Top500の発表では、毎回、主催者の1人であるErick Strohmaier氏がハイライトと分析を説明する。

  • ローレンスバークレイ国立研究所のErick Strohmaier氏

    ISC 2018で第51回Top500リストのハイライトを説明するローレンスバークレイ国立研究所のErick Strohmaier氏

高齢化が進むTop500リスト掲載スパコン

第51回Top500リスト(2018年6月版)の第1のハイライトは、何といっても米国のSummitとSierraが1位と3位となり、首位を中国から奪還したことである。しかし、これは、読者はご存じの事項なので、ここでは詳しくは説明しないが、動向の説明の都合で、トップ10のリストだけを掲げておく。

  • 2018年6月の第51回Top500リストの最上位10システムのリスト

    2018年6月の第51回Top500リストの最上位10システムのリスト。黄色は今回、新たに登録されたシステム。ORNLに設置されたIBM、NVIDIA、Mellanox製のSummitが首位を中国から奪還した。中国の太湖之光は2位に後退。日本の産総研に設置されたABCIは初登場で5位にランクイン (出典:このレポートのすべての図は、ISC 2018におけるErick Strohmaier氏の講演資料をコピーしたものである)

Strohmaier氏が指摘する最近の傾向は、リストに含まれる500台のスパコンの高齢化である。次のグラフは1995年からの25年あまりのデータが含まれているが、2010年ころまでは、500台のスパコンの平均月齢は7.6か月であった。その後、平均月齢は急増し、最近は17か月程度のところで一定になってきているように見える。

何故、こうなるのか分からないし、それが分かったから何の役に立つかと言われても困るが、このような傾向が分かるという点でも、Top500がスパコンの歴史に関する高品質のデータを溜めてきた大きな意義があると思う。

  • Top500リストの500台のスパコンの平均月齢

    Top500リストの500台のスパコンの平均月齢。2010年までは7.6か月であったが、最近では15か月を超えるようになってきている

次の図は各回のリストにおいて、500システム合計の性能の半分になるランクをグラフにしたものである。2010年くらいまでは、上位の40~80システムの性能の合計が、500位までの全システムの合計の性能の半分になっていたが、それ以降、トップエンド機へのFlops値の集中が進んでいる傾向が見える。特に2013年は、トップ12システムで、リスト全体の半分のFlopsを占めるという事態になった。

最近では、この傾向はある程度戻ってきているように見えるが、この先、どうなっていくのか、このグラフからは傾向は読み取れない。

  • Top500全体の半分の性能を占める上位システムのランクの推移

    Top500全体の半分の性能を占める上位システムのランクの推移。直近では、上位28システムで半分のFlopsを占めている

性能の伸びから見るExaFlopsスパコンの登場時期

次の図は、500システム全体の性能の合計(SUM)と、トップのシステムの性能(N=1)と最下位のシステムの性能(N=500)をプロットしたものである。トップの1台のシステムの性能を表すN=1の線は凹凸ができているが、2000年代までは、SUMとN=500の線はかなりきれいな直線であり、傾きが一定の指数関数となっていた。

その傾向は続くと思われていたのであるが、2011年ころになると、N=500の線の傾きが落ちてきたことが明らかとなった。振り返ってみると、N=500の線の変曲点は2008年6月である。

SUMの線は伸びを継続してきたのであるが、こちらも2014年ころには伸びの鈍化が明らかとなってきた。変曲点は2013年6月である。

ExaFlopsのスパコンは2020年までに登場すると予想されていたが、この性能向上の鈍化が明確になったことから、エクサスケールマシンの登場スケジュールは2年程度後退している。

なぜ、変曲点ができたのか、なぜ、N=500は2008年6月で、SUMは2013年6月なのかを、ISC 2018のパーティの場でStrohmaier氏と議論したのであるが、「デナードスケーリングの終焉とムーアの法則のスローダウンが影響しているのは確かだが、なぜ、SUMとN=500で変曲点がずれているのかは分からなかい」という話となった。N=500の場合は、プロセサのコストが効いているのではないかと思われるが、残念ながら、Top500にはそのようなデータは含まれていない。

  • Top500スパコンの性能推移

    Top500スパコンの性能推移。SUMはリストの全スパコンの性能の合計、N=1は1位のスパコンの性能、N=500は最下位の500位のスパコンの性能の推移を示す。2010年ころまでは単純な指数関数であったが、N=500は2008年6月、SUMは2013年6月から傾きが鈍化した

スパコンの性能向上に急ブレーキがかかった2013年

次の図は、Top500のスパコンの性能の1年間の性能向上をプロットしたグラフである。かなり、値のばらついたグラフであるが、2013年までは年率1.8倍強(11年で1000倍)の性能向上が達成されてきた。しかし、それ以降は年率1.4倍(20年で1000倍)に伸び率が鈍化しているというのがStrohmaier氏の分析である。

開発レベルで、プロセサのクロック周波数向上に急ブレーキがかかったのは2005年ころで、長くても1~2年で量産プロセサに影響すると思われるが、なぜ、2013年にスパコンの性能向上に急ブレーキがかかったのかはよく分からない。

  • Top500のスパコンの1年間の性能控除をプロットしたグラフ

    Top500のスパコンの1年間の性能控除をプロットしたグラフ。2013年までは年間1.8倍強の性能向上が得られていたが、それ以降は、年間1.4倍に性能向上のペースが鈍化した

中国は本当にTop500スパコン設置国1位なのか?

話は変わって、Top500のスパコンの国別の設置台数の推移のグラフを次の図に示す。一番下の帯が米国で、その上が日本、そして一番上の赤が中国である。2008年以前は中国のスパコン設置台数は僅かであったが、2014年から設置台数が急増している。

  • 国別のTop500スパコンの設置台数の推移

    国別のTop500スパコンの設置台数の推移。大部分の期間では米国がトップであったが、最近では中国の設置台数が急増し、米国を逆転している

次の図は今回の第51回Top500リストのスパコンの国別の設置台数の内訳をしめすパイチャートである。台数1位は中国で、シェアは41%である。第2位は米国の25%、第3位は日本の7%となっている。

  • 国別のTop500システムの設置シェアを示すパイチャート

    国別のTop500システムの設置シェアを示すパイチャート。中国が41%と米国の25%を引き離してトップである

次の図は、設置国ではなく、製造国のシェアを示すグラフである。過去には大分部のスパコンは米国のメーカーが製造したもので、米国製が90%を超えていた時代もあったが、最近では中国勢のシェアが急増している。

  • To500スパコンの製造国シェアの推移

    To500スパコンの製造国シェアの推移。2013年までは米国が圧倒的なシェアを誇っていたが、最近では中国製が急増している

次の図はベンダ(製造メーカー)別のパイチャートである。中でもLenovoは117システムを占めてトップシェアとなっている。そして、2位は米国のHPEの79システムである。中国メーカーはトップのLenovoに続いて、Insuper(浪潮)が68システム、Sugon(曙光)が55システムと続いている。

  • Top500スパコンのメーカー別のシェアのパイチャート

    Top500スパコンのメーカー別のシェアのパイチャート。Lenovoが1位で、2位がHPEであるが、3位がInspur、4位がSugonとトップ5のうちの3社が中国メーカーである

しかし、Lenovoの登録を見ると、例えば106位から122位までは同じ仕様のシステムが並び、すべてシステム名称はSoftware Company(M)、用途はHosting Servicesと書かれている。HPLのRmaxの値は書かれているが、すべてのシステムでまったく同じ、消費電力は空欄となっている。このシステム名ではどこにあるシステムかも確認のしようがない。Inspurの登録も、システム名が空欄、サイト名がInternet Service Aなどと書かれているものが多く、これらも確認が難しい。確かに私企業は名前を出すのを嫌うところが多いが、この匿名のオンパレードはなんとかならないものであろうか。

それから、中国のトップクラスのNational Computing Centerには、太湖之光や天河2Aなどの巨大なマシンが設置されているが、Universityと書かれているエントリは2~3しかなく、中国の研究者はどんなマシンを使っているのか頭を傾げる登録状況である。

また、中国のTop500登録の大部分のシステムが、Internet企業やHosting Serviceなどである。米国や日本では、このような会社や用途はTop500には出てこない。どのようなシステムをTop500に登録するかがまったく異なっている状況では、中国のメーカーと米国や日本などのメーカーのTop500システムの数を比較してもほとんど意味がない。

次の図は、ベンダごとのHPL性能のパイチャートである。SummitとSierraを追加したIBMが20%のシェアでトップに立ち、巨大システムが多いCrayが16%でそれに続いている。Lenovo、Inspur、Sugonの中国勢は、それぞれ12%、6%、5%で台数ベースに比べると存在感は減っているが、性能パイチャートでも存在感はある。

  • 性能別シェアのパイチャートでは、SummitとSierraを加えたIBMが20%のシェアでトップ

    性能別シェアのパイチャートでは、SummitとSierraを加えたIBMが20%のシェアでトップ。巨大システムの販売が多いCrayがそれに続く

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