「PaaS&従量課金」だから築ける - SIerとユーザーのWin-Win

もちろん、PaaSの場合、SaaSに比して目的のシステムを構築・導入する際の難度は高まる。ただし、Commerble EC PaaSの場合、認定SIerがシステムのインテグレーションを担当するというビジネス・モデルを採用している。

2015年2月時点では、Commerble EC PaaSのイングレーションは、シグマコンサルティングとクロスワープの2社が中心に担っているが、Commerble EC PaaSを利用した構築を検討するSIerも増えてきているようだ。

「ECサイト構築のイングレーションには、パッケージソフトウェアがよく利用されるのですが、大抵の場合、そうしたパッケージのカスタマイズはSIerには行えず、開発元に依頼せざるをえない状況にあるようです。結果、SIerは、ECサイト自体ではさしたる収益は稼げず、また、パッケージベンダーのエンジニアが優秀でない場合、プロジェクトに支障をきたし、いわゆる炎上案件に陥ることも間々あるとの話です。Commerble EC PaaSなら、そのような心配はなく、その点でこのサービスに対する期待感が高まっているのです」(橋本氏)

さらに、Commerble EC PaaSの場合、SIerやユーザーの経済的なメリットを生む重要な特徴がある。それは、サービス課金の仕組みとして、トランザクション・ベースの従量課金制が採用されていることだ。

具体的には、サービス利用の初期費用はかからず、ECサイト上で1つの受注処理が発生するごとに、現状200円のフィーが発生する格好だ。しかも、Commerble EC PaaSの導入企業が増え、トランザクションが増えることで「規模の経済」の原理が働く。

山崎氏は、これにより、課金単価を200円から180円、150円へと引き下げられるようになり、実際にそうするつもりだと述べる。

これはつまり、Commerble EC PaaSユーザーが増え、それぞれのEC売上げが増えれば増えるほど、commerble社の収益がアップし、同時にユーザーの利も膨らんでいくことを意味する。もちろん、Commerble EC PaaSのユーザー数の増大は、SIerの案件増と同義だ。橋本氏と山崎氏は、こうしたWin-Winなエコ・システムの形成こそが、クラウドサービスで目指すべきものだと力説する。

エキスパートの知を結集

Commerble EC PaaSでは、ECサイトの構築・運用に必要とされている道具立てを網羅的に提供している。つまり、標準的なAPIを通じて、受注管理から仮予約管理、商品・在庫管理、顧客(サイト会員管理)、販促管理、コンテンツ管理(CMS)、バッチ処理管理などの機能を持ったサイトが開発できるわけだ。もちろん、バックエンドの基幹システムとの連携や多店舗サイト連携、コーセンター連携、POS・O2O連携などの機能も備えている。

Commerble EC PaaSの機能概要

こうしたCommerble EC PaaSの活用によって、例えば、ユーザーの個別要件に応じた「ID連携」「ユーザープロファイリング」「検索機能」を独自に実装したり、サイトで扱う商品点数の上限を広げたりすることも容易になる。

また、Commerble EC PaaSは、サービス提供のプラットフォームとして、AzureとAWS(Amazon Web Services)の双方を活用。コアのプラットフォームとしてAzureを活用しつつ、DNSやロードバランサーにAWSを用いるといった「いいとこ取りの構成」だと橋本氏は説明する。そのため、Commerble EC PaaSでは、大量のトランザクションにも十分耐えうる性能と拡張性が担保されているほか、可用性のレベルも高いのだという。

「クロスワープはEC業界で長く経験を積み、SaaSのプラットフォームとしてAWSを使い込んできました。一方の橋本は、Azureのエキスパートでミッションクリティカルなクラウドシステムの開発にも精通している。両者のスキル・ノウハウの融合によって、Commerble EC PaaSは、機能・性能・信頼性のあらゆる面で申し分のないパフォーマンスを発揮していると自負しています」(山崎氏)

2014年8月発表の経済産業省の調査によれば、BtoC型のEC市場規模は2013年で前年比17.4%増の11.2兆円へと成長。消費市場のEC化率も前年比6ポイント増の3.7%に達しているという。

この成長市場では競争も激しく、ECサイトの運営側も、また、それに対して製品・サービスを提供する側も、いかに早く新たなアイデアをかたちにし、顧客を利するかが勝負となっている。そのため、B2C商材を扱う大手企業の間では、自社の開発体制を強化し、EC・顧客サービスの開発力を増す動きも活発化しているようだ。

そんな市場にあって、業界特化型PaaSと従量課金という新たなコンセプトを国内他社に先駆けてかたちにしたCommerble――その今後に注目が集まる。