で同社のPCの売れ行きに大きな変化はまだ見られていないそうだ。「うちはいつも遠くに弾投げてるんですよ」と永井氏は笑ったが、AIが盛り上がることで業界全体が盛り上がれば、いずれはそれが返ってくる、そういう考えで取り組んでいるのだという。
「我々は”エコシステム”と呼んでいますが、エコシステムが揃わないとその分野は滅びるんですよ。野球で言うと少年野球から高校野球の甲子園、プロ野球まであって、地方や学校に野球のグラウンドがあって、多くの観客が集まって放送もされている。だからこそ滅びることなく続いています。AIも同じで、AIの市場や環境の整備が必要だと思っています。我々の企業ミッションは”人々の創造活動の可能性を最大限にする”というものでして、そのためには、我々だけでできることではないですが、旗を振ってでもAIの市場を広げていく。そしてそれがいずれ我々に返ってくればいい。そう思って取り組んでいます」(永井氏)
日本でいちばんの「AIのお祭り」にしたい
最後に永井氏に、今後AIフェスティバルをどう発展させたいか聞いてみた。
「それはもう、日本のAIシーンの中でいちばんのお祭りの場所にしたいです。AIで何かを作る人も使う人も楽しめる場所であり続けたい、そしてそれを可能な限り大きくしていきたいです。また、主要なAI関連のメーカーさんには協賛していただいて、実際にブースも出していただいていますが、我々と同じ業界の方で、AIマーケットを広げていくという部分に共感していただける方には、ぜひ一緒に参加してお手伝いいただけたらと思います。我々だけでやれることには限りがありますので、同じ想いで参加していただけると嬉しいです。そして、力の許す限り、大きくしていきたいと思います」(永井氏)
今回の永井氏のインタビューから、サードウェーブによるAIフェスティバルの取り組みは、自社の利益にとどまらず、業界全体を巻き込んでAI市場を活性化し盛り上げていこうという意気込みが十分に伝わってきた。そして、過去のAIフェスティバルの盛り上がりを見ても、この取り組みがAI市場を盛り上げるきっかけになっていると感じる。AIフェスティバル 2026は、昨年以上の盛り上がりとなるはずで、ぜひとも足を運んで最新のAIの世界を体感してもらいたい。





