こんにちは。ゲームライターの小川です。
先月末は日本最大級のデジタルゲームとアナログゲームの祭典が同タイミングに開催され「ゲーム業界」がざわつく月末となりました。
関西では最大級のインディゲームの祭典「BitSummit」(5/22~5/24)、関東では最大級のアナログゲームの祭典「ゲームマーケット2026春」(5/23~5/24)が開催されました。
文・取材=松永華佳、小川翔太
本音をいうと、両イベントともに取材したかったのですが、体は1つしかないということで、今回は「ゲームマーケット2026春」に参戦しました。
コロナ禍以降、マーダーミステリーや脱出ゲーム、謎解き、各種ボードゲームなど、アナログゲームは凄まじいブームを経て、やがては文化となったように思えます。
事実、今回のゲームマーケットも過去最高の来場者数「32,000人」を記録することになりました。
ただ「アナログゲーム」といっても幅広く、正直、筆者もトレーディングカードゲームや対戦型のボードゲームに覚えはあるものの、全ジャンルに詳しいわけではありません。
そこで今回は、その知識不足を補うための追加戦力として、プライベートでマダミスや謎解きを遊び、体験型脱出ゲーム&イベントのオタクであるアシスタントを連れてきました。
ということでアナログゲームの最前線に迫ります。
前回の「ゲームマーケット2025秋」と同様に、会場はホール1からホール4までというなかなかの規模感。私たちもクタクタになるまで遊んできたので、まずは「おお!」となったアナログゲームを紹介します。
お酒を飲ませるボドゲではなく、お酒と楽しむボドゲ
「お酒とボドゲ」と聞くと、ひと昔前の感覚では、勝負に負けた人が罰ゲームとしてお酒を飲まされるのを想像するかもしれません。
しかし「LIQUOR GAMERS CLUB」が提供するゲームはそうではありません。
飲ませるボドゲではなく、お酒と楽しむボドゲです。
洋酒とボドゲを掛け合わせることで、その場にいる人たちの会話を深め、知らなかった相手の一面を引き出す体験を届けることを目指しています。
今回の「ゲームマーケット2026春」では、新作として「SHAKER TALK」という、特注のシェイカーが入ったゲームを体験してみました。
シェイカーを使って、サイコロを振り、トークテーマを決めて、親が話すエピソードが「嘘」か「本当」かを見破るコミュニケーションゲームです。
シェイカーやオリジナルデザインのサイコロはゼロから制作した特注品です。
ここで「LIQUOR GAMERS CLUB(以下、LGC)」について説明しておきましょう。
洋酒とボードゲームの両方を愛する人たちが集まって生まれたコミュニティであり、謎解きクリエイターの松丸亮吾さんやモデル&女優の貴島明日香さん、有名ボドゲカフェ「JELLY JELLY CAFE」オーナーの白坂翔さんが在籍しています。
「グラス片手にボードゲームを」というキャッチコピーの下、お酒の場をより豊かにするゲームを制作、販売しているコミュニティです。
「飲ませることを目的にしない」
それがLGCシリーズのスタンスです。過剰飲酒や強要を明確に禁止し、未成年飲酒への注意喚起はすべてのパッケージに記載しています。
「お酒によって会話が弾み、知らなかった相手の一面が見える体験を届けたい」というコンセプトが、ゲームデザインの隅々にまで反映されていました。
サントリーが協賛として立ち上げ当初から関わっているのもポイントです。
ただ、協賛を受けているとはいえ、「サントリーのお酒を売っていこう」といった過剰にアピールしてくるコンセプトではありません。
「ウイスキーやカクテルといった洋酒を、ビールやレモンサワーのように気軽に楽しんで欲しい」
そんな想いがサントリーとの協力関係の根底にあるようです。
開場から1時間で完売の2025年の最優秀ボドゲ
「ゲームマーケット2026春」の主催である、アークライトのブースにも注目のボドゲを発見しました。
「アークライト・ゲーム賞2025」で最優秀賞を受賞した『オバケパレード』です。
一般販売に先駆けて、先行販売された本作ですが、なんと、開場から約1時間で完売したとのこと。
『オバケパレード』のルールは至ってシンプルで、小さなお子さんでも楽しめるゲームデザインです。
大手企業のボドゲには、社内で開発されるパターンと、個人制作のボドゲが企業に見入られて、リニューアル&メジャーデビューするというパターンがあります。
『オバケパレード』は後者です。
原作者・イブインクさんの作品をアークライトがリニューアルしました。
毎年、アークライトのスタッフがゲームマーケットに出展された、ほぼ全てのインディゲームをチェックして選定しているとのこと。
主な選定基準は「普遍的なメカニズムがあること」「時流に合った新しい要素があること」「ポジティブな余白があること」の3点で、『オバケパレード』はすべての条件を満たしていたので、ローカライズに至ったそうです。
コンポーネントへのこだわりも『オバケパレード』の魅力のひとつです。
木駒は素材の質感を活かした印刷を採用しており、手に取った瞬間の温かみを大切にしているのだとか。
80枚あるおばけのカードすべてが表情やポーズが異なるユニークなデザインで、眺めているだけでも楽しめる仕上がりです。
世界最高峰の賞を受賞した革新的システムのカードゲーム
見たこともないルールのカードゲームを見つけました。
1人で2体のキャラクターを使って戦う、最新カードゲーム『タッグチーム』です。
カナダのLe Scorpion Masqué社が開発した本作は、世界的な評価も高く、ボードゲームの権威ある賞として知られるドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)の2026年度版で、年間エキスパート大賞の推薦リストに選出されています。
ドイツの大規模ボードゲームイベントでも大々的に展示されるなど、ボードゲームファンの間では注目の一作です。
今回の「ゲームマーケット2026春」で日本のボードゲーム専門店「すごろくや」によって日本語版にローカライズされて日本初上陸となりました。
筆者はいろんなカードゲームを遊んできましたが、こんなルールは見たことありません。
大体のカードゲームは、MTGっぽいとか、デュエマっぽいとかあるのですが、このカードゲームには「○○っぽい」がないんです。
なんというか、デッキから引いたカードで(対戦中に)「さらにデッキを作る」という感覚です。
毎ターン3枚カードを引いて、そのうち1枚を使ってデッキに追加していきます
しかも、デッキの好きな位置に「カードを差し込める」、つまりデッキの順番を好きなようにカスタマイズできるというもの。
ターンの進行も斬新すぎて、お互いに攻守が交代するのではなく、「デッキ構築フェイズ」と「バトルフェイズ」が同時に進行します。
自分が設定したカードの順番通りに、ワザが繰り出されて、攻撃したり防御したりします。 格闘ゲームでいうところのコンボっぽい連携でもあり、相手のカードの順番を覚えていたら、気持ちよく防御したりもできます。
遊んでいて「これは日本人の発想では絶対思いつかないな…」と思って、ちょっと悔しくなりました。あまりにも斬新なシステムです。
ネタ枠かと思いきや、結構ガチなトーク系ボドゲだった
映画『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』の名台詞として知られ、今やネットミームとしても広く浸透している「このペンを売ってみろ」というフレーズ。
それをそのままゲームにしたのが、よつばさぼてんの『このペンを私に10,000円で売ってください。』です。
ルールは非常にシンプルです。面接官役のプレイヤーがテーブルに何か1つ置き、「このペンを私に10,000円で売ってください」と宣言。
ほかのプレイヤーはカンペカードを使って、その商品がなぜ1万円なのかをプレゼンします。面接官が「買いたい」と判断すれば内定、そうでなければお祈りメール。先にカードを3枚獲得したプレイヤーの勝ちです。
カンペカードには「合法」「愛されて50年」「卵を産む」「持つと家族が次々に失踪する」など、「プレゼンを助けるような助けないような言葉」が並びます。このカードの存在がゲームのポイントです。
実際に会場でデモプレイを見せてもらいましたが、「Amazonレビュー3.2のハエたたき」を1万円で売ろうとするプレゼンは、思わず笑いながらもうっかり買いそうになるほどの説得力がありました。
まさかの株ポケブースが出展、そしてプラコロ復刻
なんと、会場には株式会社ポケモンのブース「ポケモン ボドゲくらぶ」がありました。
株ポケが「ゲームマーケット」にブースを出すのは、前回の「ゲームマーケット2025秋」に続いて2回目とのこと。
おい、プラコロ!プラコロじゃないか!
1997年発売のゲームが約30年ぶりに復活しました。
2026年7月に発売予定のゲームですが、今回のブースでは先行体験できました。
生まれ変わった「プラコロ」で遊んでみます。
4つのワザから1つを選んで、サイコロを振るというルールは1997年当時のままですが、ワザの威力や追加効果がよりド派手になっている印象です。
どうやらタイパ世代に向けて、ゲームテンポがアップしている模様。
こちらは2026年7月30日に発売される、新感覚ボードゲーム「ポケモンシュシュシュ!」。
モンスターボール型のカードを手裏剣のように投げて、場のポケモンをゲットします。
プレイマットとカードさえあれば、公園などで遊べるので、お花見や紅葉の時期など行楽シーズンにぴったりです。
2025年12月18日に発売された4人用ボードゲーム「ポケモンごいた」も体験できました。
モチーフとなっている「ごいた」は江戸時代末期に石川県で生まれた伝統的な娯楽です。 古風なイメージを出すためにか、カント―地方のポケモンで統一されているのがこだわりを感じました。
ゲームマーケットに来ると世の中のトレンドがわかる
今回、感じたのは「アナログゲームにはトレンドが反映されている」ということです。
若者の「タイパ」思考に順応した時短型のゲームだけなく、「アルコール離れ」といった世の中の消費傾向を意識したゲームがありました。また、「このペンを売ってみろ」など特定界隈に刺さりそうなミームをモチーフとしたゲームの存在もあります。
ゲームマーケットはただ単にアナログゲームと出会うだけの場所ではなく、世の中のトレンドや傾向を再確認できる場所なのかもしれません。
























