選手には「SNSマナー講座」で最低限のルールをレクチャー

選手個人のTwitterも注目度は非常に高く、フォロワー数がそれを物語る。エースの棚橋弘至選手(@tanahashi1_100)は17万超、「スイーツ真壁」としてテレビ出演も目立つ真壁刀義選手(@GBH_makabe)は11万超、4月に第64代IWGPヘビー級王者(6月に防衛失敗)となって以降、人気急上昇中の内藤哲也選手(@s_d_naito)は7万超だ。

初期の頃、棚橋選手や中邑真輔選手(2016年1月に退団後、WWEへ移籍)など、Twitterを活用し情報発信を積極的に行う選手は数名だったが、全社的な取り組みがスタートしてから、多数のレスラーがTwitterを活用するようになった。Twitter黎明期には「◯万フォロワーを達成したら賞金を◯◯円出す」と木谷オーナーが宣言したこともあったという。

当然、選手はやる気になるが、いざ積極的に情報発信を始めても、炎上に結びついては意味がない。しかし、選手全員がネットリテラシーを持っているとは限らない。そこで、炎上などを防ぐ対策として、スポーツ・インターネット分野に詳しい弁護士を招き、選手に向けたネット上のマナー講座を行ったという。

「とはいえ、運用ルールを作って厳しく管理しようとすると、選手のTwitterがつまらないものになってしまいます。ある意味、無自覚で素の部分もファンの方から見ると面白いわけです。会社の公式Twitterでは“情報”を、選手個人のTwitterでは面白さを……という風に、両方をフォローしていただくと新日本プロレスの世界観が伝わると思います」(真下氏)

現時点のゴールは「大会会場を満員にすること」

会社・選手のTwitter含め、あらゆる情報発信の先に見据えるのは、「興行を観にきてもらうこと」にある。有料動画サイト(新日本プロレスワールド)など課金サイトの収益も今後の大きな課題だが、プロレスは原則、興行、生の大会を観にきてもらうことで、ビジネスとして成り立つものだ。そのため、チケット販売については、とりわけ意識的、戦略的にTwitterでも情報を発信している。

「投稿時間はピークタイムとされるお昼休みの昼12時~、夜7~11時くらいの間をある程度は意識しています。また、当日券のある大会は前日、当日朝、販売1時間前など、何度も告知しています。たまに『同じ情報が多い』といったご意見もいただきますし、また、新日本プロレスワールドの会員増加や海外戦略など、私たちが目指すべきゴールはたくさんありますが、現在の新日本プロレスの大きな基盤となっているのは大会です。ですから『現時点のゴールは?』と聞かれたら『どの会場もお客さまでいっぱいにすること』と答えます。それにより、お客さま・選手共に気持ちが上がりますし、SOLD OUTになるくらい盛り上がると、必ず次の興行のプロモーションにもつながりますから」(真下氏)

根底には「一つひとつの大会を盛り上げたい」という強い思いがある。真下氏がいう「祭り感」を作ることや、日々更新するニュース記事からは出ないライブ感は、現場(大会)ならではのものだ。そのため、新日本プロレスでは2年ほど前から、大会に関するツイートをリアルタイムで行うようになった。

「会社がWWE(アメリカのプロレス団体)のビッグマッチを研修で観に行かせてくれたことがあり、現地でWWEのSNSをスマホで追いながら、試合を観戦していました。すると、タイムラインにひっきりなしに情報が流れ、ここまで出していいのかという驚きがありました。ネタバレに敏感なファンもいるプロレス界において、私たちが躊躇していたような情報も余すことなく出しており、それに触れ、自分たちも考え方を変えました」(真下氏)

以降、大会中リアルタイムで公式Webサイトにアップした写真を、間を開けずTwitter上で公開するようになった。ツイート内にはスマホサイトに誘導するURLを入れ、大会の情報を上手く活用しながら、課金ファンも増やし、次の大会にも興味を持ってもらう戦略だ。盛り上げ感を出すためにハッシュタグを活用したり、ファンの声をリツイートしたりすることも怠らない。

さらに、この7月には、海外向け戦略の一環として、初めての英語専用の公式アカウント、njpw_global( @njpwglobal)を立ち上げた。こちらはバイリンガルのスタッフが運用に携わっている。

最後に同氏は近々の目標について、「10月10日(月・祝)には『KING OF PRO-WRESTLING』を開催します。会場となる両国国技館を超満員にできるように、これまで同様、丁寧な情報発信をしていきたいと思います」と語った。