Xilinxの日本法人であるザイリンクスは6月25日および27日に大阪と東京でISMジャパンセミナーを開催。これにあわせて記者説明会を行い、同社のISM(産業/ビジョン/医療機器)市場への取り組みなどについて説明を行った。
説明会で挨拶に立ったサム・ローガン社長(Photo01)は、日本だけではなくAPAC(アジア・太平洋地域)を統括する立場として、全社の売り上げの伸びが前年比6%程度の中、APACは同10%程度と成長のけん引役であること、直近の原動力はインドの宇宙産業の活性化や韓国での5Gサービスの立ち上がりなどであると説明。
日本地域は、と言うとISM(本来はIndustrial/Science/Medicalの意味だが、同社の定義ではIndustrial/Vision/Medical)に注力しており、この分野が売り上げトップにあるという話しであった。
ISMマーケットの動向については、本社XilinxのChetan Khona氏(Photo03)が行った。
同社のFPGAやプログラマブルSoCはすでに多くのIndustrial/Medicalマーケットに利用されており(Photo04,05)、Science向けは「あまりに幅が広すぎて載せられなかった」としつつ、国内事例として、[今年4月に国立天文台などの国際チームが成功したブラックホールの撮影](https://news.mynavi.jp/article/20190411-806609/)においては、エレックス工業が納入した機器にXilinxの製品が採用されているという話が披露された(Photo06)。
ISMの中では、Science関連は独特の動きを見せるため、横に置いておいて、Industirial向けのIIoTと、Health Care向けのHcIoT向けの市場が今後さらに伸びていくとし(Photo07)、そこに向けて特にZYNQ系のプログラマブルSoCデバイスが急速に伸びていくとした(Photo08)。
また、今後はAIを利用したアプリケーションが当然増えていくことから、こうした動きに対し、FPGA Fabricを利用することで低レイテンシ/高スループットの推論を実行できる(この点でもZynq系列はCPUなどよりも強みがある)事をアピールした(Photo09)。
AWS GreengrassでZynq UltraScale+が利用可能に
今回の説明会で目を引いたのが、AWS GreengrassとZynq UltraScale+の連携である。要するにZynq Ultrascale+をAWS Greengrass Deviceとして動作させることが可能になったという話である。といっても、さすがにGreengrassそのものをFPGA Fabric上で動かす訳ではなく、単純にCPUコア上でLinuxが動き、その上でGreengrassが動作するというだけで、別にFPGA Fabricを利用してLambdaが10倍高速に動くとか、コードをFPGA Fabricにオフロードできるとかいう話ではない。
また、AWS EC2 F1 InstanceとZynqではデバイスが異なるためにBitstreamに互換性が無いそうで、プロトタイプをAWS上で開発し、本番はZynq Ultrascale+で、という訳には行かないそうだが、セミナー会場ではAmazon FreeRTOSが動くZynqの開発ボード(Photo11)と、Greengrassが動くUltra96(Photo12)をつなぎ、温度をローカルで取得したり、AWSから直接制御したりといった事が行えるデモを行っていた(Photo13)。
また産業向けリアルタイム制御の一例として、独trenz electronicsのEDDP Kit(Photo14)を持ち込み(Photo15)、Pythonベースでモータを制御したり(Photo16)、逆にモータの稼働状態をモニターしてその結果をプロットするといったデモも行われていた。
同社はこの説明会に先立ち6月18日(米国時間)にACAP「Versal」のサンプル出荷を開始したことをアナウンスしており、ハイエンド向けはこのVersalが担う事になるが、その一方で裾野も広げていかないと売り上げの拡大は難しい。今回のセミナーもこうした裾野を広げるための、いわば草の根向けの活動の一環と言っても良い。ここしばらくのザイリンクスは、ネットワークや放送機器、自動車などの分野に注力する姿勢を見せてきたわけだが、改めてこうしたISM市場に注力していく姿勢を見せた、と言っても良いだろう。