NTTコミュニケーションズ(NTT Com)とヴイエムウェアは10月30日、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するマルチクラウドサービスの提供に向け、協業範囲を拡大すると発表した。

これにより、NTT Comはクラウドサービス「Enterprise Cloud」」において、VMwareベースで構成された既存システムをクラウド上に容易に展開可能な専有型クラウドや共有型クラウドを提供する。

具体的には、「VMware Cloud Foundation」による専有型クラウド、「VMware vCloud Director」を活用した共有型クラウド、「VMware vCloud Availability for vCloud Director」を活用したウォームマイグレーションサービスの提供が、2017年度第4四半期(2018年1月~3月)より開始される。

協業拡大により、提供されるサービスの概要

NTTコミュニケーションズ 取締役 クラウドサービス部長 森林 正彰氏

NTTコミュニケーションズ 取締役 クラウドサービス部長の森林正彰氏は、新サービスの利用例として、「オンプレミスから専有型クラウドへセキュアにマイグレーションやリソース拡張を行う場合」と「共有型クラウドを既存システムのバックアップサイトとして利用する場合」を挙げた。

上記のサービスに加え、ヴイエムウェアのネットワーク仮想化プラットフォーム「VMware NSX」とNTT Comのセキュリティサービスとの連携、ヴイエムウェアの運用管理のクラウドサービス群「VMware Cloud Services」とNTT Comの提供するICT環境可視化ツール「Cloud Management Platform (CMP)」の連携も予定されている。

森林氏は「われわれが提供するクラウドサービスのコアバリューが、顧客のデジタルトランスフォーメーションに貢献することを目指している。今回、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するマルチクラウド環境の提供を実現するため、協業を拡大した。加えて、2021年には国内のプライベートクラウド市場がパブリッククラウド市場の1.6倍になるという予測も出ており、ビジネスチャンスがあると見ている」と、今回の提携の意義について説明した。

すべてのクラウドで一貫性のあるインフラと運用の提供を

米VMware 最高経営責任者 パット・ゲルシンガー氏

説明会には、米VMware 最高経営責任者のパット・ゲルシンガー氏も出席し、同社のクラウド戦略を紹介した。

VMwareは、「Any Device、Any Application、Any Cloud」を戦略として掲げているが、ゲルシンガー氏はAny Cloudについて、プライベートクラウドとパブリッククラウドの両面から説明した。

プライベートクラウドについては、容易な導入・管理・保護を実現したという、顧客の期待に応えるべく、同社は「VMware Cloud Foundation」を提供している。これは、コンピューティング、ストレージ、ネットワーク、運用の自動化がパッケージされたもの。

ゲルシンガー氏は「現在、顧客はコンピューティングの仮想化のみを利用しているが、VMware Cloud Foundationにより、リッチなクラウド環境を利用できるようになる。コンピューティングに加え、ストレージ、ネットワーク、運用の自動化と、さまざまな分野でわれわれの技術を活用できる」と、VMware Cloud Foundationのメリットを語った。

また、パブリッククラウドについては、Amazon Web Servicesをはじめとするさまざまなパブリッククラウドにおいて、さらにはハイブリッドクラウドを利用するうえで、一貫性のある運用とインフラを提供できるとした。

今年8月に開催された年次イベント「VMWorld」では、すべてのクラウドにおいて一貫した運用を実現するサービスとして、「VMware Cloud Services」が発表された。「VMware Cloud Services」には、クラウドの使用状況と料金、ネットワークトラフィックなどを可視化できるツール群が含まれている。

「VMware Cloud Services」のラインアップ

さらに、ゲルシンガー氏は同社のクラウド戦略として、VMwareベースの共通の環境をパートナーが提供するサービスの環境にまで拡大し、顧客がセキュリティを確保した形でクラウドの自由を獲得することを実現すると説明した。

一貫したインフラと運用によるクラウドへのアクセスをパートナーと共に

米VMware. クラウド・ネットワーキング担当 最高技術責任者のグイド・アッペンツェラー氏

続いて、米VMware. クラウド・ネットワーキング担当 最高技術責任者のグイド・アッペンツェラー氏が、両社のクラウド事業におけるビジネスチャンスについて説明を行った。

アッペンツェラー氏は、今年同社の顧客を対象に行ったアンケートにおいて、「パブリッククラウドを利用している」という回答が77%、「最終的には複数のパブリッククラウドを利用したいと考えている」という回答が63%に及んだことを引き合いに出し、「両社にとってビジネスチャンスがある」と述べた。

そして、一貫したインフラと運用によるクラウドサービスに対するグローバル規模のアクセスを提供できるパートナーのためのプログラム「VMware Cloud Provider Program」を紹介した。同プログラムは100カ国以上で展開されており、参加しているサービスプロバイダーは4000社を超え、NTT Comも同プログラムに参加している。

「VMware Cloud Provider Program」のビジョンとして、マルチクラウドについては「VMware Cloud Servicesにより、サービスプロバイダーがあらゆるクラウドにわたり顧客のワークロードを管理する」としている。