米国のオーディオブランドSonosが、Sonos Playを発表した。販売価格は49,800円だ。4月末から販売を開始する予定だ。発売前の実機を試させてもらったので、そのインプレッションを紹介したい。
Sonos Playは汎用性の高いポータブルスピーカーで、エンドユーザーがメーカー提供のキットを使って交換可能なバッテリで最大24時間駆動ができ、必要に応じてスピーカーからスマホを充電することもできる。本体はストラップを備えて持ち運びしやすく、また、IP67の防水・防塵機能を備え、外出先やクルマの中、風呂など、あらゆる場所でのオーディオ再生が想定されている。コンパクトな筐体なのに、ちゃんとステレオ再生ができる構成で内部設計されているのもうれしい。
パッケージには充電ベースが同梱され、その上に載せるだけで充電ができる。消耗品としてのバッテリの劣化が気になるものの、バッテリが新品時ほどもたなくなってきたら、キットを購入して交換すれば新品時に蘇る。スピーカーは経年変化でかえってよい音を出すことも少なくないので、これはうれしい計らいだ。
スマホの登場以降、明らかに、人々のオーディオ体験は変化した。かつてはLPレコード、近年ではCDディスクを購入して楽しんでいた音楽コンテンツは、サブスクの浸透でApple MusicやAmazon Musicで推しの作品を自由に聴くのが当たり前になった。だからこそ推しのコンサート体験を求めるユーザー層も広がったように思う。すでに音楽はコンテンツのコピーを所有するものではなく、いつでも聴きたいときに聴く権利を購入するものになったといえる。つまり、スマホの普及で音楽は「メディアを所有するもの」から「ネットワーク越しにコンテンツにアクセスするもの」に変わった。Sonos Playは、そうした変化を前提に設計されたポータブルスピーカーだ。
今回のPlayのみならず、Sonosのスピーカーは、まさにそういう時代にマッチすることをめざした製品だといえる。
ポータブルスピーカーというと、スマホとBluetoothでペアリングし、スマホで再生する楽曲をスピーカーで鳴らすことを思い浮かべる。もちろんそういう使い方もできる。だが、自宅内など、スマホとスピーカーを同じWi-Fiネットワークに接続し、ネットワーク経由で鳴らしたほうがいい。Sonosアプリを使うことで、Bluetooth接続とは根本的に異なるストリーミングでコンテンツを楽しめる。
このとき、再生するスマホはあくまでもリモコンにすぎない。音楽データはスピーカーが配信サービスから直接受信する。これによって、ロスレス音源やハイレゾ音源などのデータをストレートに受信できるため、音質面で圧倒的に有利だ。AppleとAmazonなど異なる配信サービスを並列に使う場合も、アプリの使い方の違いにとまどうこともない。
いったん音楽の再生が始まったら、ちょっとコンビニに買い物に行くような場合にスマホを持ち出しても再生は途切れない。これはスピーカーがサービスから直にデータを受信しているからだ。
Sonosでは、所有している同社製品を「システム」という概念で束ねることができる。たとえば、Playが2台あるなら、左チャンネルと右チャンネルを割り当ててステレオ再生用のシステムを組んだり、既存のサウンドバーが割り当てられたシステムに、リアスピーカーとしてPlayを追加するといった具合だ。
家中のスピーカーを単一のシステムに割り当てれば、音楽はすべてのスピーカーで再生される。不思議なのだが、緻密な制御が行われているようで、スピーカーごとの再生遅延などを感じることはまずない。万が一、目立って不満なら、微調整する機能も提供されている。
部屋から部屋に持ち運べば、スピーカーの置かれる環境は異なる。家具がたくさんある部屋、壁面がたくさん露出している部屋、狭い部屋、広い部屋などだ。その移動に対応するための機能として用意されているAutomaticTrueplayは、環境に合わせてサウンドを自動的に調整する。再生を開始すると同時にチューニングをスタートし、コンテンツが変わったり、別の場所に移動されたりするごとに、自動的に再チューニングが行われる。
オーディオはさまざまな要素がサウンドの品位に影響する手間とカネのかかる趣味ではあるが、スマホでの再生をネットワークスピーカーで鳴らす場合は、スマホの実力には関係なく、スピーカーの実力だけでサウンドが完成する。何百万円もかけてオーディオセットを組めば、高品位なオーディオを楽しめるのは当たり前だとしても、日常的に使っているスマホの再生音を、ちょっと奢ったシステムで再生すれば、それなりにリッチな気分になれるというものだ。
個人的にはSonosのスピーカーは小音量で聴いても心地がいいようにチューニングされているようにも思う。Playがちょっと大きく感じるなら少し小ぶりのRoam 2、物足りないならMove 2という選択肢もある。そういう楽しみの贅沢さを味わってほしい。年に数度の推しのコンサートに散財するのも楽しいかもしれないが、毎日の暮らしを推しの楽曲をちょっとリッチなサウンドで楽しむというのも悪くない。4月から新しい生活が始まった方も多いと思うが、一人暮らしなどの環境をより豊かなものにするひとつの方法でもある。
いろいろな意味で、デジタルネットワークがいろんな場面の敷居を下げている。今はそういう時代だ。



