• いまの学生はゲーム企業に何を求めているのか ── ゲーム業界の就活イベント「第4回キャリアクエスト」で聞いてみた

新卒の「内定辞退率」が、直近7年間で過去最高となっています。

マイナビキャリアリサーチLabの調査によると、2026年新卒の内定辞退率が5割を超えた企業は「41.5%」、2019年の「21.1%」と比べると約2倍に増加。

参考:内定(内々定)辞退率の動向-辞退の理由と企業の辞退対策- | マイナビキャリアリサーチLab

これは「就職氷河期」から一転、人手不足により「売り手市場」となった弊害といえるのでしょうか。

現在の学生は「選んでもらうための就活」をしておらず、複数社の内定を抱えながら、企業を「品定め」しているのかもしれません。

そんな中、ゲーム業界に特化した新卒向けの合同説明会イベント「第4回キャリアクエスト」(※)が2026年6月13日(土)に東京・浜松町の東京都立産業貿易センターで開催されました。

※ゲームメディア「Game*Spark」と「4Gamer.net」が主催するゲーム企業のみの合同説明会

今回は過去最大規模となる、以下の10社が出展。

  • アークシステムワークス株式会社
  • 株式会社アトラス
  • 株式会社コーエーテクモゲームス
  • コナミグループ
  • 株式会社サイバーエージェント
  • 株式会社シフォン
  • 株式会社セガ
  • 株式会社マーベラス
  • 株式会社ラセングル
  • 株式会社Aiming

ゲーム業界は学生の就職先として人気の業界ではあるものの、人手不足や内定辞退の問題とは向き合って行く必要があります。各ゲーム企業は合同説明会の段階で、どのように学生と向き合っているのでしょうか。

10社のブースを回り、各社の「学生へのアプローチ」をチェックしてみました。

全体の傾向として、大企業は「自社の紹介」ではなく「学生への情報提供」に注力

当然かもしれませんが、知名度のある企業の説明には「余裕」を感じました。

自社の紹介は最低限にとどめ、「ゲーム業界全体の説明」および「就活セミナー」のような、学生への情報提供を中心に内容に構成されている印象を受けました。

一方、中小企業の説明は、自社コンテンツの紹介、会社理念の説明、福利厚生や社内制度など、学生へのアピールが目立ち、是が非でも学生さんを獲得するという意気込みを感じました。

ただ、これはあくまで全体の傾向であり、各企業はそれぞれのアプローチで学生にアピールをしていたように思えます。

各社の内容をざっくりと紹介

ここで10社が実施していた説明会の傾向を、大まかにまとめてみましょう。

アークシステムワークス / よりマニアックに狭く深く

「説明」よりも「交流」を優先していた印象です。

社内アンケートを公開したり、社員による質疑応答にも時間が割かれており、社内での働き方をイメージしてもらう意識が高かったように思えます。

また全体的に「技術」を重視しているように感じました。

プレゼンの内容や企画自体も技術者向けの内容が多く、ゲームの企画や開発の細かい話が目立ちました。筆者が見たときは、格闘ゲームにおける「キャラクターの動きやフレームに関する話」が展開されており、マニアックな内容ながらも個人的には興味深かったです。

アトラス / フォーマルな説明会スタイル

10社の中で、最もフォーマルな説明会を実施していた印象です。

『真・女神転生』『ペルソナ』シリーズなど、お馴染みのタイトルから、日本ゲーム大賞2025年間大賞を受賞した『メタファー:リファンタジオ』など、自社IPを全面的に押し出しながら、組織体制、事業展開、求める人物像を提示していました。

派手な演出や個別対応の多さで惹きつけるのではなく「アトラスとはこういう会社である」を、繰り返し、訴求していたように思えます。

コーエーテクモゲームス / 自社を狭く深く知ってもらう

時間帯でコンテンツ内容を変化させている企業が多い中、同社は時間帯を問わず「会社紹介、質疑応答」の一本勝負。

その分、プレゼンテーションの情報密度が高い印象を受けました。

新規IPをシリーズ化し、コラボで広げ、IPを他社に貸し出すという循環型のビジネスモデルを図解で解説しつつ、創業以来ずっと黒字という財務安定性もあわせてアピール。海外展開についても言及があり、新卒からいきなり海外勤務というのは難しいものの、本人の希望があれば中長期的にチャレンジできる点を伝えていました。

コナミグループ / 「自社」ではなく「業界全体」を教える

他社の多くが「会社説明」を軸に、自社の強みやカルチャーを伝えることに時間を割いていましたが、同社のプレゼンはそれと対照的でした。

エンジニア職、企画職、デザイナー職、ビジネス職と、セッションごとに対象職種を変えながら、ほぼ全職種を1日かけて解説するという、大手企業だからこそできる立ち回り。中には「就活」自体のアドバイスをするコンテンツもありました。

自社のことを知ってもらおうとするのではなく「ゲーム業界にはどんな職種があるのか」といった、就活生の職業選択をサポートするという、余裕のあるプレゼンに感じられました。

サイバーエージェント / 若手の活躍をアピール

同社はグループの規模で多くのゲーム開発会社を抱えているので、学生からすると、グループ全体の話を聞く機会として有意義だったように思えます。

説明会において、特徴的だったのは「社員への質問コーナー」に注力していたこと。解像度の高い情報提供や「社員&学生間の交流」を重視していたように思えます。

「若手社員が活躍している事例」を紹介することで、学生に対して、入社後の就労イメージを持ってもらうという意図があったのでしょう。

シフォン / 現場と現実にフォーカス

セミナー形式ではなく、学生との「質疑応答」を重視していました。

ゲーム運営の会社という背景もあるからか、他社のブースよりも「技術」の部分に注目していたように思えます。「メンテナンスって誰がやってるの?」といった、ゲーム業界の実務の細かい話に比重が置かれていました。

技術だけでなく、「女性が働いた場合の実体験」など、とにかくリアリティを意識。ワークライフバランスや「泥臭いが地に足ついた話」が多く、夢やビジョンを語るだけでなく、現実に沿った話で学生の共感を得ていたように思えます。

セガ / 「作り手の哲学」で惹きつける

会社説明だけでなく、ゲームクリエイター向けのセミナーも展開していました。

同社のタイトルを例に挙げて、ゲーム作りにおける具体的なプロセスを解説するという、これからゲームクリエイターを目指す学生全員に向けた内容でした。モノづくりの哲学にまで踏み込んでいたのが印象的です。

「感動体験を与えるには、作り手自身が感動を得なければならない」というメッセージに、目を輝かせる学生の姿もありました。

マーベラス / 社風と福利厚生をベースに理念を伝える

全面的に打ち出されていたのは、社風と福利厚生です。

コアタイム10:30~15:30のフレックスタイム制や、上下関係の少ないフラットな社風であること、福利厚生など「楽しく働ける会社」というイメージを伝えていました。

説明会の構成は職種別に「職種説明」「質疑応答」「相談コーナー」を繰り返し、採用理念に掲げる「プロを楽しもう。」を誠実に伝え続けている印象でした。

ラセングル / ソニーグループの基盤を全面展開

同社が打ち出したのは「圧倒的な安定基盤×熱狂のベンチャー気質」というキャッチフレーズです。

『Fate/Grand Order(FGO)』の開発・運営で知られるソニーグループの一員として、安定した経営基盤と若手が主体的に挑戦できる環境を同時にアピールしていました。

「会社説明会」と「質問&相談会」をそれぞれ複数回用意し、会社のことを知ってもらいつつ、入社後のキャリアイメージを描いてもらえるような、知る場と話す場を交互に組み込んだバランスの取れた構成になっていました。

Aiming / まず知ってもらうところから始める

「世界中にAimingのファンを」というビジョンのもと、オンラインゲームに特化してきた自社の歩みを丁寧に紹介。終日「会社説明会」と「職種紹介」のみで構成されており、派手な仕掛けや特別企画はなく、シンプルに会社を知ってもらうことに徹していました。

インターンシップ制度の案内も行いながら、まずは「Aimingという会社がある」ということを伝えるところから始める、謙虚で誠実なアプローチに感じられました。

他社が職種別の細かいセッションや相談会を重ねる中、あえてシンプルな構成を貫いたことで、「これから知ってもらえばいい」という長期的な視点が伺えました。

企業のプレゼンは学生に刺さったのか?「説明会」を終えた学生さんに聞いてみた

「企業側のプレゼンは学生に刺さったのか」

合同説明会を終えた直後の学生さんに、話を聞いてみました。

「今回、どんな情報を得るために来たのか」を聞いてみたところ、多くの学生さんが口にしていたのは「対面でしか得られない情報を得るために参加した」でした。ネットに載っている情報は事前に調査済みで、合説ではそれ以外の情報を得ようとしていたようです。

また「どんな会社なのか」より「どんな人が働いているのか」を知りたがっている様子でした。そのため、一方通行な会社説明よりも、質疑応答や相談会のような双方向性のある情報のほうが、学生の印象に強く残っているようです。

総じて、説明会にしても相談会にしても「何を喋っているか」は重要ではなく「どんな人が喋っているか」が重要視されているように感じられました。もはや、企業という「箱」で探しているのではなく「推し社員」を探しているのかもしれません。

今回の説明会においても、福利厚生や社内の制度など、「働きやすさ」を熱心に説明する企業はありましたが、意外にもそういった情報は、学生に響いていたわけではなかったようです。これは現在の学生が「働きやすさ」を軽視しているわけではなく、「働きやすさ」というものが、会社の「制度」ではなく、一緒に働く「人間」そのものに起因すると察しているからなのかもしれません。

そのほか、「若手にチャンスがある」「成長しやすい環境である」をアピールする企業がありましたが、これらの要素について「刺さった」と言及した学生はいませんでした。

どちらかというと、「企業のAIに対するスタンス」や「AIが労働市場に与える影響」を気にしている学生が増えているのが印象的で、「社内でAIをどのように活用しているか」「AIで新卒採用を控えているかどうか」を気にしている様子でした。

以上のように、企業側が「学生に刺さる」と想定して用意した情報は、必ずしも学生の求めていたものと限らなかったようです。

内定辞退率が上がり、学生が複数の内定を獲得することが当たり前になった昨今、複数の内定を手にした学生が「1社に決めるとき」に頭に浮かべるのは、会社の知名度や制度、給与ではなく、合同説明会で出会った「推し社員の顔」なのかもしれません。