キヤノンは、2026年度第3四半期累計(2026年1月~9月)の連結業績を発表。売上高は前年同期比4.0%増の3兆4333億円、営業利益は同8.4%増の3276億円、当期純利益は同12.2%増の2464億円となった。

キヤノン 専務取締役 経理本部長の浅田稔氏は、「第3四半期(2026年7月~9月)の業績は、第2四半期から回復の兆しがみられていたプリンティング機器の業績が、着実に改善したほか、用途を広げながら成長を続けるネットワークカメラの伸びが牽引した。また、メモリや原油高の影響を受けた原材料価格の上昇を構造改革効果や円安影響により吸収したこと、利益率が高いイメージングやプリンティング製品の売上増加もあり、厳しい事業環境においても増収増益を達成した」と総括。第3四半期の売上高は過去最高を更新したという。

  • キヤノン 第3四半期(2026年7月~9月)の実績サマリ。中国の個人消費低迷や、中東情勢が逆風

    キヤノン 第3四半期(2026年7月~9月)の実績サマリ。中国の個人消費低迷や、中東情勢が逆風

  • 2026年度第3四半期累計(2026年1月~9月)と第3四半期(2026年7月~9月)の連結業績

    2026年度第3四半期累計(2026年1月~9月)と第3四半期(2026年7月~9月)の連結業績

  • 第3四半期の営業利益の要因分析

    第3四半期の営業利益の要因分析

第3四半期累計のビジネスユニット別の業績は、プリンティングビジネスユニットの売上高は前年同期比2.3%増の1兆8674億円、営業利益は同3.0%増の2082億円となった。「米国追加関税の影響で、プリンティング機器への設備投資が先送りされ、市況の低迷が長らく続いていたが、第2四半期から商談が活性化し、第3四半期には、米州およびアジア地域を中心に実際の販売につながってきた。2025年に投入した新製品も売上げに貢献しはじめ、増収増益になった」と振り返った。

メディカルビジネスユニットの売上高は前年同期比1.2%減の4074億円、営業利益は同40.6%減の108億円。第2四半期に続き、生産システム更新に伴う運用上の混乱や、調達先の火災による部材不足により、十分な量の生産ができずに減収になった。なお、「生産システム更新に伴う運用上の混乱は、おおむね解消しており、2027年度以降、基板の調達量を徐々に増やし、段階的に生産量を引き上げる」とした。

イメージングビジネスユニットの売上高は前年同期比16.7%増の8476億円、営業利益は同33.2%増の1444億円。「レンズ交換式カメラが、中東紛争や中国市況の悪化の影響を受け、販売台数が減少したものの、高価格帯のフルサイズモデルの新製品の販売が拡大。需要が旺盛なコンパクトカメラも、上期に続いて5割以上の増収になった。ネットワークカメラも、サイバーセキュリティやAI分析に強みを持つ製品ラインアップを生かし、データセンターや小売業向けなど、各分野で売上げを大きく伸ばした」という。

インダストリアルビジネスユニットの売上高は前年同期比10.7%減の2189億円、営業利益は同24.8%減の301億円。「半導体露光装置は、AI関連需要の拡大に伴い、メモリ向け用途を中心に、KrF装置の販売が前年実績を上回った。だが、FPD露光装置は、パネルメーカーが投資判断を先送りした影響を受け、販売台数が減少した」という。

  • 第3四半期累計のビジネスユニット別の業績

    第3四半期累計のビジネスユニット別の業績

また、キヤノンの浅田専務取締役は、部材の逼迫およびコストアップの現状についても説明した。

「メモリに関しては、2026年の必要数量はすでに確保済みであり、第4四半期の購入価格も、おおむね想定していた上昇幅に留まっている。また、原油価格は、不安定な中東情勢を反映し18年ぶりに最高値を更新しているが、現時点では原油関連の原材料価格のさらなる上昇は見られていない。一方で、8月以降、AI関連の需要拡大を背景に、プリント基板および基板に使用する電子部品の逼迫が深刻であり、キヤノン製品の生産に多大な影響を与えている。プリンティング機器やカメラなどは、売上げへの影響が及ばないように対応しているが、カメラは、中東紛争の継続や中国市況の悪化に加えて、一部部材が不足している」と指摘した。

  • 部材の逼迫はメディカル事業への影響が大きい。年間での影響を、前回の約450億円から今回は約900億円にまで下方修正

    部材の逼迫はメディカル事業への影響が大きい。年間での影響を、前回の約450億円から今回は約900億円にまで下方修正

また、メディカル事業への影響が大きく、当初見通しでは、9月には生産が正常化し、第4四半期には可能な限りの増産を行うことで業績への影響を最小限に留める計画だったものの、プリント基板および基板に使用する電子部品の逼迫により、予定した数量を調達できなくなり、第4四半期の売上高をさらに引き下げ、年間での影響を約900億円にまで下方修正した。「現在、代替調達を含め、あらゆる手段を講じて基板の確保に取り組んでいる。2027年上期以降、段階的に生産の正常化を図る。各医療機関の装置の導入計画を考慮した納期の調整や代替機の貸し出しなどを行い、顧客ニーズに真摯に対応し、顧客基盤の維持に努める」と語った。

2026年度通期(2026年1月~12月)見通しについては、下方修正を行い、売上高は340億円減額し、前年比3.1%増の4兆7600億円、営業利益は90億円減額し、同0.1%増の4560億円、当期純利益は70億円減額し、同0.3%増の3330億円とした。

  • 2026年度通期(2026年1月~12月)の見通し。前回から売上、利益とも下方修正した

    2026年度通期(2026年1月~12月)の見通し。前回から売上、利益とも下方修正した

  • 2026年度通期の営業利益の要因分析

    2026年度通期の営業利益の要因分析

  • 2026年度通期のビジネスユニット別の見通し

    2026年度通期のビジネスユニット別の見通し

「プリンティングについては売上高計画を引き上げているが、メディカル事業の悪化を受けて、下方修正している。だが、引き続き増収増益を目指す姿勢は変わらない」とした。

プリンティングは、商戦期である第4四半期に新製品の拡販を本格化させる。オフィス複合機はラインアップを揃えた新シリーズ「imageFORCE」を拡販し、平均売価を引き上げるとともに、プロダクションではB3サイズの新製品「varioPRINT iX1700」に加えて、、B2サイズ用紙に対応可能な「varioPRESSiV7」を投入し、ラインアップを拡大させる。

また、イメージングでは、レンズ交換式カメラは中東紛争の継続と中国市況の悪化、コンパクトカメラは部材不足により、今年の見通しを引き下げるが、販売が好調なフルサイズの新製品「EOS R6 Mark III」および「EOS R6 V」に加えて、2026年10月に発売する小型軽量のフルサイズ入門機「EOS R8 Mark II」の販売を拡大し、フルサイズモデルの構成比を高め、年間では前年比8%の売上成長を目指す。ネットワークカメラは、力強い需要を反映して、見通しを再度引き上げ、年間20%増の高い成長を見込むという。

なお、次世代の半導体製造装置として導入を進める「ナノインプリント」については、「追加で出荷した装置も使い、2027年からの量産適用に向けた取り組みを進めている。量産ラインを想定したプロセスの検証および生産性向上に向けた検討が着実に進展している」と報告した。

  • 2026年度からの5カ年計画。増収増益の成長方針は変わらず

    2026年度からの5カ年計画。増収増益の成長方針は変わらず

一方、国内ビジネスを担当するキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)も、2026年度第3四半期累計連結業績を発表。売上高は前年同期比3.2%増の5076億円、営業利益は同22.8%増の469億円、経常利益は同20.7%増の476億円、当期純利益は同19.5%増の325億円となった。

キヤノンMJ 取締役 専務執行役員の蛭川初巳氏は、「第3四半期(2026年7月~9月)および第3四半期累計(2026年1月~9月)ともに、営業利益、経常利益、純利益が過去最高を更新した。キヤノン製品の価格改定前の駆け込み需要もあり、計画以上の進捗となっている。2026年度通期業績は、6期連続の増収増益を目指す」とした。

  • キヤノンMJ 取締役 専務執行役員の蛭川初巳氏

    キヤノンMJ 取締役 専務執行役員の蛭川初巳氏

2026年度(2026年1月~12月)の業績見通しは据え置き、売上高は前年比0.8%増の6850億円、営業利益は同8.3%増の630億円、経常利益は同1.4%増の640億円、当期純利益は同6.1%増の440億円とし、過去最高益の更新を目指す。

「第4四半期は減収減益の見通しとした。前年同期のPC入替需要の反動減が見込まれるほか、新たなビジネス創出に向けた研究開発投資や、ビジネスプロセス改革のためのIT投資や設備投資などを進める。また、企業認知度の向上に向けた広告宣伝費の増加を見込んでいる。さらに、メモリの供給逼迫や中東情勢などの外部環境を背景としたリスクが見込まれること、第3四半期に前倒し需要があったことが要因である」と述べた。だが、「日本の労働人口の減少が指摘されるなかでITを活用した生産性向上に対するニーズは高い。また、不正アクセスや個人情報漏洩に対するサイバーセキュリティ対策へのニーズが一層高まっている。こうしたニーズに積極的な提案を行うことで、ITソリャューション事業において、収益性を伴った売上げ拡大と、キヤノン製品事業の収益力強化に取り組む」との方針を示した。

  • キヤノンマーケティングジャパン 2026年度第3四半期(2026年7月~9月)の業績

    キヤノンマーケティングジャパン 2026年度第3四半期(2026年7月~9月)の業績

  • 第3四半期の営業利益の要因分析

    第3四半期の営業利益の要因分析

  • 第3四半期のセグメント別の業績

    第3四半期のセグメント別の業績

  • 2026年度通期(2026年1月~12月)の業績見通しは据え置き

    2026年度通期(2026年1月~12月)の業績見通しは据え置き

  • 2026年度通期のセグメント別の見通し

    2026年度通期のセグメント別の見通し

第3四半期累計のセグメント別業績は、「エンタープライズ」の売上高が前年同期比4.1%増の2053億円、セグメント利益が同19.8%増の168億円。、「キヤノン製品他」および「ITソリューション」が順調に推移した。「主要キヤノン製品については、オフィスにおけるペーパーレス化の影響で市場は縮小しているものの、オフィスMFPでは、複数の大型案件を獲得し、台数は大幅に増加した。また、オフィスMFPの保守サービスでは、本体稼働台数の増加、カラー出力比率が高まったことで売上げが増加。レーザープリンターは、大型案件があり、台数は大幅に増加した」という。

また、ITソリューションでは、Windows10の延長サポート終了に伴うビジネスPCの入替需要の反動減があったもの、文教向けのIT基盤大型案件の獲得や、金融向けBPO案件、製造業向けのSI案件が順調に推移した。

同セグメントに含まれるキヤノンITソリューションズは、売上高は前年同期比2%増の1175億円、営業利益は4%減の111億円となった。

「エリア」の売上高は、前年同期比0.4%減の1775億円、セグメント利益が同15.2%増の185億円。オフィスMFPでは、使用期間が長期化している顧客への入替提案や、業務効率向上に向けた提案活動を積極化したことで、販売台数が増加。レーザープリンターは、流通チャネル向けの出荷が進み、販売台数が増加した。ITソリューションは、ランサムウェア対策ソフトなどのセキュリティが好調に推移したことや、中小企業のサステナブル経営・DX推進をトータルで支援する「まかせてIT」の契約件数が増加したが、前年同期のWindows10の延長サポート終了に伴うビジネスPCの入替需要の反動減によって売上高は減少した。

連結子会社のキヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)の売上高は前年同期比1%減の852億円、営業利益は同5%増の81億円となった。

「コンスーマ」は、売上高が前年同期比4.2%増の1014億円、セグメント利益が同30.6%増の95億円。レンズ交換式カメラについては、2025年11月に発売した「EOS R6 MarkⅢ」や、2026年6月に発売した「EOS R6 V」などが好調に推移。だが、5月の価格改定前の駆け込み需要の反動が見られたという。

インクジェットプリンターは、市場の縮小により、売上高が減少。インクカートリッジも、プリントボリュームの減少により、売上高は減少した。また、ITプロダクトでは、前年同期にWindows10の延長サポート終了に伴う需要などにより、高性能PCやPC周辺機器の販売が好調に推移したことの反動があったものの、メモリの価格高騰への懸念から、ポータブルSSDやメモリーカードの駆け込み需要があり、販売が好調に推移したという。

「プロフェッショナル」の売上高は前年同期比4.1%増の363億円、セグメント利益は同11.1%増の40億円となった。産業機器とヘルスケアが増加しという。

また、2026年度第3四半期累計のグループITソリューションの売上高は前年同期比4%増の2640億円となった。そのうち、SI・ソリューションの売上高が前年同期比5%増の789億円、サービス・アウトソーシングの売上高が同7%増の795億円、ITプロダクト・システム構築の売上高が前年並の1057億円となった。また、グループITソリューションのセグメント別の売上高は、エンタープライズは前年同期比4%増の1594億円、エリアが前年同期比2%減の614億円、コンスーマが前年並の292億円、プロフェッショナルが同12%増の180億円となった。

  • 参考として、キヤノンマーケティングジャパンの2025年度のセグメント別売上構成

    参考として、キヤノンマーケティングジャパンの2025年度のセグメント別売上構成

なお、キヤノンMJでは、第3四半期のトピックスとして、経済産業省が推進する「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」対応サービスを拡充したほか、新しいコーポレートコミュニケーション企画をスタートし、企業認知度の向上を図っていることをあげた。「調査によると、キヤノンMJと取引があったり、知っていたりという顧客は、次回もキヤノンMJに相談したいという意向が高いことがわかった。社名を伝えるとともに、特徴のあるITソリューションを多くの人に伝えたい」とした。