住友林業情報システムは、主に住友林業のITシステムに関する開発・運用等を手がけつつ、住友林業の取引先にもサービス提供を行う企業だ。同社が、業務効率化のためのRPA導入に至るきっかけは、2014年にあったという。

「ECサイトの運用もしているため、ECサイト運用管理者向けのセミナーに参加したのですが、その時配布されていたパンフレットでたまたま出会ったのが最初でした。当時はRPAという言葉は書かれていなかったように思います」と振り返るのは、住友林業情報システム ICTビジネスサービス部 チーフの楠本正彦氏だ。

  • 住友林業情報システム ICTビジネスサービス部 チーフ 楠本正彦氏

当時、早急な対応を必要とするほど大きな課題を抱えていたわけではないが、業務の効率化に向け強い興味を持ったという。

「世の中の便利なITツールを見つけて展開するのが使命ですし、ロボットのレンタルというのはビジネスになりそうだと感じました」と楠本氏は語る。

業務の一部である受託業務では、さまざまなデータを預かり、加工する必要がある。多くの場合はシステムにログインして対象データをダウンロードした後、Excelで入力やデータ加工を行う。比較的単純な業務で、技術的に難しい面はないが手間がかかるものだ。

「Excel上の作業だけならマクロでも対応できますが、RPAであれば別のシステムにも対応可能になります。特にWebに強いのは魅力的でした」と楠本氏。

作業をロボットに任せルーチン業務を1/4に

同社は2015年5月に、RPA テクノロジーズの「BizRobo!」を選定し、評価のためにフル機能版をレンタル導入した。評価フェーズでは開発スキルを持たない現場担当者を中心に、情報システム部門がアドバイスをするという形式で行われたという。

  • RPA導入の流れ

「最初のパイロット導入では、私の担当しているカタログ請求システムが対象になりました。Webから申し込みを受け、データを加工して発送まで行うという作業は難しくはありません。しかし、ボリュームによって負担が非常に大きくなる作業でもあります。何かのセミナーで紹介されたりすると突然請求件数が増加するのですが、必ずしも事前に紹介するという連絡がもらえるわけではありません。朝データを確認して驚くという状態でした」と語るのは、住友林業情報システム ICTビジネスサービス部 チーフの市東千晴氏だ。

  • 住友林業情報システム ICTビジネスサービス部 チーフ 市東千晴氏

従来は朝の出社後にデータを取得し、加工作業を開始していた。この基本的なデータ取得から加工までの作業をロボットに任せ、夜間処理することでカタログ請求対応業務のルーチンワークは1/4まで削減できたという。

「朝出社したら下処理ができているというのは非常に便利ですし、人の作業で発生してしまうミスもロボットならありません。以前は午前中を準備作業にとられていましたが、夜間にロボットが準備してくれることで朝から作業に取り掛かることができるようになりました。おかげで時短勤務者の活用にもつながっています」と市東氏。

実際の時短勤務者からは無駄のない仕事ができることがよい、達成感のある作業ができる、継続的に働ける安心感があるといった肯定的な声があがっているという。また雇用側としてもフルタイムで働けない事情がある人を活用し続けられることで引き継ぎや教育といった手間を減らし、安定した成果を期待できる。

  • 時短勤務者の活用