GoogleがPixel 10aを発売した。日本市場のスマホ選びを象徴するような製品だ。Google Pixelシリーズは、Google自身がピュアなGoogle体験を提供するハードウェアのシリーズだが、スマホについては毎年秋に発売される無印(最新は10)、Pro、Pro XL、Pro Foldの4種類がフォームファクタ、つまり筐体サイズや形状の異なるモデルとしてラインアップされている。そして、それらから半年程度の時間をおいて、欲しかったけれどもコスト的にあきらめていた機能を凝縮したAシリーズとして比較的手頃な価格で発売される。発売されたばかりのPixel 10aは、まさにそのAシリーズの最新版だ。

  • Google Pixelシリーズの新作「Google Pixel 10a」。写真は、異彩を持つアーティストのテーマを選択して適用するという特別仕様の「Isai」モデル

    Google Pixelシリーズの新作「Google Pixel 10a」。写真は、異彩を持つアーティストのテーマを選択して適用するという特別仕様の「Isai」モデル

発売直後のGoogleストアでは79,900円~と、昨年秋に発売された無印モデルの128,900円~に対して5万円弱の価格差がある。半額とはいわないが、メモリ高騰でスマホの価格が上がりそうなムードの中でこの価格はなかなかのものだ。

そうはいっても、日本における一般的なエンドユーザーのスマホ調達はキャリアからの販売や手厚い下取りシステム、そして、残価設定型のプランなどの利用で、端末の返却が必要ながら、少ない負担額で最新機種への乗り換えができるので、単にメーカーの提示する価格だけで議論するのは難しい。実際、今回は、4キャリアすべてから発売されるが、提供価格や提供施策はまちまちだ。

Google Pixel Aシリーズは日本において他地域を圧倒する人気があるという。米国での販売傾向も異なる。米国での同シリーズは一定のシェアを持ちながらも、シリーズ全体の売上を牽引しているのはPro XLやProなどのプレミアムモデルなのだそうだ。その背景には、日本と同様にキャリアによる下取りプログラムがあるのに加え、上位モデルの頻繁な価格改定によって、Aシリーズとの価格差が縮まることが多く、消費者が高性能な上位モデルを選ぶ現象が起きているともいう。

AppleのiPhoneの売れ方にも似たようなトレンドがあり、無印やSEが人気の日本に対して、米国ではProやPro Maxが人気らしい。そして売れ方もPixelと似た傾向にある。つまり、価格とコンパクトさを重視する実用的な価値観で判断する日本と、あの手この手でとにかく最上位の性能を求める購買行動の米国という分析ができそうだ。

ただ、別の言い方をすれば高額なスマホが買えなくなるほど日本の国力が落ちているのだろうか。相対的に購買力が低下している側面が確かにあるように感じる。長引く円安や物価高、実質賃金の伸び悩みなどでコスパを重視せざるを得ない状況が続いている。

また、日本は電気通信事業法の改正で、通信料金と端末代金の分離が義務付けられてから、スマホ販売時の過度な割引が規制されている。廉価なモデルが選ばれやすくなっているのはそのためだともいえる。

だが、他国と比較したときの実用主義と嗜好の違いは明らかだ。電車での移動が多い日本では片手で操作しやすい小型で軽量な端末が好まれる傾向にある。手のひらサイズも小さい。片手でつり革をつかんだりカバンを支えたりしながら、もう片方の手ひとつで器用にスマホを操作する通勤電車内でのふるまいは日本の大都市ならではのものだといえる。現在のAシリーズなどのベーシックなモデルでも、日常的な用途において十分すぎるほどの性能があり、高額なオーバースペック端末は不要だという合理的な判断をする消費者が増えているのではないだろうか。

こうした背景もあり、とにかく日本のGoogleはAシリーズに力を入れている。そして今回は、株式会社ヘラルボニーと共創した日本限定モデル「Isai Blue」も提供される。

  • 日本限定の「Google Pixel 10a Isai Blue」。日本のユーザーに対する深い感謝の思いを込めたモデルとして、特別なパッケージで提供される

    日本限定の「Google Pixel 10a Isai Blue」。日本のユーザーに対する深い感謝の思いを込めたモデルとして、特別なパッケージで提供される

  • Isai Blueは、一般モデルのPixel 10aと比べると同じスマホとは思えないくらいのユニークさがある

    Isai Blueは、一般モデルのPixel 10aと比べると同じスマホとは思えないくらいのユニークさがある

  • 一般モデルは4色をラインアップ。右端がIsai Blue

    一般モデルは4色をラインアップ。右端がIsai Blue

今年はGoogle Pixelの誕生から10周年だ。それを記念し、日本のユーザーに対する深い感謝の思いを込めたモデルが特別色の「Google Pixel 10a Isai Blue」だ。Isaiは異彩を意味する。ヘラルボニー社の契約アーティスト3名によるアートを使ったテーマで、彼らの異彩で壁紙やアイコンなどが彩られる。

256GBのストレージを持つ本体、10年ぶりにカメラの出っ張りがなくなってフルフラットな背面がむき出しになっていても損傷から守れる限定のバンパーケース、特製のオリジナルステッカーなどが同梱されたひとつのパッケージとして提供される。価格は94,800円で、すでに予約受付が開始されているが、発売予定は通常モデルからちょっと遅れて5月20日となっている。バンパーや特別テーマなどであっても通常モデルの256GBと価格は同じに設定されている。

  • Isai Blueには、ヘラルボニー社の契約アーティスト3名によるアートを使ったテーマパックが搭載される

ヘラルボニーは「異彩を放て」というミッションのもとに、「ちがい」の可能性を追求する企業だ。国内外の障(害)のある作家が描く2000点以上のアート作品をライセンスとして管理し、さまざまなビジネスに展開している。同社では、「障がい」や「障碍」ではなく、「害」という漢字をあえて使って表現するのは、社会の側に障壁があると考えているからだという。

また、Googleは「人に寄り添う」という開発思想でPixelを作ってきた。その2つの思想が重なり合って特別な青としてのIsai Blueが生まれ、その色をまとっているのが日本限定のこのモデルだ。

通常モデルとのハードウェアの違いはないが、まるで、別モデルのような仕上がりを楽しめる。色もいい。その裸の10aの色を殺さずに愛でるためのバンパープロテクトも効いている。そして、相談できるAIスマホに最適化されたサイズ感。無印10と比較すると、わずかに大きいのだが、重量は21gも軽い183gだ。同梱されるバンパーも全体を覆うケースと比べればずっと軽い。実使用重量も200gを下回る。

この特別なモデルはもちろん、通常モデルについても、今回のAシリーズは、Googleが普段使いのスマホに大真面目に取り組み、その使用感や所有感を、格別なレベルに昇華させたモデルだといえそうだ。

価値観は人それぞれだが、廉価なスマホを選んで、妥協したことを後悔するのではなく、合理的な判断と実用性を見る確かなまなざしで選んだのだという自覚を持つのに十分なすぐれたスマホだと思う。いろんなPixelがあっていい。