日本ヒューレット・パッカード(HPE)は5月31日、都内で記者会見を開き、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)製品「HPE SimpliVity 380」がMicrosoft Hyper-Vに対応したほか、簡易検証施設の開設を発表した。

  • 「HPE SimpliVity 380」の外観

    「HPE SimpliVity 380」の外観

近年、多様な業種のシステムにおいて俊敏性やコストの観点から複数の異なるパブリッククラウドと自社内のプライベートクラウドを組み合わせた、ハイブリッドIT(マルチクラウド環境)の運用が必要とされている。

しかし、既存のオンプレミスのシステムとクラウドをそのまま組み合わせてしまうと、管理運用が複雑となり、管理コストが逆に上昇をしてしまうため、まずはオンプレミスからプライベートクラウド化することが鍵になるという。

  • ハイブリッドITには既存システムのプライベートクラウド化が必須だという

    ハイブリッドITには既存システムのプライベートクラウド化が必須だという

日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT 製品統括本部 エバンジェリストの山中伸吾氏は新製品について「物理システムにとらわれない仮想マシン(VM)管理と属人的なオペレーションを解消できるため、ITスタッフの働き方改革につながる」と話す。

  • 日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT 製品統括本部 エバンジェリストの山中伸吾氏

    日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT 製品統括本部 エバンジェリストの山中伸吾氏

管理時間を53%削減し、バックアップ・リストアに関する工数を70%削減

SimpliVity 380は、HPE OmniStackのSDS(Software Defined Storage)技術により、複数の物理サーバに分散された物理ストレージを1つの大きな仮想ストレージとして管理することを可能としている。

今回、対応するMicrosoft Hyper-Vはプライベートクラウドの仮想化技術として利用することにより、パブリッククラウド(Azure)とID管理、データ管理、開発環境の統合を実現し、パブリッククラウドとプライベートクラウドに一貫性を持たせた管理ができるという。新製品の発表により、すでにHyper-Vを採用しているユーザーに対してSimpliVityを提供することが可能となる。

日本マイクロソフト パートナー事業本部 パートナー技術統括本部 統括本部長の細井智氏は「ハイブリッドクラウド一貫性が重要だ。共通のID管理や統合された管理・セキュリティ、データプラットフォーム、統合開発・DevOpsなどとなり、プライベートクラウドにはHCIが必要になってくる」と、強調した。

  • 日本マイクロソフト パートナー事業本部 パートナー技術統括本部 統括本部長の細井智氏

    日本マイクロソフト パートナー事業本部 パートナー技術統括本部 統括本部長の細井智氏

山中氏は「SimpliVityによる働き方改革には『VM中心型管理』の徹底と『秒速バックアップ・リストア』の2つのキーワードがあり、システム管理に要する時間を53%削減し、バックアップ・リストアに関する管理工数を70%削減できる」と説明する。

VM中心型管理については、SimpliVity 380の管理はMicrosoft System Centerにプラグインし、管理を行いたいVMを選択した上で管理を行うため物理システムを意識することなく、VMから管理が可能なことから日常業務の簡素化が図れる。

また、物理インフラに関する専門知識も不要となり、運用の標準化を実現することで、属人的なオペレーションの解消を実現するという。

  • VM中心型管理の概要
  • VM中心型管理の概要
  • VM中心型管理の概要

秒速バックアップ・リストアに関しては、SimpliVity専用のハードウェアアクセラレーターカードが搭載されているため、超高速でデータの圧縮、重複排除を実施し、秒速でのシステムバックアップ・リストアを可能としている。

  • SimpliVity専用のハードウェアアクセラレーターカード

    SimpliVity専用のハードウェアアクセラレーターカード

1TB(テラバイト)のVMを60秒未満でリストアでき、高頻度なバックアップがストレージ容量を消費せずに実施することが可能となり、RPO/RTOを短縮するという。さらに、ランサムウェアの対策に適し、これらの機能は標準機能として含まれているため、追加コストは不要となっている。

  • ハードウェアアクセラレーターカードの概要

    ハードウェアアクセラレーターカードの概要

  • 秒速バックアップ・リストアの概要

    秒速バックアップ・リストアの概要

SimpliVity 380のHyper-Vモデルは「Small」「Medium」の2種類を揃え、最小構成価格(税抜)は150万6400円~。

本社に「HPE SimpliVity 圧縮体感センター」を開設

一方、SimpliVityのデータ圧縮率、重複排除の効果はデータの種類や構造によって異なるため、購入前の事前検証の要望が多く、検証機の貸出による事前検証では検証作業のみならず、システムのセットアップなどの作業が必要だという。

そのため、同社では「HPE SimpliVity 圧縮体感センター」を本社に設置。同センターにはセットアップ済みのHPE SimpliVity380 Gen10が3台準備されており、データを持ち込むだけで、すぐに検証がスタートできるほか、専門エンジニアが検証を実施。これにより、最短1週間程度でデータ圧縮の効果レポートを提供することを可能としている。

  • 「HPE SimpliVity 圧縮体感センター」の概要

    「HPE SimpliVity 圧縮体感センター」の概要

日本ヒューレット・パッカード 執行役員 ハイブリッドIT事業統括 統括本部長の五十嵐毅氏は「従来から企業におけるハイブリッドITの支援を重点施策に掲げている。近年、パブリッククラウドは伸長しているが、プライベートクラウドの割合は7~8割程度となっている。今後はハイブリッドIT化が進み、パブリック、プライベート両方を使い分けることが増加していくが、両方を使い分ける企業は現状では少ないため、クラウドインテグレーターとして支援していく」と意気込みを語っていた。

  • 日本ヒューレット・パッカード 執行役員 ハイブリッドIT事業統括 統括本部長の五十嵐毅氏

    日本ヒューレット・パッカード 執行役員 ハイブリッドIT事業統括 統括本部長の五十嵐毅氏

そして、同氏は「柔軟なVM管理とシステム構築・運用をシンプルにするSimpliVityと、パブリッククラウド(Azure)との一貫性、Windows OSと高い親和性により、オンプレミスとパブリッククラウドの境目をなくすことを可能にしている。中堅企業から大企業まで導入が容易な製品だ」と、胸を張っていた。

  • 左から細井氏、五十嵐氏

    左から細井氏、五十嵐氏