いよいよ「第9世代はなんでこんなに性能が高いのか」という謎を解析したいと思う。まずはいつも通り、グラフ82がSandraのDhrystone/Whetstone実行中、グラフ83が3DMark FireStrike実行中の、実効消費電力の変動をまとめたものだ。

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    グラフ82

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    グラフ83

FireStrikeはともかくとして、SandraではCore i9-9900Kはピークで250Wを超える消費電力。Core i7-8700Kのときも「TDP 95Wは何だったのか?」という感想を抱いたものだが、それをはるかに凌駕する消費電力だ。ただ今回の場合、マザーボードがCore i7-8700Kと第9世代の2製品で異なっているので、そもそもの待機時の消費電力が異なっている。

このあたりをまとめたのがグラフ84で、Z390プラットフォームではそもそも20Wほど消費電力の上乗せがある。そこで差分を取ったのがグラフ85であるが、その分を差っ引いてもまだ圧倒的にCore i9-9900Kの消費電力は大きい。

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    グラフ84

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    グラフ85

待機時との差分を取った変動がグラフ86と87であるが、特徴的なのはグラフ87である。後半になるとThermal Throttlingが発生するためか、多少Core i7-8700Kの消費電力が落ちているが、前半に関しては3製品ともにほとんど変わらない。要するに、負荷がかかっていないときの消費電力は、別に第9世代だからといって特に増えるわけではない。

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    グラフ86

問題は負荷がかかったときで、Core i9-9900Kはピークで181.9Wもの消費電力の増加がある。Core i7-9700Kでも116.0Wである。これに対してCore i7-8700Kは、最大でも88.6Wに留まっており、おそらくは95WというTDPの枠いっぱいになっている(それが理由で、他の2つに比べてグラフがややフラットになっている)と考えられる。

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    グラフ87

ここでちょっとTurbo Boostの理屈に話を戻す。

本来Turbo Boostは、TDPおよびダイ温度にゆとりがある場合に、一時的に動作周波数を引き上げるという趣旨であり、少なくともCore i7-8700Kに関しては、そのマージンのギリギリまで攻めているとはいえ、一応この趣旨を守っている。が、Core i9-9900K(となんちゃってCore i7-9700K)に関しては、温度に関してのみ守っているものの、もはや電力に関してはTDP枠を取っ払って動いているように見える。

Dhrystoneで高い動作周波数が長時間維持されるのは、Thermal Throttlingがかかる直前まで47倍(Core i9-9900Kの場合。Core i7-9700Kなら46倍)でブン回している……以外の解釈ができない。ちなみにCore i7-8700Kの場合、試しにBIOS SetupでAll Core Syncにして消費電力を測定したところ、Dhrystoneの場合は4.1GHzで実効消費電力差が84.2W、4.2GHzで93.0Wとなっており、おそらくは全コアが稼働するようなケースでは4.1GHzあたりで動いていると思われる。筆者の推測が正しければ、Core i7-9700KやCore i9-9900Kは4.6GHz/4.7GHzで稼働するわけで、そりゃ性能差があるわけである。