あの「実物大の動くガンダム」が11月30日、ついに報道陣に公開された。このガンダム「RX-78F00」は、アニメ『機動戦士ガンダム』の40周年プロジェクトとして、横浜・山下埠頭の「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」にて建造が進められてきたもの。一足先に施設を楽しんできたので、現地の様子をレポートしよう。

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    じつは山下公園からもRX-78F00は見える。この時点で興奮度は急上昇

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    完全に仕事を忘れて楽しんでいるおっさんの図。結局1日中いました

これが「実物大の動くガンダム」だ!

最初に1つ断っておきたいが、このRX-78F00は、以前の記事でも紹介したように、2足歩行ではないし、そもそも自分の脚で立ってもいない。「『大地に立つ』じゃないの?」とガッカリする人もいるかもしれないが、現在の技術では、そんなことができるモーターや減速機が無いのだから仕方が無い。安全のため、と割り切るしかないだろう。

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    横に回ると、足下がよく見える。宙に浮いているのが分かるだろうか

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    しかしそう言われなければ、動きはじつに自然だ。本当に歩いているよう

動いても転倒しないよう、RX-78F00は腰の後ろの支持フレームで「GUNDAM-CARRIER」に固定、このGUNDAM-CARRIERにより、上下・前後移動する仕組みだ。RX-78F00の自由度は、全部で36(本体が22、ハンドが12、GUNDAM-CARRIERが2)。身長18m、重量25tの巨大ロボットながら、表現力は高い。

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    横から見ると分かりやすい。腰の後ろにあるのが支持フレームだ

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    指の1本1本までしっかり動く。手首にはヨー軸もある

この大きさからするとちょっと意外だが、アクチュエータはすべて電動で、油圧は使われていない。基本的に、関節にはモーターが使われており、腰ピッチ軸や、太ももピッチ軸など、トルクが大きい関節はシリンダーになっている。正面からは見えないが、重機ファンには萌えポイントだ。

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    支持フレームの上に、少しだけ電動シリンダーが見える

GUNDAM FACTORY YOKOHAMAの営業時には、毎時00分と30分に、RX-78F00の演出が行われる予定だ。この日の演出は6回だけ実施。通常とは一部異なる特別仕様とのことで、実際にどんな演出になるかは分からないが、それは当日までのお楽しみにしておこう。

まるでCGのようにしか見えないが、これは現実だ。ガンダムが動いている!

アニメを見ていた人からすると、「動きが遅い!」と思うかもしれない。だが筆者は初めてこれを見て、「思ったより速い!」とむしろ驚いた。基本的にロボットは、小さいほど動きが速く、大きくなると遅くなる。これは、サイズが10倍になると、重さは3乗で1,000倍になってしまうためだ。巨大化の難しさは、ほぼこれに由来すると言って良い。

筆者の頭の中には、「18mなんて大きさなのだから、このくらいの速度だろう」というイメージがあったのだが、特に最初、大きく左足を踏み出す動きなどは素晴らしいと感じた。RX-78F00は、腕や脚の外装はCFRPで軽量化、さらに内部フレームは腕や脚の先端ほど細くすることで、このような動きを実現しているのだ。

2足歩行に拘っていたら、こんな動きはとても不可能だっただろう。腰で支持する方式にしたことで、足裏の重心位置など気にする必要がなくなり、より自由な演出が可能になったと、前向きに捉えることもできる。筆者などは毎回見るたびに感動し、鳥肌が立ってしまった。

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    今にも発進しそうなRX-78F00のポーズ。自立ならこんな姿勢は不可能だ

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    一瞬しか見ることができない緑目のガンダム。シャッターチャンスだ

ところで1つアドバイスなのだが、見に行った人は、1回目はまず、カメラやスマホ越しではなく、ぜひ肉眼で見て欲しい。画面の中に入った時点で、このスケール感は失われてしまう。せっかく生で見られるのに、それはもったいない。撮影は2回目以降にして、最初はまず自分の目で、巨大ロボットの存在感を味わって欲しい。

夕方のガンダムもまた趣があって良い。ぜひ昼間、夕方、夜のすべてを見て欲しい

タワーはオプションというかほぼ必須

RX-78F00は下から眺めるだけでも楽しいのだが、せっかくGUNDAM FACTORY YOKOHAMAに行ったのなら、ぜひオススメしたいのが特別観覧デッキ「GUNDAM-DOCK TOWER」だ。別料金にはなるものの、それだけの価値はある。

GUNDAM-DOCK TOWERでは、5Fと6Fから、RX-78F00を間近に見ることができる。5Fではコックピット付近、6Fでは頭部付近からの眺めが楽しめるのだが、今回、プレスには6Fのみ公開された。

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    一番右がGUNDAM-DOCK TOWER。上が6Fで下が5Fのフロアになる

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    1Fにエレベーターの入り口があるので、ここから上に行ける

6Fからの眺めは、まさに“ガンダム目線”。高所恐怖症の人にはやや厳しいかもしれないが、ガンダムに乗った気分で横浜の景色を一望できる。ちょうど、ガンダムの後ろにはランドマークタワーが見えるので、時間帯によって、様々な表情を見せてくれそうだ。

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    6Fに到着すると、なんとRX-78F00が目の前に! 近い!!

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    6Fからだと、腰の電動シリンダーもよく見えるのでオススメ

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    一番先まで進むと、このアングルに。夜景も良さそうだ

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    ちゃんとコックピットまで整備用デッキが繋がっている

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    正面を向くと、併設の施設「GUNDAM-LAB」を一望できる

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    ちなみに6Fは、エレベーター的には3Fのようだ

ただ、GUNDAM-DOCK TOWERは人数の制約があるため、特に週末などは、チケットの入手がやや大変かもしれない。12月分は、発売と同時にすぐ完売になってしまったので、次回以降、粘り強く挑戦して欲しい。

ACADEMYでRX-78F00を詳しく知ろう

ここまで、RX-78F00が設置されている「GUNDAM-DOCK」側の様子をお伝えしたが、次は、併設の「GUNDAM-LAB」について紹介したい。GUNDAM-LABには、複数の施設があるのだが、まず最初に行きたいのが展示施設「ACADEMY」である。

ここでは、RX-78F00について、様々な情報を知ることができる。動くガンダムは、どんな仕組みで動いているのか。実現するために、どんな工夫が必要だったのか。どんな企業が開発に関わっているのか。まるで開発者の肉声が聞こえるような、生の情報が満載だ。“ボツ案”の紹介コーナーまであるのは面白い。

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    ACADEMYの内部は、5つのエリアで構成。楽しみながらRX-78F00を学べる

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    なんと、世界初の2足歩行ロボット「WABOT-1」の実物展示もある

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    指のハンズオン展示。リンク機構で各関節が連動して動く様子が分かる

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    外装とフレームのハンズオン展示。フレームの形状にも注目しよう

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    企画展示のコーナーも。展示内容が変わるので、ぜひ3回とも来たいところ

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    1回目は外装がテーマ。デザインの変更点や工夫が分かって興味深い

RX-78F00を自由に動かすことができるシミュレータも楽しい。このシミュレータ、かなりリアルにできているのだが、それもそのはず、RX-78F00のモーションを担当している吉崎航氏が自ら開発。RX-78F00の制御に使われている「V-Sido」システムで動いているという。ガチで“本物”というわけだ。

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    シミュレータは初心者コースと上級者コースがある。タッチパネルで操作

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    ポーズを作ってみた。結構カッコよくできたと思うのだがどうだろう

壁一面に広がる「ARウインドウ」は大迫力。RX-78F00のリアルタイム映像が投影されているのだが、RX-78F00の演出時には、ここにモーターのトルクや角度などの稼働情報がポップアップ表示されるという。演出時にはどうしても本物を見に行ってしまうが、一度はこのARウインドウでも見てみたい。

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    写真では分かりにくいが、「ARウインドウ」は壁全体に表示されている

またソフトバンクは、VRドーム「GUNDAM Pilot View of SoftBank 5G EXPERIENCE」を出展する。このドームには、RX-78F00に設置したカメラからの映像が表示され、まるでパイロットとして搭乗したかのような感覚を楽しむことができる。RX-78F00からドームへの映像伝送に、高速大容量の5G通信が活用されている。

注目したいのは、RX-78F00の演出時も、このVRドームは稼働しているということ。ちょうど演出時のタイミングでVRドームを使えば、RX-78F00を動かしているような感覚が味わえそうだ。混んでいると難しいだろうが、狙ってみて欲しい。

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    「GUNDAM Pilot View of SoftBank 5G EXPERIENCE」は、搭乗シーンから開始

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    ドーム映像なので没入感が高い。映像はフットセンサーで左右に動かせる

カフェとショップもガンダム一色

GUNDAM-LABの2Fにある「GUNDAM Cafe YOKOHAMA Satellite」では、会場限定のオリジナルメニューなどを楽しむことができる。ここでの注目ポイントは、窓際の席からだと、RX-78F00がよく見えることだ。

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    「GUNDAM Cafe YOKOHAMA Satellite」。店内は落ち着いた雰囲気だ

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    外が白飛びしてしまっているが、RX-78F00が見える席がオススメ

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    キッズ弁当も用意されている。海苔がガンダムの形になっている

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    クリアボトル付きのドリンク。横浜のオリジナルデザインになる

筆者は旅先などで、ガンプラが飾ってあるバーやカフェを見かけるとつい立ち寄ってしまうのだが、ガンプラを眺めながらの食事やお酒は非常に楽しい。しかも、GUNDAM Cafe YOKOHAMA Satelliteでは、見るのはガンプラではなく実物大のガンダムだ。これが楽しくないわけがないので、ぜひガンダム側の席を確保したいところだ。

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    この日はカフェ・ラテの試飲ができた。ラテアート付きだ

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    ガンダムを眺めながら休憩できるなんて、最高ですな……

ところで「ガンダム側」で思い出したのだが、筆者は以前、静岡にガンダム立像が登場したとき、新幹線の指定席を「富士山側で」のノリで「ガンダム側で」で確保できるのか、という社会実験をしたことがある。東京駅の窓口では「は?」の一言で撃沈したが、静岡駅ではちゃんと通じたのは報告しておきたい。

そして1Fの「THE GUNDAM Base YOKOHAMA Satellite」では、買い物を楽しむことができる。オリジナルガンプラや各種グッズなど、会場限定の商品も多数用意されているので、散財は必至だ。札束を握りしめて突撃して欲しい。

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    「THE GUNDAM Base YOKOHAMA Satellite」。この日は残念ながら販売は無し

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    1/48スケールのRX-78F00バストモデル。LEDで目まで光るらしい

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    お土産といえば恒例の「行ってきました」系のお菓子も用意されている

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    Tシャツやタオルなどもイベントの恒例グッズ。筆者もよく購入する

3名のディレクターが語る見どころは?

今回の報道公開では、プロジェクト関係者による会見も行われた。まず冒頭、Evolving Gの佐々木新・代表取締役社長は、「2014年にガンダム GLOBAL CHALLENGE(GGC)としてスタートしたプロジェクトが、ついに新たな、そして大きな一歩を踏み出すことになった。お台場のガンダム立像から約10年。本日、ガンダムが動く」と宣言。

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    Evolving Gの佐々木新・代表取締役社長

佐々木社長は、「様々な分野のプロフェッショナルが集結し、日本の技術を集めて開発したガンダムの動きに注目して欲しい」と続け、「世界的なコロナ禍の中、このGUNDAM FACTORY YOKOHAMAのオープンにより、少しでも皆さんを元気づけ、エンターテインメント業界の発展に貢献したい」と期待した。

技術全般を取りまとめた石井啓範テクニカルディレクターは、「10年前のガンダム立像は、迫力とリアルさに圧倒された。今回参加したとき、そのとき感じたリアルさを一歩でも前に進めることを目標にしてきた。皆さんには、動くガンダムをなるべく近くから見てもらい、18mのガンダムが動くリアルさや迫力を感じて欲しい」とコメント。

RX-78F00の「動き」を担当した吉崎航システムディレクターは、「今回のガンダムは、動きが非常に重要な要素。いかにこの18mの巨体を滑らかに動かすかということに、非常に注力した。その動きを間近で見ることができるのは、GUNDAM-DOCK TOWERの5Fと6F。ぜひここから、一番近くからガンダムの動きを見て欲しい」とコメント。

デザインと演出を担当した川原正毅クリエイティブディレクターは、「10年前のガンダム立像を担当したとき、多くの人から『いずれ動かして欲しい』と言われた。10年分の宿題をやっと叶えられたかなと思う。向かって右側から見ると、TOWERとRX-78F00の関係性が分かるし、驚きの演出もあるのでぜひそのアングルも楽しんで欲しい」とコメント。

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    RX-78F00を作った3名のGGCディレクター。左から、吉崎航システムディレクター、石井啓範テクニカルディレクター、川原正毅クリエイティブディレクター

GUNDAM FACTORY YOKOHAMAのオープン期間は、2020年12月19日(土)~2022年3月31日(木)。入場料金は、大人(13歳以上)が1,650円、小人(7歳~12歳)が1,100円で、GUNDAM-DOCK TOWERの観覧には別途3,300円が必要だ。

動く実物大ガンダム写真集

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