音響機器メーカーのBoseがQuietComfort Ultra Headphones(第2世代)を発表した。
同社がアクティブノイズキャンセル製品を最初に発売したのは1989年のことで、航空機向けの業務用ヘッドセットだった。その後、2000年にはヘッドホンに実装されたマイクで外部の環境音を拾い、その逆位相の音をヘッドホンから出力することでノイズを低減する初代のQuietComfortを発売、以降、歴代のシリーズを更新するごとに高い評価を得るようになった。
歴代シリーズの完成形、Bose QC Ultra Headphones第2世代
個人的に最初に所有したBoseのノイズキャンセリングヘッドホンは「QuietComfort 2」だった。2003年発売の製品だが、2005年にマイナーチェンジされたものを愛用していた。
それ以来、ずっと代を重ねる同シリーズを愛用してきた。世代が新しくなるたびに、新鮮な驚きを感じさせてくれるQuietComfortシリーズを、いつのまにか各社のアクティブノイズキャンセルヘッドホンとの比較の際に、ある種のリファレンスのように位置付けるようになってきていた。
今回は、代替わりではあるが、製品名としては「QuietComfort Ultra Headphones(第2世代)」と明確に前製品の新世代と位置付けられている。つい先日、完全ワイヤレスイヤホンの「Bose QuietComfort Ultra Earbuds」が第2世代となったばかりだが、今回はそれに続く新製品となる。
この「第2世代」という表現は、イヤホン、ヘッドホンだけではなく、スピーカー製品にもあり、そちらはそちらで、たとえば、Bose SoundLink Micro Portable Speaker(第2世代)も発表されている。
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Bose SoundLink Micro Portable Speaker(第2世代)とQuietComfort Ultra Headphones(第2世代)。カラーはブラック、ホワイトスモーク(写真のモデル)に加え、ドリフトウッドサンドとミッドナイトバイオレットが限定色として用意されている
USB-C有線でロスレス再生に対応、装着検出も強化
現行の市場で話題になるのは完全ワイヤレスイヤホンがほとんどだが、これから冬のシーズンに向かって、耳を覆うヘッドホンを愛用するユーザーの姿を電車の中などで目にするようになる。それが秋の到来だといってもいい。
酷暑の夏の間は装着するのもためらわれるヘッドホンだが、耳に装着したときにスッと環境ノイズが消える瞬間に、「秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」的な気持ちになったりもするわけだ。
今回の製品ではUSB-C有線オーディオに対応した。これによって、デジタルのロスレス再生が可能になり、Bluetoothの電波に頼らないサウンド伝送が実現している。従来通りのアナログオーディオもサポートし、3.5ミリジャックを使ってのアナログ再生も可能だ。
また、装着検出も強化され、ヘッドホンを耳に装着すれば自動的に接続、耳から外せば低消費電力のスタンバイモードに入る。このモードは内蔵バッテリによって数カ月間持続し、再開は再び耳に装着するだけだ。
以前の同機能では耳から外したのにスマホとつながりっぱなしで、音声着信したときに電話に出たつもりでも相手の声が聞こえないといったトラブルを経験することが少なくなかったのだが、今回、かなり使い勝手が向上しているのはうれしい。
穏やかなANCが一般的ないまヘッドホンの強烈な消音がなつかしい
個人的には旅行のときなどには、完全ワイヤレスイヤホンではなく、耳からかぶせるヘッドホンを使うことが多い。というのも、飛行機の中などでイヤホンを使うと、ウトウトしたときに耳からポロリと落としたら最後、見つけるのに一苦労といったトラブルが想定されるからだ。ヘッドホンならその心配はない。
ちょっとした会話のときにも耳からずらすだけで相手に対応しようという意思を伝えることができる。イヤホンの外部音取り込み機能の存在は便利だが、今ひとつ、人間の相手に誤解を与えてしまい、相手の話を聞こうという意思を持たないかのように思わせてしまう可能性がある。
いずれにしてもアクティブノイズキャンセルが市民権を得た今、巧妙にコントロールされた耳にやさしいノイズキャンセルの心地よさに慣れきってしまった反面、かつての強烈な消音感覚がなつかしく感じたりもするわけで、人間というのは実に勝手なものだと思う。