プラスワン・マーケティングは11月21日「FREETEL WORLD 2016 Fall/Winter 2」と題した発表会を開催した。10月にも同社のMVNO事業「FREETEL」について新サービスや新料金プラン、新端末などを発表したが、今回はそのアップデートということで、10月の発表からさらに進んだものもあった。

海外での展開を強化

FREETELは日本国内では斬新な格安サービスを提供するMVNO、およびSIMフリースマートフォンのメーカーとして認知されているかと思うが、実は「世界一のスマートフォンメーカー」という大きな目標を立てて海外にも積極的に展開している。今回の発表では、10月にベトナム国内での販売を開始したことや、チリでのシェアが1位になったことなどが発表されたほか、JALやJTB、WeChatらと組んで訪日旅行者向けのSIMの販売実験が行われたことが発表された。

ベトナムでの販売を開始。これで世界18カ国での販売が開始されたことになる

チリでのシェアNo.1を達成。ちなみにフリーテルは中南米8カ国で販売を展開している

JALの中国便でSIMを貸し出し、料金はWeChat上のペイメントでチャージできるようにした。WeChatの通信料も無料にすることでコミュニケーションの不安も解消している

JTBはフランスからの旅行客を相手に「麗(REI)」を貸し出し。主要なアプリは最初からインストール済みとしてあり、最小限の手間で利用できるよう工夫してある

ここ数年は国内大手メーカーのスマートフォン販売撤退が続いたが、こうしてメイドインジャパンを武器に、海外に積極的に打って出るメーカーがあるのは心強い限りだ。同社の端末に和風の名前が多いのも、海外展開を見越してのことなのだろう。

また、直営店舗となる「FREETELショップ」の全国展開も発表した。年内に展開を開始し、2017年中に200店舗規模まで広げたいとした。大手MNOにはかなわないものの、MVNOとしてはかなりの規模となることから、本気で攻めのフェイズに入ってきたことが伺える。

新端末は安くて長寿命

端末については10月にフラッグシップの「極2」とロングバッテリーの「雷神」が発表されたが、このうち「極2」はAndroid 7.0端末となる。加えて、既存機種である「麗(REI)」もAndroid 7.0へのアップグレードが発表された。時期は2017年春頃となる予定。

今回発表の新端末としては、まずモバイルルーターの「ARIA 2」。SIMフリーかつ、ドコモ、au、ソフトバンク、ワイモバイル、UQ WiMAX 2+と、主要キャリアすべてに対応しているほか、連続17時間通信可能なバッテリー持続時間(バッテリーは交換可能)、QRコードによる簡単な接続が特徴となっている。

本体には傷防止のためのシリコンカバーが付属する。合体させると見た目よりも厚みがあり、ちょっと大きく感じられる

サポートするキャリアを問わない懐の広さが魅力の一つ。FDD-LTEもTDD-LTEもサポートするが、日本の全キャリアの全チャンネルをカバーしているわけではない

もうひとつ、同社のローエンド「Priori」シリーズ最新作の「Priori 4」は、4000mAhの大容量バッテリーを搭載したほか、ジャイロセンサーも内蔵し、端末の傾きや加速度を利用したアプリも利用できるようになった。本体は6色だが、6色のパネルがすべて付属しており、その日の気分で色を変えられる点もユニーク。性能的にはミドルレンジのやや下よりという感じだが、あまりヘビーなゲームなどでなければストレスを感じることは少ないだろう。価格は14,800円と安く、SIMフリー端末の入門機としてや、あまりスマートフォンを使わない家族に使わせる端末としても最適だろう。

5インチ液晶ということで大型の端末に慣れた手には一回り小さく、取り回ししやすいように感じられる

背面カバーは爪などで簡単に外れるようになっており、気分に合わせて6色から自由に選べる

性能的には典型的なミドルレンジ端末。バッテリーが大容量なのは魅力的だ

10月に発表済みだった「極2」と「雷神」についても展示されていたが、特に大きな変更はなかったようなので割愛する。

端末の残額が要らないってどういうこと?

最後に料金プランについての発表だ。10月の発表ではSIM契約時の手数料が299円で済む「全プラン対応パック」が登場したほか、パケットの繰越や追加購入、大容量パケットのプラン、特定アプリの通信料を無料とする「パケット無料サービス」の対象拡大、5分間までの通話が何度でも定額になる「だれでもカケホ」などが発表済みだったが、この日発表されたのは、こうしたサービスをすべてセットにした「スーマトコミコミ」(10月にスタートした「かえホーダイ」からのリニューアル)。要するに端末代と音声通話、データ通信料がひとつにまとまったパック料金の登場だ。通信プランは定額または299円からの従量制が選択できるが、定額プランであれば主要なSNSのパケット利用料が無料になり、誰とでも5分以内の通話が無料で行えることになる。

ここまでであれば楽天モバイルなど競合他社にも近いサービスはあるが、FREETELならではのサービスとして機種変更プログラム「とりかえ~る」がある。これは2年縛りの間、半年に1回ずつ機種変更が行え、その際は残金を支払うことなく機種変できるというサービス。このサービス自体は「かえホーダイ」でスタート済みだったが、かえホーダイでは古いほうの端末が故障・破損した場合は交換できなかった。

しかし「スマートコミコミ」では、最初に購入した端末が故障した場合でも、1年経てば機種変更できる。そして、故障した古い端末は返却する必要がなく、購入者の手元に残るという。さらに、現時点ではFREETEL製端末だけが対象なのだが、来年にはFREETELが選別した、という但し書き付きながら、他社の端末でも同様に「とりかえ~る」の対象になるのだという。

壇上でも「リースではない」と明言していたため、単純に端末代が半額になる、ということらしい(1年で故障時の機種変更した場合)

他社端末も対象にするというのは正直驚きだったが、端末メーカーならではのサービスであり、容易に他社が真似することのできないサービスと言えるだろう。比較的シンプルな(リファレンスに近い)端末が多いFREETELならではのサービスだとも言える。端末を色々取り替えてみたいユーザーにとってはいうことのないサービスだ。

MVNOは料金競争からサービス、サポートなど質の競争へと変化しつつあるが、FREETELはMNOにも難しいサービスを次々と導入して市場を賑わせている。現在市場では7~8位前後のシェアにある同社だが、こうした新サービスにより、上位のライバルと戦うための武器が揃ってきたように思える。こうした新サービスが市場に受け入れられるかどうか、また来年以降の業界地図がどう書き換わっていくのかが楽しみだ。