セイコーエプソンが発表した2026年度上期(2026年4月~9月)の連結業績は、売上収益は前年同期比11.1%増の7411億円、事業利益は同79.4%増の671億円、営業利益は同102.9%増の632億円、税引前利益は同102.0%増の621億円、当期利益は同139.3%増の446億円と増収増益の結果になった。
セイコーエプソンの𠮷田潤吉社長は、「第2四半期は、需要環境は堅調に推移するとともに、為替のプラス影響があり、プレシジョンイノベーションを中心に、各セグメントで増収となった。また、事業利益は、部材費や原油価格の高騰影響を受けるなかで、価格対応や米国関税還付によって増益になった」と総括。「売上収益は、為替のプラス影響に支えられ、社内計画並みの実績。だが、事業利益では、プレシジョンイノベーションの販売が計画を上回ったことに加え、オフィス・ホームプリンティングにおける部品の調達難に伴う販促費の抑制が進んだことで計画を上回った。また、オフィス・ホームIJPやPC、ビジュアルプロダクツなどで、価格対応の効果が出ている」と振り返った。
価格転嫁と為替、関税還付もプラス要因に
2026年度第2四半期(2026年7~9月)のセグメント別業績では、プレシジョンイノベーションの売上収益は前年同期比25.4%増の511億円、セグメント利益は同49.8%増の168億円となった。いずれも社内計画を上回っているという。そのうち、プリントヘッドの外販を行っているインクジェットソリューションズの売上収益が前年同期比31.0%増の199億円、マイクロデバイスの売上収益が前年同期比23.2%増の280億円、エプソンアトミックスの売上収益は前年同期比16.2%増の44億円となった。
「インクジェットソリューションズでは、中国での新たな用途向けの案件獲得に加えて、その他地域でも販売が拡大。マイクロデバイスは水晶デバイスでネットワーク向けや産業向けを中心とした強い需要に対応した。エプソンアトミックスは、高機能金属粉末の販売が堅調に推移した」という。
インダストリアル&ロボティクスの売上収益は前年同期比12.4%増の829億円、セグメント利益は同203.9%増の140億円。社内計画並みで推移したという。そのうち、商業・産業プリンティングの売上収益が同10.9%増の761億円、ロボティクスの売上収益が同33.0%増の17億円となった。
「商業・産業プリンティングは、フォトやラベル、小型プリンターなどの販売が好調。ロボティクスは、中国やその他アジア圏を中心に、AI関連の販売が伸長した」という。
オフィス・ホームプリンティングの売上収益は前年同期比2.4%増の1715億円、セグメント利益は同59.6%増の191億円。内訳は、SOHO・ホームの売上収益が前年同期比2.1%増の1352億円、オフィス共有の売上収益は前年同期比2.8%増の230億円、オフィス・ホームその他の売上収益が前年同期比5.0%増の133億円となった。
「プリンター本体の販売台数は、部材調達難の影響を受けて、前年同期実績を下回った一方で、価格対応や、為替のプラス影響により増収となった。セグメント利益は、コスト増の影響を受けたものの、米国関税還付により増益になった」という。
ビジュアル&ライフスタイルの売上収益は前年同期比6.8%増の674億円、セグメント利益は同75.5%増の99億円。そのうち、プロジェクターを中心とするビジュアルプロダクツの売上収益は前年同期比3.5%増の461億円、ウエアラブルプロダクツの売上収益が同20.5%増の132億円、PCの売上収益が同6.4%増の81億円となった。
「売上収益は社内計画を下回った。ビジュアルプロダクツは、販売台数は前年同期を下回ったものの、ミックス影響や為替のプラス影響などにより増収となった。また、ウエアラブルプロダクツは、国内および海外ともに引き続き販売が好調に推移した。PCは、前年度のOSサポート終了に伴う特需からの反動により、販売台数が減少した一方で、販売価格が上昇した」という。
エプソンダイレクトで展開しているPC事業は、先に触れたように、第2四半期実績は、売上収益が前年同期比6.4%増の81億円となり、2026年度通期見通しも売上収益は前年比5.7%増の300億円を見込んでいる。国内PC市場全体が大幅な落ち込みをみせるなかで、売上収益では前年実績を上回る水準で推移している。
通期の業績見通しは据え置き、部材調達難は続く
一方、2026年度通期(2026年4月~2027年3月)の業績見通しを修正した。売上収益は据え置き、前年比6.8%増の1兆5100億円、事業利益も据え置き、同25.3%増の1050億円としたものの、営業利益は20億円増額し、同107.8%増の1030億円、税引前利益は10億円増額の同99.9%増の1000億円、当期利益は30億円増額し、同295.6%増の720億円とした。
「足元の状況を踏まえて、プレシジョンイノベーションの販売計画を上方修正する。一方で、オフィス・ホームプリンティングは、需要は堅調であるものの、一部の電子部品や基板などの調達が難しくなるなかで、本体の販売台数計画を引き下げることにした。特定のサプライヤーから供給される部品が、予定の数を確保できず、生産量が落ちるのが理由である。また、部材費や原油価格の高騰影響を追加で織り込んだ。ここでは、価格対応策も進めることになるが、タイムラグが発生するため、通期ではコスト増の影響が残ることになる。当期利益では、グローバルオペレーション改革の一環として、海外工場売却益を見込んでいる」とした。
海外工場の売却は、シンガポールの生産拠点が対象となり、第3四半期中の売却を予定。50億円程度の売却益を見込んでいる。
2026年度通期の部材・輸送費の変動影響として、8月公表時点ではマイナス380億円としていたが、これが120億円悪化すると予測。マイナス500億円に修正した。セイコーエプソン 執行役員 経営管理・DX本部長の繁村治氏は、「メモリー価格の高騰でマイナス60億円、原油価格の上昇による輸送費の増加で20億円、各事業で広範に利用している金属などでマイナス40億円を想定している」と説明した。
プリンターの2026年度の販売台数計画は、インクジェットプリンター本体が8月公表値から60万台減少させ、前年比50万台減の約1660万台。そのうち、SOHO・ホーム向け大容量インクタンクモデルは40万台減少させ、前年並の約1370万台。構成比は83%となる。また、SOHO・ホーム向けインクカートリッジモデルは20万台減少させ、前年比55万台減の約250万台、オフィス共有IJPは計画を据え置き、前年比5万台減の約40万台とした。プロジェクターの販売台数は据え置き、前年並の130万台を目指す。
𠮷田社長は、「オフィス・ホームプリンティングは、需要の見通しに大きな変化がないが、世界的なAI関連需要の増加を背景とした一部の電子部品および基板で供給がひっ迫し、調達難による生産影響やコスト増を織り込んだ。部材確保に向けた取引先への働きかけなどを進め、可能な限りの挽回を進める。また、コスト増に対しては、価格対応を進め、収益への影響を最小化する」と語った。
成長エンジンに「マイクロデバイス事業」
今回の説明会では、マイクロデバイス事業に時間を割いて説明した。
マイクロデバイスは、セイコーエプソンが、2026年3月に打ち出した長期ビジョン「ENGINEERED FUTURE 2035」において、成長エンジンと位置づけるプレシジョンイノベーションセグメントのなかに含まれる事業だ。
𠮷田社長は、「マイクロデバイスのなかでも、水晶デバイスは、AIデータセンター、自動運転などに必要とされる大容量、高速演算、高速通信を支える重要なデバイスとなり、車載や民生利用に加えて、データセンターを含むネットワーク向けの需要が拡大している」と語る。
同社では、水晶デバイスの2026年度第2四半期の売上収益が、この2年間で1.6倍に拡大していることを示しながら、「エプソンの強みは、水晶デバイスと半導体を、自社で設計および製造ができる数少ないメーカーであること、関連する知的財産を数多く有し、市場ニーズに応える製品を提供できる点にある。水晶デバイスと半導体の統合設計により、トレードオフの関係にある高精度、省電力、小型化を同時に実現し、様々なアプリケーションへの展開が可能になっている」と胸を張る。
水晶デバイスに関する特許登録数は、日本および米国を対象にした2025年実績において第1位だという。
エプソンの特徴は、振動子や発振器といったタイミングデバイスだけでなく、慣性計測ユニットや加速度センサーなどを、ネットワークやインフラ、航空・宇宙、産業機器、車載などの分野にも提供できる点だとし、「高付加価値製品の比率が高まっている。また、ネットワーク向けマイクロデバイスは売上収益の約2割を占めており、この領域が増えている。お客様の要求にあわせたカスタマイズが必要なビジネスであり、そこにもエプソンの特徴を発揮できる。今後は、中長期的な製品ロードマップを示しながら事業を推進していく」と述べた。同社では、ネットワーク向け市場において、高性能製品の需要が高まると予測しており、それにあわせた投資を進める考えも示した。「ここ数カ月でも、少しずつ増産ができるように体制を強化している」という。
𠮷田社長がとくに強調したのが、AIデータセンターに向けて、エプソンが提供できる価値である。
𠮷田社長は、「近年のAIの普及により、データセンターで扱うデータ量は急増し、通信には高速化、大容量化、省電力化が求められている。通信は電気通信から光通信への移行が進み、電気通信と光通信を相互に変換する光トランシーバーが必要となる。水晶デバイスは、光トランシーバーのなかにあるDSPに基準クロックを提供。ここでは、より高い周波数と、信号の時間的ゆらぎであるジッターの低減が求められる」とし、「エプソンは、水晶デバイスと半導体の統合設計により、お客様のニーズに短納期で対応しながら、高周波、低ジッター、省電力、小型という、4つの性能のトレードオフを解決することができる。この技術を社会に実装することで、『ENGINEERED FUTURE 2035』の実現につなげたい」と語った。
2026年度は、エプソンが得意とする800Gbpsの光トランシーバーと、需要が拡大している1.6Tbpsの光トランシーバーにも取り組んでいくという。












