軽量化を実現する上で、開発チームが大きな意思決定をしたのが、バッテリに18650リチウムイオンバッテリを採用することだった。

直径18mmの18650リチウムイオンバッテリを使用すれば、バッテリのカバー部を含めて20mmの厚みが必要になる。ここに液晶ディスプレイを組み合わせれば、Ultrabookの仕様からは外れることになる。

Ultrabookの薄さは、23mm以下と規定されている。仮に、その薄さを実現するために、バッテリ部を本体後側に置けば、その分フットプリントが大きくなり、重量増につながる。

もちろん、リチウムポリマー電池を採用すれば、薄さは実現できた。だが、「18650のバッテリ密度が高いこと、上手く載れば駆動時間と軽量化を同時に実現できることという点で、リチウムポリマー電池の採用は見送った」(田中主任技師)という。

CF-LX3で採用している、新開発となる高密度の18650リチウムイオンバッテリ

だが、懸念材料があった。18650リチウムイオンバッテリを採用した場合、CF-LX3はUltrabookではなくなる。しかし、1年後にCF-LX3を発売した時、ノートPC市場は総じてUltrabook中心になっている可能性もあった。

「開発をスタートしたのが約1年前。もし、1年後のCF-LX3発売時点で、ノートPC市場がUltrabook一色になっていた際には、CF-LX3の競争力が失われるのは明らか。しかし、その時点で方向性を決めなくては開発が進まない。また、途中からUltrabookへ後戻りすることもできない。Ultrabookにこだわらない仕様で開発を進めるのかどうかが、大きな決断だった」(安政主任技師)と、1年前を振り返る。

結果として、Ultrabookとしての製品化を目指さなかったのは、軽量化を最優先し、長時間バッテリ駆動を目指すというビジネスモバイルに求められる重要な要素を優先したからだ。

「Ultrabookにするよりも、法人を主体とした用途での使い勝手を追求し、それをアピールすることを優先した」。ここにCF-LX3の価値があるといえよう。

とはいえ、本体の高さは24.5mm。SXシリーズの25.4mmに比べても0.9mmも薄型化している。Ultrabookとしての道を選ばなかったものの、その点での開発チームの努力は大きな評価に値する。

この厚みは、2mmのキーストロークを実現することにもつながり、Ultrabookにはない、使いやすい打鍵感を実現した。19mmのキーピッチや、Let'snoteシリーズでは定番化したリーフ型のキートップも操作性を高めることに貢献している。

キーストロークは2mmと、通常のノートPCとしては深い仕様

液晶ディスプレイにはタッチパネルは搭載していないが、Windows 8環境に適した四角い大型タッチパッドを採用しているのも、先行したAXシリーズでのWindows 8対応への経験を生かしたものだ。

話をバッテリに戻すが、実際、18650リチウムイオンバッテリの採用は、バッテリ駆動時間の長時間化で大きな効果をもたらした。

第4世代インテル Core vProプロセッサファミリーを採用したことでの省電力化に加えて、3550mAの容量を実現したバッテリを初めてPCに採用。「当初は20時間を超えるとは思っていなかった」(安政主任技師)というバッテリ駆動時間はバッテリパック(S)装着時で最大11.5時間となり、6セルのバッテリパック装着時には最大22時間という長時間駆動を実現した。

省電力化では、ソフトウェアも大きく貢献している。「ドライバの品質検証をパナソニック独自に行い、これまでの技術的な蓄積も活用しながら、省電力化につながるものを採用していった」(パナソニック AVCネットワーク社ITプロダクツ事業部テクノロジーセンターソフト設計第二チーム・尾下功主任技師)という。  

パナソニック AVCネットワーク社ITプロダクツ事業部テクノロジーセンターソフト設計第二チーム・尾下功主任技師

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