勘違いその4:「テレワーク」は難しい

「実際、テレワークを導入済みの企業でも、さまざまな課題があります」と田澤氏は話す。

企業からは「在宅でできる仕事が足りない」といった声や、管理職からは「部下がデスクにいないことによって、電話受付など、自分の仕事が増える」といった声、同僚の社員からは「子育て中の人だけ実施できて不公平」といった声があがっているという。また、在宅勤務をしている社員からも、「在宅勤務をしたら『出世をあきらめたのか』と言われた」「肩身が狭い。さぼっていると思われるかもしれないので、ついつい仕事をしすぎてしまう」といった声が寄せられている。

このような問題の背景には「在宅でできる仕事は限られている」という考えを持たれていることを、田澤氏は指摘する。

「"テレワークは仕事が限られる"という概念を変え、"テレワークでもできるように仕事のやり方を変える"ことが必要。そうでないと、これからテレワークをしないといけない社員が増えていく中、生産性は上がらなくなります」(田澤氏)

これまでは、「一人でやった方がはかどる仕事」や「切り分けて持って帰れる仕事」「重要なデータがない仕事」などが、テレワークでの仕事として選ばれることが多かったが、IT・クラウドを利用することによって、「いつもの仕事がどこでもできるようになる」と田澤氏は言う。

「なぜ会社に行くのか? その理由は、会社に仕事道具や仕事仲間があるから。この会社に行く理由をクラウド上に置いておけば、どこからでも使うことができるようになります」(田澤氏)

クラウド上で仕事道具が利用でき、社員ともコミュニケーションが取れるような仕組みにすることが必要

また、仕事の仕方もこれまでと変えていく必要があるという。例えば営業職の場合、情報収集・資料作成・会議・顧客訪問・報告書作成といった業務があるとする。「情報収集」「資料作成」「報告書作成」などは、情報伝達をIT化し、資料作成のための情報をデジタル化することによって、会社にいなくても業務を行うことができるだろう。「会議」についても、WEB会議化することによって、どこからでも参加できるような状態にすることができる。

さらに、同じような職種の社員が、在宅勤務でないと働けないような状況になってしまった場合、「会議」や「顧客訪問」以外の業務を在宅で行ってもらい、その分担当できる人が「会議」「顧客訪問」を行うなど、業務を分担をすることによって、これまでは退職しなければいけなかった社員の雇用を継続でき、さらに個人の頭の中にあった情報を、見える化・共有化できるようになる。「テレワークは企業を強くする」と田澤氏は言う。

業務を分担し、見える化・共有化することによって、強い組織づくりにつながる

田澤氏は普段、「バーチャルオフィス」を利用して、社員とコミュニケーションを取っているという。同じ空間にいなくても、このバーチャルなオフィスの中で、社員それぞれが何をしているのか、わかるような状況になっている。顔を見て話すことや、チャットで話しかけることができるなど、離れていてもコミュニケーションに困ることはないという。

バーチャルオフィスの仕組み

複数人で会議をすることも可能

また、テレワークマネジメントでは、「家にいるとさぼってしまうのではないか」といった、経営者の不安を解消するような、在籍管理システム「Fチェア」を提供している。

同システムは、在宅勤務者が着席/退席を選んで、現在の状態を知らせることができる。細切れの時間を合計して、その日の在籍時間を集計することも可能だ。

細切れの勤務時間も管理

「でも、自己申告だと正しく着席/退席を押さない人もいるのでは…」といった懸念に対しては、着席中の人のデスクトップ画面を指定した回数、ランダムにキャプチャし、管理者が一覧で確認できる機能も搭載されている。

「こうしたツールを在宅勤務者は嫌がるかと思いきや、逆でした。自分が仕事をしていることを上司に伝えることができるため、安心して在宅勤務ができると言っています」(田澤氏)

しっかり管理することで、在宅勤務者のモチベーションを維持することにもつながる

グループウェアやストレージなど、現在多くの無料や低価格のツール・システムがあり、テレワーク環境をつくりやすくなっている。しかし、「システムやツール、制度だけではなく、いつもの仕事を見直すことが、テレワークには重要です」と田澤氏は言う。

少子高齢化社会に突入している日本では、これまでと同じ働き方を続けていくことは、もはや現実的ではなくなってきている。働き方の選択肢を増やすことが、喫緊の課題となっていることを認識しなければいけない。