前編から続く)

"ブルーフレーム”の愛称で、日本でも90年にもわたり定番の人気を誇る、イギリス発祥ブランド「アラジン」の石油ストーブ。愛用者の声に応え、温風を効果的に空間に拡張するための専用のストーブファンが昨秋発売された。日本でアラジンブランドとライセンス契約し、開発から製造を担う、日本エー・アイ・シー社の開発担当者に、製品のこだわりと発売に至るまでのエピソードや今後の展開について訊ねた。

  • クラウドファンディングによる先行販売を経て、昨年12月に日本エー・アイ・シーが一般発売した、アラジンストーブ専用のストーブファン

    クラウドファンディングによる先行販売を経て、昨年12月に日本エー・アイ・シーが一般発売した、アラジンストーブ専用のストーブファン

性能を重視しつつ、安全性とデザイン統一にも工夫

専用のストーブファンを開発するにあたっては、専用であるだけに性能面が重視された。その結果、熱の伝わり方の工夫とともに、ファンの回転数が他社ストーブファンに比べ高くなっていることから、安全性についてはより配慮する必要があった。そこで行ったのが「魚肉ソーセージ」を用いたという試験だ。

「回転するファンに魚肉ソーセージを直接入れた時、傷がつかなければOKという基準を設けました。このファンは(平面的ではなく)捻った形状なので、前から差し込んだ時には指が『面』で跳ね返る角度になって意外にもあまりケガをしにくい。逆に裏側から指を入れると捻りの角度が逆になりファンの『角』にダイレクトに当たり危険なため、後ろ側からは指が入らないようなガードを設けることで、基準の安全性をクリアしました」

  • 前側は比較的ひらけているが、後ろ側は指が入らないケガ防止のガードが設けられている

今回のストーブファン外観のデザインは、当然ながらアラジンストーブとマッチするデザインが意識されている。丸みを帯びたフォルムや、どこか懐かしさを覚えるレトロで愛らしい意匠は、これまでのアラジン製品に共通したものだ。

「ストーブファンですので、性能を上げるためにペルチェ素子の下側に熱が集まり、上は冷えやすい形状は必然ですが、それらを意識しながらも、アラジンらしいシンメトリーで柔らかなカーブを用いたデザインがこだわったポイントです。主役はあくまでもストーブで、今回は付属の専用器具ですから、ストーブを邪魔しないようにスッキリとした線でまとめながらも、柔らかい見た目を心がけました。質感は、ストーブがピカピカとしたメタリックやガラス素材なので、こちらは光沢を抑え気味にしています」(デザイン担当者談)

もう1つのこだわりは、全方位的な美しさ。「部屋全体を温めるストーブなので、部屋の中心に置かれることも多い」という理由から、「裏側から見ても綺麗なように、ファンのモーター部分を隠すための裏カバーの形状にも意識してデザインしました」とのこと。だが、デザイン担当者へは性能への注文や安全上の条件を出したそう。

性能では、「開発側としては、ファンに何もカバーせずに風通りをよくすれば、上が冷えてより下との温度差が広がるため、ペルチェ素子がエネルギーを多く生んで性能自体はアップします。デザイン側としては、モーターなどの中の部品はあまり見せたくない。折り合いをつけるために、開発側からは穴の開口率は最低でも30%でデザインをするようにお願いしました。最終的には周りのカーブなども含めてその基準を満たすようにデザインしてくれました」と沖田氏。

  • 360°全方位から美しく見えることを意識したデザイン。30%の開口率を保持するという開発側からの要件を満たしつつ、モーター部を隠すためのカバーの形状にもこだわった

先ほどの"魚肉ソーセージ"の件はもちろんだが、ストーブの上に載せる補助器具ならではの安全性はとても重視される。純正のストーブファンとして、アラジンのストーブの天面の形状やサイズに合わせて設計されているわけだが、このストーブファンでは、「転倒角度」と呼ばれる、"倒れない"ための安全基準も通常よりも厳しくしている。

「転倒角度は、一般的にも10°傾いて倒れてはいけないという基準があるのですが、高温になる暖房器具ですので、15°傾けても倒れないという社内基準を設けて設計しています。専用ベースが支えとなって、なかなか倒れにくい構造になっていますが、実際に試験した結果、どのストーブでも20°までの転倒角度を担保しています」

  • ストーブの上に載せて使う器具だけに、安全上、倒れないことは必須の条件。通常よりも高い基準で設計されている

ストーブはカラフル、ストーブファンのカラー展開は?

今回のストーブファン、カラーはブラック1色のみだ。さまざまなカラバリを展開しているアラジンのストーブの、どの色とも相性のよいカラーとしてブラックが選ばれたが、実は他の色も検討されたという。

「カラー展開の話ももちろん検討しています。ただ、色の相性のよさだけでなく、黒というのは一番耐熱温度が高く、物体の温度を下げるカラーでもあり、自分の持っている熱を外に吐き出すという放熱性も高いんです。羽根の色はどの色でも構わないのですが、実は色によって特性がまったく変わるのです」とはいうが、「赤は変色しやすかったり、塗装のハードルが高く、簡単ではありませんが、挑戦してみたいとは思っています」と意欲を話してくれた。

ところで、ストーブファン本体の素材は全面的にアルミニウムを採用している。そこにも多くの理由と密かな工夫があるそうで、次のように明かしてくれた。

「素子の熱を外へ逃がすために、ペルチェ素子が入ってる部分のアルミは厚みが少し分厚くなっています。アルミ板は分厚くなると熱の通りがよくなり、熱の伝導率がよくなります。薄いと熱の通り道が狭くなるため、熱が移動しづらくなります。単純には全体的に分厚くすればいいのですが、コストを抑えたり、いろいろな目的があって、熱が移動しやすいように根元部分だけを厚くしたぶん、他の部分は薄めにしています。羽根もアルミですが、羽根は軽いほうが適していて、耐熱性により樹脂は使えないので、金属なのに軽いアルミを採用しています」

  • 日本エー・アイ・シー 企画本部 商品戦略課 沖田勇磨氏

これまでの製品に関しても、本体はもちろんのこと、付属品に至るまで細かい仕様とデザインにまで強いこだわりを持つ印象のあるアラジンブランドの製品。今回のストーブファンについても、あくまでストーブの"脇役"であることを自覚しつつも、性能や安全面を両立しながら、しっかりとアラジンのデザイン意匠とブランドの真髄が貫かれており、感嘆する逸話ばかりであった。