いつもは週末の夜遅くに掲載している「今週のデジタル編集部」。普段の誌面からちょっとそれまして、編集後記をお送りしています。今回は年末拡大版。数名の編集部員が1人ずつ2021年を振り返ります。 |
オーディオ・ビジュアル関連をはじめ、いわゆるデジモノの情報を追いかけ続けている“編集RS”こと庄司です。真夏のビッグなスポーツイベントを前に(市場的な意味で)盛り上がりを見せたテレビ製品や、ポータブルオーディオ界隈ではもはや事実上のスタンダードとなった完全ワイヤレスイヤホンなどを、常日頃チェックしております。
筆者の執筆記事群を見ていただければ何となく伝わるかもしれませんが、注目しているのは基本的に趣味性の高い製品が中心で、昨今のような情勢において「必需品だからすぐに要る」とはなりにくいものばかり。しかし、気軽に出歩くのがまだまだ難しい状況だからこそ、おうち時間を過ごすなかで、映像や音楽といったコンテンツに救われる思いがした人も多いと思います。もうしばらくこんな日々が続きそうですが、読者の皆様にとってそういったコンテンツを少しでもより良く楽しむための一助になれば……という思いもあり、さまざまな製品の取材に出かけたり試させてもらったりしています。
年の瀬の編集後記拡大版ということで、今回は2021年に筆者が取材したり、レビューを見て気になったりしたなかで、特に“趣味性の高い高額製品”を中心に5つピックアップして振り返ります。どれも尖った特徴があって面白く、余裕があれば全部買ってしまいたいくらいなのですが、なかなかそうもいかないのが辛いところ……ぼやきはさておき、順番に行ってみましょう。
その1:“パナソニックDIGA史上最高級”の4Kレコーダ「ZR1」
まずは12月に発表になったばかりのパナソニック「DMR-ZR1」。同社のBDレコーダー、DIGAシリーズのハイエンドモデルと位置づけられており、ハードウェア面でハンパじゃない物量を投入しつつ、ソフトウェア面でも使い勝手を高めた製品に仕上がっています。
実機取材時のインプレッションを前出の記事にもひと言入れていますが、4Kドラマの録画番組を同社製ハイエンドUHD BDプレーヤーと見比べると、その違いは一目瞭然。視聴したのは日本家屋の中での家族のだんらんを描いたワンシーンでしたが、映像的になかなかキビしそうなひとコマ(陽光が穏やかに遊ぶ縁台の照り映える様子)の描写にイヤなギラつき感がまったくなく、室内の暗部表現も良好に見えて、ぐっと心を掴まれました。取材であることを忘れてつい見入ってしまい、その場に居合わせた担当者を質問攻めにしたり……。
そこまでこだわりがなければ、30万円越えのBDレコーダーなど「誰が買うんだよ」と思われるかもしれませんが、コレを買いそうな御仁が実際にいらっしゃるので私は何とも言えません。録画マニアっぽいことをしなくなって久しい筆者ですが、価格のことさえ考えなければ筆者も今一番欲しいレコーダーといえます。実機をじっくり体験できる機会はなかなかないかもしれませんが、一度はぜひ視聴してみてほしい一台です。
その2:ソニーらしさが光る、斬新なサラウンドスピーカー「HT-A9」
続いては今夏に登場した、最大12個のファントム(仮想)スピーカーを生成し、360度のサラウンド空間を楽しめるというソニーの新しいホームシアターシステム「HT-A9」です。
ワイヤレススピーカー4本と、HDMI入力などを備えた小型のコントロールボックスのみで構成されており、複数のスピーカーとAVアンプを買って、配置と配線を考えて……という、従来のホームシアターにつきものだった手間を省いたのが大きな特徴。実際に聴いてみると本格的なサラウンド体験ができて、聴いているうちに“スピーカーがそこにあること”を忘れてしまうくらいリアルな臨場感が楽しめるのです。これを「ソニーらしいAV機器」といわずして何と言おうか。来春まで手元に届かないほど人気が高まっているのもうなずける面白さです。
弊誌でも海上忍氏、工藤寛顕(だいせんせい)氏の両名に異なる切り口で体験していただき、レビュー記事を掲載しましたのでぜひお読みください。
なお、今回は紙幅などの都合により大きく取り上げませんでしたが、ソニーのAV機器といえば薄型テレビ BRAVIAの最新シリーズ、「BRAVIA XR」も年初から注目を集めました。こちらをソニーストアで体感した山本敦氏によるレポート記事もぜひ一読いただければ幸いです。
その3:Astell&Kern初のDAC交換式プレーヤー「A&futura SE180」
コロナ禍で出かけることがすっかり減ったために、ポータブルオーディオ製品の出番も少なくなって若干寂しい思いをしている筆者ですが、ポータブルの雄であるAstell&Kernからは、2021年も注目製品が続々登場。そのひとつが、今春登場した同ブランド初のDACモジュール交換式ハイレゾプレーヤー「A&futura SE180」です。
詳しくは前出のニュース記事と、野村ケンジ氏による2本立てのレビュー記事(前編、後編)を読んでいただきたいのですが、何が面白いかざっくり言ってしまうと「ポータブルプレーヤーで自分好みの音が欲しければ、中身(DAC+アンプ部)をまるっと差し替えてしまえばいいじゃない!」という、良い意味で“変態的”な機構を盛り込んでしまったことにあります。実はこういった機構を備えたポータブルプレーヤーは以前からありましたが、Astell&Kernがそれをやっちゃうのか! という驚きがあったわけで、発表直後の「春のヘッドフォン祭ONLINE」で大きな注目を集めていたのも記憶に新しいところ。数々の名機を生み出したAKから今後何が飛び出してくるのか、2022年も目が離せません。
その4:渾身のハイエンドサウンドを。ゼンハイザー「IE 900」
ゼンハイザー本社のコンシューマー事業がスイスのSonovaに買収されるというニュースが飛び込んできた2021年、ゼンハイザーが放った最上位イヤホン「IE 900」のサウンドを聴ける機会を得られたのは、思いがけない幸運でした。映画『2001年宇宙の旅』でおなじみのあの楽曲(「美しく青きドナウ」)を聴いたときの、ヴァイオリンの音色の繊細さ、生々しさには圧倒されたものです。小欄でも「イヤホン探しの旅路に“終着点”を見出した」などと生意気を申しましたが、今でもその思いに変わりはありません。貯金をはたいて買いに走りたい。
ゼンハイザーに話を戻すと、12月にはオーディオ愛好家向け製品の生産拠点がアイルランドに集約されるという知らせも入ってきました。高級ヘッドホン/イヤホンを含む、同社のコンシューマー事業に今後も引き続き注目しています。
その5:壁に掛けられる「Echo Show 15」、年内発売は……?
最後に取り上げる製品については、バッファローから復活を遂げた新生「nasne」と迷ったのですが、個人的には今秋発表された、Amazonの新しいスマートディスプレイ「Echo Show 15」がやっぱり気になる、ということでコチラをチョイスしました。
筆者は割と前から、タテ型の大画面を家に置き、各種インフォメーション(天気とかゴミ出しのスケジュールとか)を表示させることに密かな憧れを抱いており、Echo Show 15が海外発表されたときは「まさにコレじゃん!」と大喜びで販売ページから予約開始のメール通知ボタンを押したものです。ただ、執筆時点では米Amazon.comで販売開始しているものの、国内のAmazon.co.jpでいつ販売開始になるのか、具体的な時期が未だに明らかにされていません。早く買わせてください!>Amazon様
終わりに
以上、筆者が今年注目したAV機器・ガジェットをざっくり振り返ってみました。実を言えば、注目した製品は他にもたくさんあったのですが、今回は裏テーマとして“100万円あったら買いたい、2021年に登場したAV機器”を(自分の中で)掲げており、価格面も考慮して上記5製品に絞りました。
参考までに、5製品の実売価格(筆者調べ、直販価格含む)を足していくと……パナソニック DMR-ZR1が36万6,300円前後、ソニー HT-A9が22万円前後、Astell&Kern SE180が209,980円、ゼンハイザー IE 900が179,080円前後、Echo Show 15が29,980円ということで、しめて100万5,340円となります。まぁ5,000円ちょっとのオーバーは誤差の範囲ということで、見逃していただければと。
3万円を切るEcho Show 15はともかく、基本的にどれも値が張るので、筆者のような若輩者にはおいそれと手を出せません。しかしそれでも、懐に余裕があれば真面目に購入を検討したいものばかり。叶わない夢と知りながらも、せめてどれかひとつは手に入れたい! ということで、2022年もがんばって資金調達に励もうと思います。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
(編集RS)