2026年9月末に契約終了を迎える、楽天モバイルとKDDIのローミング契約。両社ともに、決算説明会で一部ローミング契約の継続に言及したものの、契約終了まで2ヵ月を切っているにもかかわらず、契約終了後の正式な方針が打ち出されていない。その理由は両社のコメントを振り返ると見えてくる。

一度延長したローミング契約も9月末で終了に

2019年に携帯電話事業へ参入した楽天モバイル。サービス開始当初は契約数を限定した内容で、事業に対する不安の声が少なからず挙がっていたのだが、その後契約数を大きく伸ばし、2025年末にはMVNOによるサービスを含む全契約数が1000万契約を突破するなど好調を維持している。

だがその楽天モバイルに対する不安の声が、ここ最近急増している。それはサービス開始当初から提供されてきたKDDIとのローミングが、2026年9月末をもって契約切れを迎えるからだ。

新興の楽天モバイルが競合の大手3社に追いつくには時間がかかることから、楽天モバイルは同年にKDDIとローミング契約を締結。まだカバーできていないエリアをKDDIとのローミングで賄う一方で、楽天モバイルはネットワーク整備を急ピッチで進め、およそ4年前倒しで4Gの人口カバー率96%を達成した。

  • KDDIは2018年11月に楽天モバイルとローミング契約を結んでおり、以降楽天モバイルは未整備のエリアをKDDIとのローミングで賄っている

    KDDIは2018年11月に楽天モバイルとローミング契約を結んでおり、以降楽天モバイルは未整備のエリアをKDDIとのローミングで賄っている

だがその結果、先行投資がかさみ赤字幅が拡大。楽天グループ自体の経営までもが不安視される事態をも招いた。そこで2023年5月に楽天モバイルが取ったのが、KDDIと新たなローミング契約を締結すること。ローミングを2026年9月末まで延長するとともに、地方だけでなく都市部の一部でもKDDIのローミングを活用することで、インフラ整備のペースを大幅に落としコスト抑制を進めながらも、競合に並ぶエリアカバーを実現した訳だ。

  • 楽天モバイルは2023年5月に新しいローミング契約を締結。ローミング期間を2026年9月末まで延長するとともに、地方だけでなく都市部の一部でもローミングの活用を開始した

    楽天モバイルは2023年5月に新しいローミング契約を締結。ローミング期間を2026年9月末まで延長するとともに、地方だけでなく都市部の一部でもローミングの活用を開始した

だがその契約も2026年9月末で切れてしまうため、このままでは楽天モバイルユーザーは、KDDIのローミングが存在する従来のネットワーク環境を利用し続けることはできなくなる。にもかかわらず、契約切れまであと1カ月半の2026年8月中旬時点でも、楽天モバイルはローミング契約終了後のネットワーク方針を正式には示していない。

それだけに楽天モバイルのネットワークの今後に対する不安が高まっているのは確かだろう。その隙を突く形で、競合の一部携帯電話ショップでは、楽天モバイルのローミング終了が間もなく迫ることを看板で打ち出し、同社のネットワークに不安を抱くユーザーの乗り換え需要を獲得しようとしている。

楽天モバイルは継続、KDDIは早期終了が本音か

ただ楽天モバイルとKDDIは共に、2026年8月に実施された各社グループの決算説明会で、2026年9月末以降のローミングに関して一定の方向性を示している。実際、KDDIの代表取締役社長である松田浩路氏は、楽天モバイルとの従来の形でのローミング契約は終了するが、楽天モバイルの整備がまだ進んでいない、地方の一部エリアでのローミングは期間限定で継続する意向を示している。

  • KDDIの松田氏は、楽天モバイルとのローミング契約は基本的に終了するが、未整備エリアに限り期間限定でローミングを継続する方針だと話していた

    KDDIの松田氏は、楽天モバイルとのローミング契約は基本的に終了するが、未整備エリアに限り期間限定でローミングを継続する方針だと話していた

一方、楽天モバイルを有する楽天グループの代表取締役会長兼社長最高執行役員である三木谷浩史氏は、楽天モバイルがカバーに時間を要するエリアは、ローミングを2026年10月以降も継続する一方、十分カバーができているエリアはローミングを縮小する方針であると話していた。

  • 楽天グループの三木谷氏も、カバーできているエリアのローミングは縮小する一方、カバーに時間を要するエリアはローミングを継続する方針だとしている

    楽天グループの三木谷氏も、カバーできているエリアのローミングは縮小する一方、カバーに時間を要するエリアはローミングを継続する方針だとしている

両社トップの発言を見るに、楽天モバイルがカバーしているエリアはローミングを終了し、カバーできていないエリアはローミングを継続するという方向性は一致していることが分かる。それにもかかわらず、今なお契約がまとまっていないのはなぜだろうか。

その理由は両社トップの発言から見て取ることができよう。松田氏はKDDIとのローミング契約を終了する理由について、楽天モバイルとのローミングはエリアを補完することが目的であり、「先方のエリアも7年で拡大していることを受け、当社としては十分役割を果たせたと考えている」と話しており、基本的にはローミングを終了したい考えであることが分かる。

加えて松田氏は、楽天モバイルとのローミングによって「想定外のエリアから、想定以上のトラフィックが我々に来ている」とも話していた。天モバイルのユーザーが増えたことでローミング経由での通信トラフィックが急増し、それが自社顧客の通信品質にも影響していることに、課題感を抱いているようだ。

  • 現行の「Rakuten最強プラン」では、KDDIのローミングエリアでもデータ通信が無制限となるため、都市部を中心にローミングエリアで楽天モバイルからの通信量増加による混雑が生じるケースが増えていたようだ

    現行の「Rakuten最強プラン」では、KDDIのローミングエリアでもデータ通信が無制限となるため、都市部を中心にローミングエリアで楽天モバイルからの通信量増加による混雑が生じるケースが増えていたようだ

一方の楽天モバイルは、基本的に都市部はカバーできているとしているが、実はその都市部を中心として、楽天モバイルのトラフィックが増えたためローミングを先行して終了しているエリアが増えている。しかもそうしたエリアでは通信品質が急速に低下したと、不満の声が増えている状況にある。

また三木谷氏はインフレが進み競合が値上げを図る中にあっても、低価格でデータ通信が使い放題の「Rakuten最強プラン」の料金は維持したい様子を見せている。それゆえ値上げなどで通信料収入を増やし、未整備のエリアに積極的に投資して拡大を図るのは難しいだろう。

とりわけ地方でまだ整備が進んでいないエリアは、人口が少なく採算性が低い地域が多いと考えられるだけに、一層投資を抑えたいのではないかと考えられる。

  • 楽天モバイルは月額最大3278円で、データ通信無制限での利用が可能な「Rakuten最強プラン」を提供、これが競争力を高める要因となっているだけに、同社としても可能な限り値上げはしない方針のようだ

    楽天モバイルは月額最大3278円で、データ通信無制限での利用が可能な「Rakuten最強プラン」を提供、これが競争力を高める要因となっているだけに、同社としても可能な限り値上げはしない方針のようだ

つまりKDDIはローミングを早く終了させたいが、楽天モバイルとしてはコストを抑えてエリアとトラフィックをカバーする上でも、できる限り長く、広いエリアでローミングを継続したいというのが本音と見ることができよう。それだけにローミングを継続するエリアと期間については、まだ両社に隔たりがあるものと考えられ、それが新しい契約の締結を遅らせる要因になっているのではないだろうか。

ただその結果として、楽天モバイルのユーザーが抱く不安が確実に高まっていることも確かだ。そうした状況を受けてか、楽天モバイルと三木谷氏は2026年8月12日、ローミングに関する声明を改めて打ち出しているが、顧客を安心させるには早く正式な契約を結ぶことが第一だろう。