ソフトバンク傘下で米携帯キャリアのSprintは今年2015年11月6日に同社が運営するWiMAXサービスを終了し、その帯域をTD-LTEの設備に順次入れ替えていく計画だが、これに反対する米国の2つの非営利組織(NPO)が計画阻止に向けた訴えを起こして話題になっている。2つのNPOは低所得者や公共機関向けのブロードバンド接続やホットスポットサービスをSprintのWiMAXネットワークを介して提供しており、停波によりサービスを利用不可能になるユーザーが30万人ほど出現すると訴えている。

同件はThe Vergeが報じている。訴訟を起こした2つのNPOは「Mobile Beacon」と「Mobile Citizen」で、もともとはSprintに吸収される前のClearwireとの契約に基づいてWiMAXサービスを利用していたもので、米連邦通信委員会(FCC)により教育目的で分配が行われていた周波数帯域を、NPO側がClearwireのエリア拡大に協力する形で貸与する見返りに利用料の受け取りのほか、ネットワークや機器の利用が許可されていた経緯があるという。

Mobile BeaconとMobile Citizenのサイトトップでは、SprintのWiMAX停波反対を訴えている

だが原告側の訴えによれば、Sprintによる2013年のClearwire完全子会社化後、顕著な帯域制限が行われるなど、利用に支障をきたす現象がみられたという。例えば、NPOが提供するある施設では月あたり40~43GB程度の通信利用が平均して行われていたものの、制限開始後は一般ユーザーと同等の月あたり6GBのデータ消費量超過で256kbpsの帯域制限がかかるようになったという。このほか、LTE移管に際してサービス利用に必要なホットスポットの整備が行われていない地域があったり、必要な機器の利用を申し出ても在庫がないと断られるなどの問題があったという。

現在Sprintは旧Nextelから引き継いだ800MHz (850MHz)のiDEN帯域と、同社が以前から持っていた1.9GHz帯の2つを用いてFDDベースのLTEネットワークを拡張中だ。一方で、旧WiMAXサービスの運用を続けている2.5GHz帯を今年11月をもってTD-LTEベースのものへと移行しようとしており、ブロードバンド接続を希望するユーザーは必然的にFDD-LTEへと移らなければならなくなる。前述2つのNPOの訴えは、この過程で発生するカバーエリアの差異の問題や他の一般ユーザーとの間のサービス品質の平準化、そして必要な(ホットスポット装置などの)機器の不足に由来するものとなる。将来的には移管が完了した2.5GHz帯のTD-LTEを含めてニーズを吸収していく形になるとみられるが、この移行期における典型的なトラブルにあたると考えられる。一方でWiMAX停波とTD-LTE移行が完了しなければSprint全体のサービス品質向上は望めないわけで、非常に難しい問題だろう。

(記事提供: マイナビニュース・携帯ch)