JapanTaxiとソースネクストが業務提携を発表した。

6月よりJapanTaxiが全国1万台のタクシーに提供するタクシー車載タブレット「広告タブレット」および「決済機付きタブレット」に、ソースネクストが展開するAI通訳機「POCKETALK(ポケトーク)W」をSDK化して、標準の通訳機能として搭載する。これによって、たとえ日本語がわからない乗客であっても、乗務員と相互にコミュニケーションがとれるようになる。

全国1万台のタクシーに搭載されたタブレット上で、ポケトークが使えるようになる

ナビゲーションアプリ「NAVITIME」「Yahoo!乗換案内」との連携や、キャッシュレス降車体験を提供するマルチ端末「決済機付きタブレット」の独自開発など、精力的にサービスの利便性向上を図っているJapanTaxi。同社が新たにソースネクストと提携した背景を探る。

JapanTaxi 代表取締役社長 川鍋一朗氏(左)とソースネクスト 代表取締役社長 松田憲幸氏(右)

勢い止まらぬインバウンド需要の獲得へ

今回の提携で目指すのは、急成長するインバウンド需要への対応だ。

インバウンド客の数は、2010年の679万人から右肩上がりで増加しており、2018年には3119万人を突破し、なお成長を続けている。東京オリンピックを控える2020年には、政府はインバウンド客数を4000万人にまで伸ばす考えで、今後もその需要の拡大が見込まれている。

オリンピック後のインバウンド客目標数値は6000万人

インバウンド客の増加は、交通インフラの利用者の増加につながり、おのずとタクシーの利用者も増える。そこでJapanTaxiが目を付けたのが、「運転手と乗客の相互コミュニケーション」であった。

同社の川鍋一朗代表取締役社長は、「JapanTaxiのタブレットは文字ベースでしか多言語対応(日本語/英語/韓国語/中国語)できていなかったことが(日本語を話せない)乗客の不安につながっていた」と説明する。

これまで、乗客は同社のタブレットを使用することで、降車前にタクシー車内でQRコードやICカード、クレカなどでの支払いができた。ただ、「今どこを走っているのか」といった情報をタブレット上で見ることはできず、日本語が話せない乗客にとっては、それを確認する術がなかった。今回の提携は、その部分の改善を狙ったものだ。これは一方の運転者にとっても、「ちょっと混んでるんで違う道から行ってもいいですか? 」といった確認がとれるようになるというメリットもある。

また、ポケトークは2018年12月時点で世界74言語に対応しているため、言語の幅を広げることもできることが運転手・乗客の双方のメリットなる。

乗客はポケトークを起動し、タブレット下部に搭載されたマイクに向けて話すと、運転手側のタブレットに日本語が表示され、音声も流れる

提携の背景に「タブレット広告」

今回の提携で特筆すべきは、「タブレット」がすでにタクシーに搭載されていたために、単にポケトーク本体をタクシーに乗せるのではなく、SDK化して端末に組み込む、という方法をとれた点だ。

そもそもこのタブレットは「広告コンテンツ(CM)の放映、決済」を目的として設置されたもの。現時点で「広告タブレット」と「決済機付きタブレット」の2機種が運用されており、すでにこれらの端末は、全国1万台のタクシーに搭載されている。

ちなみにそれぞれのタブレットの違いは対応している決済手段で、広告タブレットで対応しているのは、Japan Taxi Wallet、Origami Pay、Alipay、WeChatPay、LINE Pay、d払いといった決済アプリによる支払いのみ。一方の決済機付きタブレットは、アプリに加えてクレカ、交通系IC、電子マネーにも対応している。

JapanTaxiの「広告タブレット」と「決済機付きタブレット」

最近の潮流から「キャッシュレス」に対応している点に目が行きがちではあるが、単に「キャッシュレス化を進めたいから、タブレットを設置してください」というだけでは、なかなか普及させるのは難しい。こういった機器を設置するにあたっては、ある程度の初期費用が発生してしまうためだ。

しかし、JapanTaxiでは2020年までにこれらのタブレットを搭載したタクシーを5万台にまで計画だという。その計画を実現させるための手段が「広告」だ。

川鍋氏によると、タクシーを使用する人は部長クラスや役員クラス、経営者などといった「決裁権を持っている人」が多い。つまり、そこをターゲットに情報を届けたい事業者からすれば、このタブレット上で広告を打つメリットは大きいというわけだ。

広告費を得ることでタブレット採用にかかる初期費用を抑え、かつ広告収益の一部をタクシー会社に分配する。さらに、その端末によってキャッシュレス化も推進できる。こんな青写真を描けるのであれば、タブレット導入のコストパフォーマンスは案外、良好なのかもしれない。

混沌の配車市場で存在感示すJapanTaxi

近年、UberやLyft、DiDi、Grabといったライドシェア企業の誕生で、タクシー業界はその地位を脅かされつつある。

まだまだ日本でライドシェアは厳しい状況に置かれており、成長は行き詰っている状態だとはいえ、規制が緩和されたらすぐに、その使いやすさに飛びつくユーザーは少なからずいることだろう。実際、筆者もアメリカでUberを使ってみて、その便利さに感動した1人だ。

タクシー業界を取り巻く環境が急激に変化する中で、JapanTaxiはアプリでの簡単な予約、キャッシュレスの推進、広告端末の設置など、複数のサービスを展開している。今回のソースネクストとの提携も、インバウンド需要の獲得に貢献することだろう。

混沌とする市場の中で、さまざまな新サービスをローンチし、存在感を示し続けるJapanTaxi。2020年東京五輪・パラリンピック時にはインバウンド客が増加し、ライドシェアの部分解禁はやむを得ないとの見方もある。タクシー業界にとって避けては通れない「ライドシェアの解禁」がちらつく中、今後の動向からも目が離せない。

(田中省伍)