CASPARの導入されたマンションでは、ボイスコントロールの他に、アプリからの操作もでき、さらにAIによる自動操作もできるようになる。

住人の動きはカメラやマイクなどをはじめとする多彩なセンサーを通じて解析され、室内のどこで何をしているのかが読み取られるのだ。キッチンで冷蔵庫をあけて動いているならば、冷蔵庫に物を入れているか出しているということになる。同じキッチンでも細かく動き回っている様子や掃除機の音が加われば、掃除しているようだと認識する。そうして人の動きと、その時にどのような温度や明るさなどを設定したのかを好みとして理解し、状況に合わせた設定を再現してくれるのだ。

マンション内い設置されたセンサー(左)とカメラ(右)

「たとえばテレビを見ていたはずの人が眠ってしまった場合、動かない様子を認識してカーテンをしめ、だんだん照明を暗くするなど寝る環境を整えてくれます。行動を理解して最適な状況を再現するのがCASPARなのです」と小暮氏は語る。

また、ボイスコントロールも単純な音声認識ではなく、人の声を聞き分けている。複数の住人がいる場合は、操作した人に合わせた設定が自動的に選択されるという。

「同じムービーモードでも人によって好みが違えば、呼びかけた声に合わせて設定が変わります。またAIによる自動操作でも、エアコンの温度を下げたがる夫と上げたがる妻という組み合わせの場合、離れた場所にいればそれぞれにとって適性な温度になるよう分けた温度コントロールをしますし、一緒にいるならば中間をとったちょうどよい設定にします。家電操作をつける、消すというレベルではなく、もっと細かく好みに合わせた操作ができます」とSAXENA氏は語った。

住人の快適さと安全を守るためにデータ解析はローカルで実施

「シニア層の住人の場合、倒れたかどうかなどアクションの違いを見分けることもできます。住人1人1人に合わせた動きをコントロール可能です」とSAXENA氏が語るように、CASPARはかなり細かな見分けも行う。ボイスコントロールの聞き分けだけでなく、行動データからもそこにいるのが住人のうち誰なのかを識別し、適性な設定を再現する。動作内容の識別も、事前登録した動作等とのマッチングではなく、動き方や音声、振動といったデータの組み合わせから予測するという方式で行われるため、持病のある人の異常なども察知できるというのだ。

それを実現するために多彩なセンサーで住人の行動をすべて解析するため、CASPARには非常にプライベートな情報が膨大に蓄積されることになる。そのため、センサーから送出されたデータの解析を行う部分はローカルに格納されている。

「安全、セキュリティを考えるとプライバシー保護のためにローカルでしか動かすことができないと考えています。私たちは住んでいる人のことを一番に考えます」とSAXENA氏。AI搭載スピーカーの多くはクラウド上にデータを吸い上げているが、それはユーザー動向を把握したい企業側の理屈だ。ユーザー第一の姿勢を貫いたCASPARでは、クラウド上に吸い上げるのは、プライベートな情報を含まないごく一部のデータだという。

スマートホームに注力しOEM展開も目指す

先に述べた、インヴァランスの開発する新しいゲートウェイが完成すれば、外部に向けてAPIを解放している製品ならばメーカーを限定せずにコントロールできるようになるという。今後はそのゲートウェイとalyssa.、CASPARを組み合わせて新規物件に導入して行く方針だ。

「alyssa.は住人とオーナーなどのコミュニケーションに活躍していますし、投資情報提供などの役割も持っています。今後、スマートホームのコントロールという部分はAIに任せればいいと考えています。今後も何社か出資を検討しているIoT関連企業があります」と小暮氏は、自社開発の「alyssa.」は軸足を移しつつ、スマートホームとしての充実をより一層目指す方針を語る。

新築で作り込まなければ、理想的なスマートホームは作れない。そのためインヴァランスはデベロッパーとしてスマートホームの充実を目指しつつ、今後はalyssa.を同業他社向けにOEM展開させるなどIoT部門の充実にも注力して行く予定だ。