ICT総研は7月1日、2019年度のモバイルキャッシュレス決済の市場動向に関する調査結果をまとめた。これによると、2019年度はQRコード決済の普及や消費税増税に伴い、国が10月から2020年6月まで実施する「キャッシュレス・消費者還元事業」の影響で1兆8000億円に成長し、2020年度には2兆9000億円に急拡大すると予測している。

同調査は決済サービス運営会社・関連企業への取材結果に加え、インターネットユーザー約4000人へのwebアンケート調査(6月11日~17日)、各種公開資料などをまとめて分析したものとなる。

2018年の家計最終消費支出は約292兆円だったが、うちクレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済は70兆円規模に達しており、キャッシュレス決済比率は24%程度と推定されている。同社では、今後成長が見込まれるスマホなどを利用したモバイルキャッシュレス決済の分野に着目し、その市場規模を予測。

推計結果では、2018年度の「モバイルアプリのキャッシュレス決済額」は約1兆1000億円となり、2019年度はQRコード決済の普及や消費税増税に伴い国が10月から翌年6月まで実施する「キャッシュレス・消費者還元事業」の影響で1兆8000億円に成長、2020年度には2兆9000円に急拡大すると予測した。

  • モバイルキャッシュレス決済額予測

    モバイルキャッシュレス決済額予測

電子マネー決済額はカード・タイプの決済を含めると2018年に約6兆円市場に成長しており、モバイル電子マネーはこのうちの9000億円だが、2019年度に1兆1000億円、2020年度に1兆4000億円に拡大する見通し。QRコードによる決済額は2019年度に7000億円、2020年度には1兆5000円に拡大するという。

アンケート調査では1000円~3000円の小額決済の場合、71.6%の人が現金を利用すると回答し、クレジットカードを利用すると回答した人は43.8%、カード型の電子マネーを利用すると回答した人は18.7%となり、スマホアプリの電子マネー利用者は10.5%、スマホのQRコード決済利用者は9.4%となった。

1万円~3万円の比較的高額な買い物をする場合は、現金の利用率は43.8%に下がり、クレジットカードの利用者が68.0%へと上昇し、スマホアプリの電子マネー利用者は4.6%、スマホのQRコード決済利用者も4.6%となる。高額な買い物をする場合は、クレジットカードを利用する人が増え、モバイルキャッシュレス決済を利用する人が減少する傾向が見られたという。

高額決済をする場合に従来型のサービスであるクレジットカードの信頼性が高く、新サービスであるスマホのキャッシュレス決済は発展途上と言え、2019年1月に調査した時と比べると現金・クレジットカードの利用率に大きな差はないが、電子マネーとQRコード決済の利用率は上昇し、特に少額決済時のQRコード利用率はこの半年間で倍増した。

  • 現金およびキャッシュレス決済の利用状況

    現金およびキャッシュレス決済の利用状況

よく利用するモバイル電子マネーは?

また、スマホアプリの電子マネー利用者(695人)に対して、買い物をする時によく利用する電子マネーのサービスを尋ねたところ、最もよく利用されていたのは楽天Edyで電子マネー利用者のうちの43.7%が利用していると回答し、2番目に多かったのはモバイルSuicaで38.4%、次いでiDが30.9%、nanacoモバイルが28.2%、モバイルWAON18.3%、QUIC Payモバイル17.8%、au WALLET 15.4%と続く。

現状、楽天EdyはApple Pay上で直接利用することができないが、Android端末のおサイフケータイやGoogle Pay上で幅広く利用されており、SuicaはJRの定期券やカード型プリペイド電子マネーとして2001年から利用され、スマホなどのモバイルアプリ上でも多く利用されている。

iD、nanaco、WAONもモバイルアプリ上で利用されており、今後もFelica搭載スマホが普及する影響で利用者数を伸ばすと推測しているほか、電子マネーのシステムとして最も利用率が高いのはおサイフケータイで39%となった。

  • よく利用するモバイル電子マネー

    よく利用するモバイル電子マネー

最も利用されているQRコード決済はLINE Pay

さらに、よく利用するスマホのQRコード決済サービスに関する質問では、LINE Payの利用率が最も高く40.4%となり、PayPayもほぼ同率で40.3%、楽天ペイが31.7%、d払いが16.1%、メルペイが11.3%、au PAYが8.2%、Origamiが8.1%という結果となり、ゆうちょPay、QUOカードPay、Amazon Payも一定数の利用者を獲得しているという。

LINE Payは「300億円祭」などの大規模なポイント還元キャンペーンを展開したこともあり、利用者が急増し、PayPayも昨年12月に実施したキャンペーンに続いて第2弾の100億円キャンペーンをアピールしユーザー数を伸ばした。楽天ペイは楽天カードで支払うユーザーに対して5%還元のキャンペーンを実施しており。安定的に顧客を増やし。7月からは新たに7pay、FamiPayなどコンビニエンスストアブランドのサービスも加わり、今後も激しい競争が続く見込みとなっている。

  • よく利用するモバイルQRコード決済サービス

    よく利用するモバイルQRコード決済サービス

電子マネー、QRコード決済とともにポイントサービスの利用者も増加し、ポイントサービスは決済時に0.5~1%程度のポイント還元が行われるもので、年間の還元総額は2兆円規模に達するという。アンケート結果では、スマホ利用者のうちの7割がポイントアプリを利用していると回答し、NTTドコモユーザーの中で最も利用率が高いポイントサービスはdポイントで41%が利用しており、楽天スーパーポイントはauユーザーやMVNOユーザーでの利用率が高く、ソフトバンクユーザーで最も利用率が高いのはTポイント(46%)となった。

スマホアプリでは、モバイル決済時にポイントを同時に貯めることができる仕組みも増え、クレジットカード、電子マネー、ポイントサービスを同一のアプリで利用できればユーザーにとって利便性が高く、顧客の囲い込みにつながることから、今後はキャッシュレス決済とポイントサービスの統合や連携が進んでいくと想定している。

  • よく利用するモバイルポイントサービス(キャリア別利用率)

    よく利用するモバイルポイントサービス(キャリア別利用率)

政府は2025年頃をめどにキャッシュレス決済比率を40%程度に引き上げることを目指し、数年後にはキャッシュレス決済額が100兆円を超えることは確実であり、クレジット決済や電子マネー、QRコード決済、ポイントサービスの市場規模はいずれも拡大する見通しで、モバイル端末による決済の利便性が高まっているためモバイルキャッシュレス決済市場がさらに急成長することは間違いないだろうとの認識を同社は示している。