いつもそうだ。「飲み放題」で酒を飲むと、ついつい度を過ごす。「ラストオーダーです」という店員の掛け声にちょっと余分に注文してしまい、翌朝になると、もう少し控えておけばよかったと反省する。居酒屋で居合わせる大学生たちも、「飲み放題」で盛り上がっているようだ。筑波大学博士課程の川井田恭子(かわいだ きょうこ)さん、吉本尚(よしもと ひさし)准教授らが取り組んだのは、そんな「飲み放題」で大学生が飲む酒の量についての研究だ。彼らは「飲み放題」になると、そうでない場合の2倍近いアルコールを飲んでいた。

川井田さんらは、関東の31大学に通う20歳以上の大学生と大学院生に対して2016~17年にアンケートを行い、533人の回答を分析した。「飲み放題」を経験したことがあるのは、その96%にあたる511人だった。この511人をさらに分析したところ、「飲み放題」のときに摂取するアルコール量は、男子学生ではそうでないときの1.8倍、女子学生では1.7倍になっていた。「飲み放題」は飲み会の半ば「常識」になっていて、その際には酒量が2倍近くに増えるということだ。

今回の分析では、飲酒リスクが高まる基準として「一時的多量飲酒(HED)」に注目した。世界保健機関の定義によると、一時的多量飲酒とは、1回の飲み会で60グラム以上のアルコールを摂取する飲み方のこと。急性アルコール中毒や生活習慣病、がんなどのリスクが高まる量とされる。厚生労働省は1日あたり約20グラムのアルコール、おおざっぱにいって日本酒なら1合、ビールなら中瓶で1本を「節度ある適度な飲酒」としており、HEDはその3倍にあたる。

男子学生(女子学生)の場合、「飲み放題」でない場合にHEDに達するのは全体の30%(20%)だったが、「飲み放題」だとそれが70%(49%)に大幅に増えた。また、「飲み放題」でなければHEDに達しない学生でも、「飲み放題」になると男子ではその57%、女子でも38%がHEDの飲み方になった。「飲み放題」は、大学生を危険な飲み方にいざなうようだ。

大人になった気分で酒を飲み始める大学生。自分に適した酒量もまだわからず、救急搬送されたり、ときには死亡したりする。欧米人とは違って、アルコールをまったく受けつけない、あるいはアルコールにとても弱い体質の日本人は4~5割もいる。吉本さんは、「『飲み放題』は飲酒リスクを高めるということを、よく知っておいてほしい」という。

なぜ「飲み放題」で酒量が増えるのかは、よくわかっていない。みんなでワイワイやる楽しさゆえか。ラストオーダーで余分に注文してしまうからか。いずれにしても、「飲み放題」は飲みすぎを助長することが、川井田さんらの研究で学問的にもはっきりした。これからは、それを自覚して「飲み放題」に臨むことにしよう。

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