Pepperの進化を早めるか - 懸念はセキュリティ

同社プロダクト本部の蓮実一隆本部長からは、Pepperを使ったデモがいくつか紹介された。

蓮実本部長によるデモ

まずは、Googleの簡易VRゴーグル「Cardboard」を使ったテレプレゼンスのデモ。Cardboard内のスマートフォンには、Pepper頭部のカメラからの映像が表示されている。Cardboardの向きに応じて、Pepperが頭の向きを変えるようになっているので、装着者がまるでPepperになったような感覚が味わえるというものだ。

テレプレゼンスのデモ。蓮実本部長が手にしているのが「Cardboard」

CardboardはPepper仕様の特別製。Pepperが見ている世界を体験できる

このデモでは、ソフトバンクグループのアスラテックが開発した「VRcon for Pepper」が使われている。VRcon for Pepperは、Pepper向けの遠隔操作システム。PCやスマートフォン/タブレットなどから、インターネット経由でPepperを動かしたり、音声を再生するようなことが可能だ。

もう1つは「ハンドイリュージョン」。これは、Pepperが人間のハンドサインを認識して、リアクションを返すアプリだ。人によって手の大きさや形はさまざまだが、Googleの機械学習ライブラリ「TensorFlow」で1万6000以上のサンプル画像から学習しており、誰の手であっても精度良く認識が行える。

ハンドイリュージョンのデモ。Pepperがハンドサインを認識している

画像認識により、これらのハンドサインを高精度に理解できるという

これらは必ずしもAndroidでなければ不可能というわけではないが、今回、PepperがAndroidに対応したことで、より連携しやすい環境が整ったと言えるだろう。Androidには、大勢の開発者と、優れたツールがある。今後、どんなアプリが生まれるのか、蓮実本部長も想像が付かないようだが、「AndroidがターボになってPepperの進化が早まるのでは」と期待した。

ただその一方で、Androidへの対応は、セキュリティ的な観点からは懸念も残る。Pepper用アプリの品質は誰が保証するのか。もし悪意のある開発者が作ったアプリをインストールしてしまった場合、スマートフォンであれば個人情報を抜かれるくらいで済むだろうが(それはそれで深刻だが)、これがロボットになると、最悪、何かを壊すようなことも可能になるかもしれない。

AndroidはiOSほど審査が厳しくないと言われている。その自由度の高さがAndroidの特徴の1つではあるが、物理的な動きを伴うロボットでは、より安全性への配慮が求められるだろう。蓮実本部長は「基本的にはAndroidと同じモデルになる」とコメントしていたが、ソフトバンクによる品質審査を通ったアプリには"公式認証"を与えるなど、何らかの対策は必要になるのではないだろうか。

アプリ例(ゾウのマネ)

アプリ例(Pepperが挨拶)