パナソニックは、“DIGA史上最高グレード”の高画質・高音質設計を採用した、BDレコーダーのプレミアムモデル「DMR-ZR1」(6TB)を2022年1月28日に発売する。新4K衛星放送の22.2ch音声を立体音響のDolby Atmosに変換・出力する業界初の機能も装備。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は36万円前後。

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    DMR-ZR1

BDレコーダー「DIGA」には現在、地デジなど2Kチューナーを搭載した「2K DIGA」や、BS4Kチューナー搭載の「4K DIGA」、2K/4K放送のチャンネル録画に対応した「全自動DIGA」をラインナップしている。新機種のDMR-ZR1には、オーディオビジュアルのクオリティを求めるハイエンドユーザーの期待に応える製品として、「PREMIUM 4K DIGA」の名を冠して展開する。

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    DMR-ZR1の前面

DMR-ZR1は、4K放送の視聴や、4K録画番組、4K Ultra HD Blu-ray(UHD BD)の再生だけでなく、NetflixやAmazon Prime Video、dTV、ベルリン・フィルの映像配信サービス「デジタル・コンサートホール」で配信している4K/HDRのネット動画の再生にも対応。あらゆる4Kコンテンツを最高品質で楽しめる「究極の4K録画再生機」、「決定版4Kレコーダー」として開発したという。製品名の「ZR1」は、“究極のレコーダー”という意味を込めて名付けたとのこと。

実機取材では映像のみの視聴デモが行われ、ZR1と同社の最上位UHD BDプレーヤー「DP-UB9000」(2018年発売/実売18万6,000円前後)を使って4K放送の録画番組を比べて見ることができた。短時間の視聴ではあったが、後述の高画質処理も相まって映像の鮮明さや、映っているモノの質感表現がグッと向上したように感じられ、最上位機種らしい品位の高さを実感した。

DMR-ZR1の詳細

DIGA15年の技術蓄積と、高級DVDプレーヤーや独自のデジタル家電統合プラットフォーム「UniPhier(ユニフィエ)」、ハリウッドやテクニクスブランドとの連携で培った“DNA”を活かし、UB9000を大きく超える再生性能を備えた“DIGAの集大成モデル”として開発。パナソニックのBDレコーダーとしては、世界初のUHD BD再生対応機「DMR-UBZ1」(2015年)以来のハイエンドモデルとなる。

電源や電気回路、本体設計を見直しつつ、独自のデジタルAV信号処理を採用。リモコンや操作画面(GUI)も刷新して、マニアックな機種ならではの使いやすさを突き詰めている。

具体的には、UB9000の設計思想を進化させ、高い剛性と低重心の本体設計や、新開発の電源とデジタル回路をZR1に搭載。画質や音質に影響を与える振動、ノイズ、クロックジッターを徹底して低減した。

本体サイズ430×300×87mm(幅×奥行き×高さ、突起部含まず)、重さ約13.6kgというボディの構造はUB9000と同等で、1.2mm厚鋼板のインナーシャーシに、1.6mm厚鋼板3枚を重ね合わせて、計4層/6mm厚、約5.6kgにもなる重量級ベースシャーシを採用。フロントパネルは7mm厚、サイドパネルにも3mm厚のアルミ押し出し材を使い、これらをベースシャーシに固定して本体の剛性を高めた。トップパネルには板厚の異なる鋼板を組み合わせた2層構造を採用し、制振性を高めている。

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    DMR-ZR1の内部構造

UB9000の構成をレコーダー向けに最適化。内部は、電源基板、HDD、BDドライブ、デジタル基板の4ブロックに分割した独立構成で、ノイズの混入を大幅に低減したという。

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    電源基板(左)、HDD(中央上)、BDドライブ(中央下)、デジタル基板(右)の4ブロック独立構成

ディスクドライブは中央に配置しており、高速回転するUHD BDなどディスクによる振動を低減するため、ベース部分には3層/5.2mm厚の鋼板を使用。ドライブ全体を深絞り鋼板の高剛性シェルターでおおうことで、ディスク回転時の不要な振動と騒音を抑えている。

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    ディスクトレイを出したところ

HDDにはAV機器用に最適化したアクセス制御を導入しており、独自の検査を全数実施して高い信頼性を確保したという。さらに、これを2種類の鋼板を貼り合わせた4mm厚(3.8mm厚+0.2mm厚)の専用ドライブベースに直付けすることで、回転による振動を抑え込んだ。

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    4mm厚(3.8mm厚+0.2mm厚)の専用ドライブベースに直付けしたHDD

デジタル回路用とドライブ用にそれぞれ最適化した、新開発の独立電源を搭載。ドライブの回転時に発生するノイズがデジタル回路に混入するのを防ぎ、電源の余裕度も高めている。

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    新開発の独立電源を搭載。デジタル回路用とドライブ用に最適化されている

なお、UB9000に搭載していたアナログオーディオ基板はZR1では廃止。その物量をデジタル/ドライブ系に集中させたかたちで、UB9000よりも高性能な超低位相ノイズ水晶発振器を投入するなど、デジタル回路のクロック精度を高める設計とした。HDMIやEthernet、同軸出力といった端子部にも、ハードウェア的な改良が施されている。

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    高品質パーツを投入してデジタル回路のクロック精度を高めた

脚部には、比重が大きく振動減衰特性に優れたハイカーボン鋳鉄製インシュレーターを採用。鋳鉄内に含まれる鉄とカーボンの摩擦で振動エネルギーを熱に変換することにより、オーディオラックを通して伝わる外部振動を効果的に減衰させるという。

マニア向けの高画質化機能を装備

映像面では、DIGA独自の信号処理技術「4Kリアルクロマプロセッサplus」をZR1にも搭載。高画質BDの研究開発拠点、パナソニックハリウッド研究所(PHL)で培った技術を応用したもので、デコードした4K/4:2:0信号を高精度マルチタップ処理で4K/4:4:4信号に補間することで、「鮮度が高く、自然な質感と立体感にあふれた4K映像」を可能にする。この処理はUHD BDや4K放送だけでなく、4Kネット動画やHDR映像にも適用可能で、「HDR対応テレビで圧倒的に豊かな映像表現が楽しめる」とする。

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    4Kリアルクロマプロセッサplusのイメージ

新4K衛星放送の映画やドラマなどを録画して再生するときに、オリジナルのフレームレートである4K/24pや30pに変換して出力する機能を新たに搭載。新4K衛星放送の映像は4K/60pだが、同社の調査では「(放送されている)4K映画は基本的にすべて24p、4Kドラマは圧倒的に30p収録のものが多い」とのことで、これらをオリジナルのフレームレートに戻して出力できるようにした。

同機能のメリットとしては、DIGAのクロマアップサンプリング性能をフルに活かして4K/4:4:4出力が行え、ディスプレイ次第ではフレームレートの低さを活かした階調性能の向上など、さらなる高画質化も見込めるとのこと。

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    4K番組を24p/30pに変換して出力する機能を装備

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ネット動画に関しては、Amazon Prime Videoの24p出力に新対応(従来は60p出力)。NetflixとAmazon Prime Videoでは、視聴中の画質・音質調整にも対応する。ZR1はほかにもhulu、U-NEXT、ABEMA、Paravi、DAZN、TSUTAYA TV、DMM.com、dTV、デジタル・コンサートホールなどが利用でき、ラジオ配信のradikoも楽しめる。ただし、YouTubeは2021年モデルの4K DIGAと同じく非対応となる。

HDR方式はHDR10、HDR10+、Dolby Vision、HLGの4つをサポート。BDレコーダーでのDolby Vision対応は、ZR1が世界初だという。

HDR映像の高画質処理機能として、通常はディスプレイ側で行うトーンマップ処理をレコーダー側で高精度に処理する独自の「HDRトーンマップ」技術や、HDR映像の明るさを調整できる「ダイナミックレンジ調整」、コントラスト感を調整する「システムガンマ調整」を搭載する。

HDRの高画質機能はUB9000も備えているが、システムガンマの調整幅を±6段階から±12段階に細分化して細かな調整が行えるようにしたほか、ダイナミックレンジとシステムガンマの設定値が自動で連動する調整メニューを新たに追加。これにより、従来は難しかった組み合わせ調整が簡単に行えるようになった。

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    ダイナミックレンジとシステムガンマの設定値が自動で連動するように設定できる

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このほか、マニアックな機能として、「映像字幕の輝度低減機能」を強化。BDやUHD BD再生時に使える機能だが、ZR1ではこれを録画番組にも拡大した。映画放送では、映像と字幕が一体化(重畳)して送られているが、ZR1は新たに字幕成分の輝度を抽出し、字幕以外への影響を抑えながら明るさを低減。暗い部屋で、映像が暗い映画を視聴するときの字幕のまぶしさを抑える。なお、同機能は放送やネット動画の視聴時は利用できない。

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    4K放送の録画番組で映像字幕の輝度低減機能を試したところ。左から機能オフ、弱、強に設定して撮影したもの(カメラの設定値はほぼ同じ条件で撮影している)

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このほか、4K/2K映像の鮮鋭感や精細感を向上する「4K超解像/W超解像」、2K映像をダイレクトに4K信号に変換する独自の「4Kダイレクトクロマアップコンバートplus」、対応するBD映像を最大36bitに高階調化して出力する「MGVC」などの高画質機能を備える。

4K放送の22.2ch音声をDolby Atmosに変換出力、業界初の新機能

音声面では、NHK BS4Kの一部番組で使われているMPEG-4 AACの22.2ch音声をDolby Atmosに変換して出力する機能を、民生用BDレコーダーとして初めて搭載。家庭で立体的な音場空間を再現することを可能にした。

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    音声設定のHDMI出力の項目に、4K放送のMPEG-4 AAC 22.2ch音声をDolby Atmosに変換して出力する設定がある

ZR1では22.2ch音声のまま4K録画し、HDMIからビットストリーム出力することもできる。ただし対応するサラウンドシステムが極めて限られ、一般家庭では現実的ではないという課題がある。今回、ドルビーと共同開発した同機能では、22.2chの音声をそのままAtmos信号に変換。既存のAtmos対応機器(テレビ、AVアンプ、サウンドバー)などと組み合わせ、22.2ch音声の立体的な音場をAtmos再生環境で再現できるとする。

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このほか、不要回路ブロックを動作停止させてノイズを最小限に抑える「ハイクラリティサウンド」、「シアターモード」、最大384kHz/32bitまでのPCMや11.2MHzまでのDSDといったハイレゾ音源の再生、圧縮音源の高音域成分を復元する「リマスター」、真空管アンプを通したような“温かみのある音”を再現する「真空管サウンド」を搭載する。

マニア向けに使いやすさを追求

室内照明が暗いAVルームでの視聴に合わせて、視聴中の操作GUIのデザインを最適化。また、UB9000で好評だったというバックライト付リモコンが付属する。リモコンには、ディスク再生中や録画番組の編集が中断されにくいように配慮したボタン配置と動作仕様を採用した。

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    ZR1に付属する、バックライト付リモコン

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    暗い室内でリモコンのバックライトをオンにしたところ

さらにディスクメディアや放送番組の視聴中にリモコンの「iボタン」を押すと、今見ているコンテンツやHDMI映像出力に関する情報を確認できるように強化。ボタンを押す毎に簡易表示、詳細情報を切り替えられ、映像・音声フォーマットやビットレート、HDR10メタデータなどが確認できる。

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    視聴中にコンテンツ情報を簡易表示

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    詳細表示にするとコンテンツやHDMI出力に関する情報を確認できる

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    もうひとつの詳細表示ではHDR10メタデータなども確認できる

DIGA 2021年秋モデルの主な録画機能を継承

録画機能に関しては、トリプル4Kチューナー(地上/BS/110度CSデジタル兼用)と、6TBの大容量HDDを搭載し、4K放送の3番組同時録画が可能。4K長時間録画モードに対応し、倍率固定で最大8倍録が可能。映像に合わせて画質を自動で調整する「4Kおまかせ長時間“8~12倍録モード”」も備える。また、「4K 1.3倍録モード」を搭載し、BD-R(25GB)に2時間番組が収まるようにダビングできるという。

2021年秋モデルと同様に、ドラマ・アニメを最大約90日分自動録画する「ドラマ・アニメお録りおき」機能を装備。また、録画一覧画面の表示領域や情報量が向上し、8つのジャンル別ラベルや最大12番組表示、番組タイトルの40文字表示にも対応する。

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録画番組の音声付き早見再生機能についても、2021年秋モデルと同様に、2K/4K録画番組の1.3/1.6倍速早見再生に対応。録画可能タイトル数は従来の3,000から10,000まで増強した。4K録画番組を4K解像度のまま別室の対応機器で再生できる「お部屋ジャンプリンク」も利用できる(4K番組の放送転送には非対応)。

DIGAの「おうちクラウド機能」を備えるほか、「どこでもディーガ」アプリを使ったスマホ番組視聴などにも対応。このほか、新しいレコーダーに買い替えて録画番組を移行する「お引越しダビング」では、4K放送番組の4Kダビングにも対応する(ダビング元とダビング先の両方が、4Kでのお引越しダビングに対応している必要がある)。

HDMI端子は、映像・音声で各1系統の計2系統装備。同軸デジタルと光デジタルの音声出力、USB 2.0(前面)とUSB3.0(背面)も各1系統備える。消費電力は約30W。待機時消費電力は、クイックスタート「入」時(標準モード)で約11W(時刻表示点灯時)、クイックスタート「切」時(節電待機「モード2」)で約0.9W(時刻表示消灯時)。

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    ZR1の本体背面