2020年はWindowsとLinuxの年になるかも

2020年5月か6月にはWindows Terminalも正式版がリリースされるだろう。WSL(Windows Subsystem for Linux)も次のフィーチャーアップデートでWSL2の導入が予定されている。第2四半期にはWindowsでLinuxを実行するための環境がバージョンアップすることになり、2020年はWindowsにとってLinuxが躍進する年になりそうである。

そこで今回は、Windows 10で簡単に導入できるLinuxディストリビューションを簡単にまとめておこう。

MicrosoftがLinuxのサポートを推進することに疑問を感じる人もいるかもしれないが、Microsoftの戦略を踏まえると不思議なことではない。

Microsoftは収益の主軸をクラウドへ移しつつあり、Linuxのサポートを進めることは、クラウドサービスの利用を促すことにつながる。Windows 10は最も使われているデスクトップ向けのオペレーティングシステムであり、そこでLinuxを簡単に利用できれば、クラウドにおけるLinuxの利用にもつながっていくわけだ。

例えば、MicrosoftはMicrosoft SQL Serverというデータベースを提供しているが、このデータベースはすでにLinuxで動作するようになっている。Windows Serverで動作させているMicrosoft SQL Serverを、将来的にはMicrosoft Azureで動作するLinuxに移行させるというのは悪くない話だ。Microsoftとしてはクラウドサービスが利用されるし、Microsoft SQL Serverも継続して利用してもらえる。MicrosoftにとってLinuxのサポートを推進することは現在の戦略と一致している。

Ubuntu

Windows 10でLinuxを利用する場合、最もオフィシャルなディストリビューションがUbuntuだ。Ubuntuを開発しているCanonicalとMicrosoftは協力関係を築いており、CanonicalからWSL向けのオフィシャルなUbuntuが提供されている。そして今後も提供が続くことが予測されている。

Ubuntuはデスクトップ向けのLinuxディストリビューションとしても、Webサーバ向けのディストリビューションとしても、日本で広く普及している。特にこだわりがなければUbuntuをインストールしておけばよいだろう。

本稿執筆時点では、以下の3つのUbuntuがMicrosoft Storeに用意されている。

  • Ubuntu 18.04 LTS
  • Ubuntu 16.04 LTS
  • Ubuntu

Ubuntuは最新のLTSがインストールされるので、本稿執筆時点のUbuntuはUbuntu 18.04 LTSと同じだ。2020年4月にはUbuntu 20.04 LTSが新しく追加されるはずで、UbuntuはUbuntu 20.04 LTSのインストールに変わると見られる。

  • Ubuntu 18.04 LTS on Microsoft Store

    Ubuntu 18.04 LTS on Microsoft Store

  • Ubuntu 16.04 LTS on Microsoft Store

    Ubuntu 16.04 LTS on Microsoft Store

  • Ubuntu on Microsoft Store

    Ubuntu on Microsoft Store

今インストールするならUbuntu 18.04 LTS、2020年5月以降ならUbuntu 20.04 LTSをインストールしておけばよいだろう。それぞれが別のアプリケーションとして処理されるので、ディスク容量に余裕があるならそれぞれインストールしておいてもよいだろう。

Kali Linux

Windows 10で便利なディストリビューションがKali Linuxだ。Kali Linuxはセキュリティツールの使用などに主眼を置いたLinuxディストリビューションであり、いろいろなセキュリティツールが用意されており便利だ。Microsoft Store経由ですぐにインストールが完了し、Kali Linuxを普通にインストールするよりも簡単だ。

  • Kali Linux on Microsoft Store

    Kali Linux on Microsoft Store

Kali Linuxプロジェクトは先日、デフォルトユーザーとして使ってきたrootを廃止し、kaliというユーザを使用すると発表しているが、WSLで動作するKali Linuxにはあまり関係ないかもしれない。WSLで動作するKali Linuxはインストール後の最初の起動時にユーザー名とパスワードを設定する仕組みになっており、すでに似たような状態になっている。

Kali LinuxはそもそもUbuntuのように日常的に使用するタイプのLinuxディストリビューションではないし、Kali Linuxプロジェクトもそのような認識で開発している。WSLで利用するのはKali Linuxの趣旨に沿った使い方と言える。

Debian

ユーザーに人気が高いLinuxディストリビューションにDebianがある。Microsoft StoreにはDebianも登録されている。

  • Debian on Microsoft Store

    Debian on Microsoft Store

UbuntuやCentOSは使ったことがあるがDebianは使ったことがないという場合、WSLで使ってみるのも1つの手だろう。

SUSE

Microsoft StoreにはSUSEも導入されている。SUSE系は日本ではあまり使われていないが、欧州では人気の高いLinuxディストリビューションだ。本稿執筆時点で、次のバージョンが登録されている。

  • SUSE Linux Enterprise Server 15 SP1
  • SUSE Linux Enterprise Server 15
  • SUSE Linux Enterprise Server 12
  • openSUSE-Leap-15-1
  • SUSE Linux Enterprise Server 15 SP1 on Microsoft Store

    SUSE Linux Enterprise Server 15 SP1 on Microsoft Store

  • SUSE Linux Enterprise Server 15 on Microsoft Store

    SUSE Linux Enterprise Server 15 on Microsoft Store

  • SUSE Linux Enterprise Server 12 on Microsoft Store

    SUSE Linux Enterprise Server 12 on Microsoft Store

  • openSUSE-Leap-15-1 on Microsoft Store

    openSUSE-Leap-15-1 on Microsoft Store

SUSE系はUbuntuやDebianとは管理向けコマンド系が大きく異なるので、興味がある場合は試してみるとよいだろう。

Red Hat Enterprise Linux / CentOS

有償製品である「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」やRHELと完全互換を目指しているオープンソースのCentOSは、Microsoft Storeに登録されていない。Red Hatの戦略を考えると、RHELのWSL版をリリースすることはあまり意味がない。Red Hatはプライベートクラウドやハイブリッドクラウドの基盤としてRed Hat Enterprise Linuxを用いることを戦略としているからだ。

CentOSがMicrosoft Storeに登録されるとかなり便利だが、その開発はRed Hatが支援していることから、CentOSもMicrosoft Storeに登録される可能性はかなり低いと見られる。

その他のLinuxディストリビューション

Microsoft Storeには上記以外のLinuxディストリビューションも登録されているが、それらは有償だったり、プロジェクトから提供されているオフィシャルなディストリビューションではないものだったりする。その辺りを理解してから、利用してもらえればと思う。

何はともあれ、Windows 10で簡単にLinuxが導入できるというのは便利だ。使ったことがないなら一度は試してみていただきたい。