ポルトガル天体物理・宇宙科学研究所は現地時間10月14日、すばる望遠鏡(国立天文台)を含む大型望遠鏡を用いた観測により、岩石惑星を持つ恒星の元素組成を精密に測定した結果、中心星の組成と岩石惑星の組成に相関があることを示したことを発表した。

同成果は、ポルトガル天体物理・宇宙科学研究所/ポルトガル・ポルト大学のVARDAN ADIBEKYAN博士らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米科学誌「Science」に掲載された。

太陽と岩石惑星は、同じ原始惑星系円盤からできているため、その組成はどの惑星系でも基本的には似た組成になると考えられている。少なくとも太陽系、地球の岩石を構成するマグネシウムやケイ素、鉄などの元素組成は、太陽とよく似ていることがわかっている(水星は例外的に鉄の組成が高い)。

研究チームは今回、これまで発見された太陽系外惑星の中で、最も正確に特徴が調べられ、質量と半径の測定から密度が求められている21の岩石惑星を研究対象として、すばる望遠鏡を含む大型望遠鏡で観測し、元素組成の精密な測定を実施。その結果、岩石惑星の組成と中心星の組成に相関があることを確認したという。

ただし、その相関は単純ではなく、中心星の組成の違いに対し、岩石惑星に含まれる鉄の割合は天体によって大きな幅があることも確認されたという。具体的には、これらの惑星では中心星の組成、つまり惑星の材料となった原始惑星系円盤の組成から予想されるよりも、鉄の含有量が高いことが示されたとしているほか、この高い鉄の組成は、原始惑星系円盤における化学プロセスと惑星形成プロセスに起因するものと考えられるとしている。

なお、今回の研究から、鉄の含有率の高い星の周囲の惑星たちの間には、鉄の含有率にギャップがあることが見出され、原始惑星の衝突合体による惑星形成のシミュレーションでは、最も高い密度を持つ惑星を説明できないことから、これらの惑星とほかの惑星の間には形成過程に違いがあることが考えられるとしており、今後、この理解を進めることが、太陽系の水星が同様に高い密度を持つ理由を解明することにもつながると研究チームでは説明している。

  • すばる望遠鏡

    今回測定された原始惑星系円盤(中心星)の鉄組成と、その周囲の岩石惑星の鉄組成。太陽の値と地球の値はほぼ同じだ。組成の相関が見られるが、惑星の鉄組成の方が大きな幅を示す。円盤の鉄組成が高い場合には、非常に高い鉄組成を持つ高密度の岩石惑星がある。その組成は太陽系の水星と似ている (C)Adibekyan et al., 2021/Instituto de Astrofísica e Ciências do Espaço (出所:すばる望遠鏡Webサイト)