AmazonがKindle Scribeシリーズのラインアップを刷新、新モデルとして、カラー表示に対応したKindle Scribe Colorsoft、モノクロ表示のKindle Scribe、さらにそのフロントライト非搭載モデルなどを一気に発売した。Kindleは、読書のための電子書籍のリーディングデバイスとしてだけではなく、ペンに対応し、手書きメモの作成や書籍への書き込みなどを想定した複合端末だ。

  • AmazonがKindle Scribeシリーズのラインアップを刷新した。大型化、高機能化し、読書用のデバイスという枠組みを超える複合端末としての存在感を増している

    AmazonがKindle Scribeシリーズのラインアップを刷新した。大型化、高機能化し、読書用のデバイスという枠組みを超える複合端末としての存在感を増している

初代のKindle Scribeの発売は2022年だった。2024年にホワイトベゼルのNotebook Designモデルが発売されているがハードウェア的には進化はないに等しかった。このときにソフトウェア的にはActive Canvas機能がサポートされ、本の余白に手書きのメモを書き込めるようになった。書き込んだメモは近くのテキストに付箋として表示される仕組みだ。

今回の刷新では、ハードウェアにも大きく手が入れられている。画面サイズは10.2インチから11インチへと大型化、全体の専有面積はほぼ変わらないが、縦横比が縦長に変わった。ただ、画面そのもののアスペクト比は従来と変わらず4:3だ。厚みも5.7ミリから5.4ミリへと薄型化されている。そして重量は433gから400gへとダイエット、処理性能は40%高速化されたという。

新しいフロントライトでは小型化されたLEDを従来比2倍搭載し、ディスプレイに密着させて視認性を高めたという。また、テクスチャ成型ガラスによってペンで手書きするときの摩擦感を再現した。最新のOxideディスプレイ技術は画面の書き換え速度、高解像度化に貢献、そして静止時の消費電力を極限まで削減する。ただでさえいつ充電したのか忘れるくらいにバッテリ駆動時間の長いKindleだが、それがさらに長くなった。Colorsoft機なら、明るさ設定13、ワイヤレス接続オフで1日30分使用した場合、読書なら一度の充電で最大8週間、手書き機能なら最大2週間利用可能だという。ここで評価したいのは、放置時の待機時間だ。

そして、なんといってもモノクロのみに支配されていた読書の世界にColorsoftバージョンが投入され、大きな画面の電子書籍にもカラーの世界がやってきた。

  • Kindle Scribe Colorsoft。大画面のScribeにもColorsoftバージョンが登場

    Kindle Scribe Colorsoft。大画面のScribeにもColorsoftバージョンが登場

写真集やカタログ雑誌などならともかく、通常の文字中心の電子書籍を読むのにカラーは必要ないと思っていたこともあるが、これはノートパソコンを使い始めた1980年代の終わりに、モバイルノートにカラーはいらないと思っていたときと似ているイメージだ。モノクロモバイルノートの時代はアッという間に過ぎ去り、普通はカラー液晶という世界がやってきた。そういうもんだと思う。書籍はモノクロでもペンケースにはカラフルなペンが入っている。文字色とは異なる色でハイライトしたりするからこそ、あとでふりかえりやすいのだ。

Kindleのカラー対応はKindle Colorsoftだが、日本では米国よりちょっと遅れて2025年7月に発売されている。ちなみに日本でKindleサービスが始まったのが2012年で、2007年の米国での誕生から5年遅れだったが、それから長くモノクロの世界に閉じこもっていた。Kindle端末のライブラリには購入済み書籍の表紙絵が並ぶが、色がないので、いまひとつどれがどれだかわからない。でも、本文を読み始めれば、原本がモノクロなので、特に困らない。紙の書籍に比べて、文字サイズや行間、マージンなどが自由自在だ。Kindleデバイスのおかげで読書の趣味をあきらめないですんでいるシニア世代も決して少なくないはずだ。

  • 2025年7月に発売された7インチのKindle Colorsoft

    2025年7月に発売された7インチのKindle Colorsoft

カラーが必要な書籍は、他のデバイスで眺めればいいと思っていたし、そのためのデバイスは一般的なタブレット、ノートPC、TVまでいろいろ揃っている。カラー要素満載のグラビア的な要素を楽しむなら、そうしたデバイスで表示させればいい。コミックを50インチのTVで見れば、それはそれで本当に楽しい。

だが、Kindle Scribeは「読む」だけではなく「書く」をサポートするデバイスだ。本は読むだけではなく、インタラクティブに書き込みをすることで、内容の理解を高める。また、第三者の書いたコンテンツとしての書籍はもちろん、Wordなどでの文書を取り込み、そこに追記したりもできる。「読む」を楽しむだけではなく、紙の代わりに無限に近い用紙を提供してくれる自由帳でもある。

読みと書きの双方をサポートし、カラーにも対応した新型Kindleは、このシリーズのいわば完成形とも言えるだろう。

しかもGoogle DriveやMicrosoft OneDriveにも対応し、そこからドキュメントをダウンロードしてメモを追加できる。クラウドストレージにファイルを置いたまま書き込みができたらとも思うが、独自の形式での書き込みであって、加筆修正などの編集とはちょっと違うということを考慮すれば許容できる。他のKindleでの参照も考慮しなければならないから、そこに混乱があってはならない。

いずれにしても、ついに10万円超えのKindleが登場したわけで、気軽に購入できる価格ではなくなってきている。でも、それはスマホだって同じだ。ちょっと複雑な想いもあるが、個人的には世界観が拡がったことを素直に喜びたい。

11インチというサイズ感は単行本の四六判よりかなり大きく、見開き2ページとはいかないまでも、1.6倍近い面積を表示できる。カバンの中での収まりを重視するなら重量も215gと大きめのスマホ程度に近い通常サイズのKindle Colorsoftという選択肢もあるが、大画面でコンテンツに没入したいなら400gの11インチはきわめて魅力がある。そしてKindleがいいのは、異なる端末を並行して使っていても、コンテンツをどこまで読んだか、何を書き込んだかが自動的に同期できる点にある。だから、TPOに応じて端末を選べばいい。そんなスタイルの読書がかなう時代。長生きはしてみるもんだ。