世界への一歩は、夏休みの自由研究から始まっていた

今回のISEFには、日本から「ジャパン・サイエンス&エンジニアリング・チャレンジ」(朝日新聞社 主催)と「日本学生科学賞」(読売新聞社 主催)の優秀賞者たち、6プロジェクト計10人が参加した。このうち、西田さんの受賞のほか、新潟県立柏崎翔洋中等教育学校(6年生)南波紀昭さんが植物科学部門4位と米国園芸学会賞2位を、埼玉県立浦和第一女子高等学校(3年生)の仲田穂子さんが分子生物学部門4位を獲得した。

「ゾウリムシの細胞内消化」の研究で、分子生物学部門4位を受賞した仲田穂子さんは、審査後の一般公開時に浴衣を着て日本をアピール。地元の高校生やアジアの女子高生から囲まれて、研究内容以外の日本のことについて、いろいろと質問を受けていた

「ガガブタの研究」で評価を受けた南波さんに話を聞いた。

研究テーマのそもそものきっかけは小学生時代に遡る。幼少の頃より生き物好きだった南波さんは、タニシやかたつむりなど淡水貝に興味を持つようになり、ある夏休みに標本作成を行った。そこで博物館に話を聞きに行ったことがきっかけとなり、新潟県内で貝類研究を行う「貝友会」に、小学生ながら所属することになる。そして、中学生の頃には、大学院生などと肩を並べ、レッドデータブック(※)に掲載されている新潟県の絶滅危惧種である浮葉植物やガガブタの調査を行うようになったそうだ。

「ガガブタの研究」の研究で植物科学部門4位/米国園芸学会賞 2 位を受賞した南波紀昭さん。葉や茎から二次的に発生する不定芽や不定根を調べ、これらは葉脈を含む切断片の片側からのみ極性的に起こることや、形成促進にいくつかの植物ホルモンが関係していることを突き止めた。研究成果は、ガガブタの増殖に役立つものと期待される

南波さんにISEFへの参加について訊ねると、「一生懸命頑張ってきたことが他人に認めてもらえたことがとてもうれしい。プレゼンでは上手く説明できなかった部分もあって、すべてを出し切れなかった点が残念に思う。でも、この場に来てみないと分からなかった本当にたくさんのことを学んだ」と話していた。

そして、次のような興味深いコメントもしていた。「日本だけにとらわれずに、世界の高校生たちがどのような研究を行っているのかを見ることができ、とてもいい経験になりました。皆、幅広い目線を持って研究をしている、世界の壁は高いなと感じた。日本との大きな違いを感じたのは、世界の高校生たちは、大学と連携して研究することも珍しくなく、研究機材などもいい。日本(コンクール)では、高校生らしい作品や研究が評価され、それ以上のことをやると減点されることもある。そういった枠にとらわれないで、年齢に関係なく研究をどんどん突き詰めて行ける環境作りやサポート体制が、日本でも少し拡がっていくといいなと思う」。

日本代表チーム。今回受賞を逃したファイナリストたちも皆全力を尽くした。研究テーマ詳細はインテルのISEF2010サイトで!

さて、世界レベルでトップとなった最優秀賞受賞者は、どのような研究を行ったのか。日本からの参加内容を見ても、大変ハイレベルなプロジェクト内容だと感じるのだが、1位、2位を獲得した学生たちとの差は何だったのだろう。次回で触れることにする。(研究内容についてのリリースはこちら)

※環境省が発行絶滅のおそれのある野生生物について記載したデータブック