ヒートパイプで熱を運ぶ冷却

高発熱の部品からヒートパイプで熱を運び出し、処理しやすい場所に水や空気との熱交換器を設けるという方法を取るシステムもある。

HPのHPC向けのサーバである「Apollo 8000」は、次の写真に見られるように、ヒートパイプでCPUなどの熱を運び出す。そして、写真の左側に写っているブレードの側面に見られるように、ヒートパイプの端を露出させた構造になっている。ラックに挿入すると、この露出部分が水冷のレールに接触し、熱を冷却水に伝えるという構造になっている。

ヒートパイプの中は、発熱サイドで冷媒の温度が上がって蒸発し、水冷のレールに接触している部分で液に戻るという2相の冷却システムとなっており、その熱を2次冷却水に伝えるという冷却システムになっている。その点では、構造は大きく異なるが、原理的にはICEOTOPEのものと同じである。

また、パネル展示だけで実物は無かったが、Calyosという会社が、「Vapor Chamber」という製品を展示していた。ASETEKやCoolITのコールドプレートのような形状のVapor Chamberをプラスチックや銅パイプで接続してヒートパイプを構成して熱を運び出す。しかし、一般にヒートパイプは銅系の合金のパイプで、封じ切りで作られており、この構造で蒸気が漏れないのかが気になった。

HPのAppllo 8000のブレード。パイプはヒートパイプで、左側のブレードで見えるように側面に露出していて、水冷のレールに接触して放熱する

Apollo 8000のキャビネットの前面

Apollo 8000のラックの前面。下半分

Apllo 8000のラックの裏面。下半分

ヒートパイプで熱を運ぶCalyosの製品の展示パネル

この記事で紹介したように、SC14では高性能の冷却システムを使用するシステムが数多く展示された。サーバやスパコンのエネルギー効率は改善されていくが、必要な性能の増大の方がスピードが速く、発熱量は増える方向にある。また、設置面積を小さくするため、発熱の密度はどんどん高まっており、高性能の冷却システムの必要性が高まっていることが、この背景にある。

そして、この記事で紹介したように、色々な冷却方式が使われており、現在は、乱立とも言える状態である。業界として経験を積むにつれて、将来的には、使い勝手のよい幾つかの方式に集約して行くのではないかと思われる。