ボーイングがこのほど、旅客機分野に関する最新の市場予測(CMO : Commercial Market Outlook)について、報道向けの説明会を開催した。その資料を基に、当節の旅客機ビジネスというものについてあれこれ考えてみたい。

経済成長は航空輸送需要の増加につながる

ボーイングはこうした市場予測を定期的に公表しているが、回ごとに傾向がガラリと変わることは考えにくい。近年の基本的な傾向としては、「LCC向けに単通路機の需要が大きくなっている」「FSC向けの長距離路線はワイドボディ機が主役」「リージョナル機の市場規模は比較的小さい」といったところになるだろうか。

そして、その民間輸送機の需要を下支えしているのが地域経済の伸びであることは論を待たない。経済成長は人の往来の増加につながり、地域内、あるいは他の地域との人の往来を増やす。

また、経済成長が所得の伸びにつながれば、これもまた人の往来を増やす方向に働く。結果として航空輸送の需要が伸びて、そこで使われる民間輸送機の需要を増やすという流れである。

ただ、最近のLCCの急成長は、これまで費用を理由にして旅行を躊躇していた層に対する需要喚起につながっているかも知れない。もちろん、「安い」というだけではなくて、「行きたいと思っていたところに安く行けるのなら……」という話ではあろうが。

  • 経済成長による中間所得者層の増加は、航空輸送需要の増加につながる 資料 : Boeing

上の図で意外に感じたのは、所得者層の分布において中国が世界平均を下回っていることだが、なにしろ分母が大きい。高所得者層が増えている一方で、そうでない層も多いということであろう。

定着した「直行便志向」

個人的に興味を引いたのは、「直行便志向の定着」とでもいえそうな流れだった。いわゆる「ハブ&スポーク」方式よりも、地点間を直航する傾向にあるという話である。これは、機体の経済性向上とオペレーションの効率化を求める方向に働く要素と考えられる。

  • 成田、仁川、台北、羽田のいずれも、就航先が増加している。一方で、1便当たりの平均座席数は減っている。つまり、機材を小さくして多方面に飛ばす傾向が強まっているということになる 資料 : Boeing

ただし、上の図にある「就航先の増加と機材の小型化」には、LCCの増加が影響している部分もあるはずだ。

民間輸送機の経済性に関する指標といえばシート当たりの運航経費だが、定員が半分になったからといって運航経費が半分になるとは限らない。

むしろ大型機のほうが、シート当たりの運航経費を抑えるには有利であろう。すると、幹線区間に大型機を投入してまとめて運ぶ、「ハブ&スポーク」方式のほうが有利だが、肝心の旅客が直行便志向では逆らえない。そして、経済性の高い機体が求められると、ボーイング787のような最新世代の中型機は強い。

私事だが、筆者も乗り継ぎリスクが抑えられる直行便の方が好みである。ディレイが原因でヒヤヒヤしたり、経由地の空港でスタッフに先導されて走ったり、といった経験をすると、直行便志向が強まるかも?

  • ボーイング787-10 写真 : Boeing