Radeon HD 5870

さて、それでは現物をご紹介したい。一見すると、最近のGeForce GTX 280シリーズを彷彿とさせるフルカバードの構造である(Photo23)。ただ背面もしっかりカバーされているのはちょっと異なる部分か(Photo24)。2スロットサイズであるが、DVIコネクタ×2とHDMI/DisplayPortが上下に分配される構造である(Photo25)。反対側には、電源レギュレータ部の排気口が覗く格好だ(Photo26)。上面にはCrossFireのコネクタと、6P電源×2が配される(Photo27)。ちなみにファンはタグテッドタイプで、騒音はそれほど気にならなかった(Photo28)。

Photo23: 表面がつや消しブラックな事と、赤いストライプが入っている事でGeForce系とは雰囲気が違うが、構造的には良く似ている。

Photo24: リテンション部を避けるようにカバーされており、この結果背面もほぼフラットになっているのが特徴的。積み重ねる時に引っかかったりしなくて便利、なんていう感想を抱くのは筆者だけかもしれない。

Photo25: 排気口が狭いのがちょっと気になるところ。フル稼働時にはかなりの温風が吹きだすのは従来と変わらず。

Photo26: GeForce系のそっけない「穴」に比べると造形が凝っている感はあるが、別に流体的にどうこうという話ではなく単なる意匠であろう。OEMベンダーから製品が出てくるときには、また別の形になってそうだ。

Photo27: 上面の端にも排気口が用意されており、ここからもそれなりに温風が。

Photo28: ファンそのものは、Radeon HD 4890のリファレンスと同等のものの様だ。Radeon HD 4870のものよりは、若干ファンの寸法が大きめだった。

Photo23では敢えて対象物を置かずに撮影したのだが、実際に見ると異様に長い。試しにRadeon HD 4890のリファレンスと並べてみると、ご覧の有様(Photo29)。重ねてみるとこれが良くわかる(Photo30)。やはり長さがかなりあることで色々と不評のGeForce GTX 285とか295でも、ボードの長さは26.5cm(実測値)だから、間違いなく現状では一番デカいカードである。

Photo29: 実測値でRadeon HD 4890が24cm(ブラケット含まず)、Radeon HD 5870が28cm(同)だった。

Photo30: ちなみに28cmというのは基板のサイズであって、実際にはそこに排気口がちょっとは乱しているので、更に数mm長い。

この結果として、マザーボードとの干渉が非常に問題になりやすい。今回はASUSTeKのM4A79T Deluxeを使って評価を行ったが、このマザーボードの場合オンボードのSATAポートと干渉無く装着できるのは、CPUに一番近いPCI Expressスロットのみで、他のスロットに装着すると割りと深刻な問題が発生しそうな状況に陥ってしまった(Photo31,32)。

Photo31: Radeon HD 5870の方がマザーボードより長いので、端にある端子は横向きでないと接続できなくなる。

Photo32: 端のアップ。Radeon HD 5870がフルカバードのため、色んなものに引っかかりやすい。M4A79T Deluxeの場合、横向きのSATAポートが2つ用意されているが、高さがありすぎてこれにすら引っかかる状況。通常の上向きSATAポートにケーブルを刺すと、どうにも逃げられない。

加えて言えば、フルカバードのためもあってか、重量もそれなりである。今回ベンチマークに使ったグラフィックスカードの重量を実際に測定してみると、

Radeon HD 4870 - 667g
Radeon HD 4890 - 823g
Radeon HD 5870 - 947g
GeForce GTX 285 - 824g
GeForce GTX 295 - 969g

といったところ。1Kgの大台も目の前といった感じで、ケースでの装着時には気をつけたほうがいい重さになっている(というか、Single GPUでこれなんだから、Hemlockは間違いなく1Kgオーバーなのだろう)。サイズと重量の両方の点で注意が必要だ(特にマザーボード上のコネクタの配置を良く確認しておかないと、買ったは良いが刺さらなかったなんて事になりかねない。

今回はRadeon HD 5850は入手できなかったのだが、AMDから既に製品の写真が公開されている(Photo33)。このアングルだと良くわからないが、上から見た写真を比較するとこの通り(Photo34)。重ね合わせてみると(Photo35)、長さが4cmほど短くなっている様に思われる。おそらくRadeon HD 5850は、従来のRadeon HD 4800シリーズとほぼ同じサイズに収まっているようだ。配線の問題が気になる向きは、こちらを狙うほうが吉かもしれない。

Photo33: 一見するとRadeon HD 5870と殆ど変わらない。というか、遂に1slot厚は放棄したようだ。仕方はないのだろうが、ちょっと残念。もっともOEMベンダーの中には無理やり1slot厚の製品を出すところもありそうだが。

Photo34: これはAMDの提供する製品写真を、縮尺をあわせて並べたもの。Radeon HD 5850がかなり現実的なサイズに。

Photo35: これはPhoto34を変形して、2枚の写真を重ね合わせただけである。

ところで冒頭でちょっと触れたEyefinityだが、これを搭載した最初の製品がRadeon HD 5870 Eyefinity^6 Edition(Photo36)である。開発コード名はTrillianだそうだが、Photo01のデモはまさしくこのカードで行われた(Photo37)。通常のRadeon HD 5870との違いは、このバックパネル(Photo38)の他、補助電源コネクタが6P+8Pになっている点だ(Photo39)。当然基板もそれに応じて若干異なるものとなっている(Photo40)。

Photo36: ベースはRadeon HD 5870だが、DVIやHDMIは廃し、Mini DisplayPortを6個装備している。

Photo37: Mini DisplayPortのコネクタそのものは標準化されたものだが、まだ余り一般的でないためか、標準のDisplay Port Connectorに変換して繋いでいるのが判る。ちなみにDisplayPortのバージョンは1.1だそうだが、Daisy Chainを使わずに6ポート分を用意するのは、2,560×1,600ピクセルでDaisy Chainを使うと現状では信号伝達速度が間に合わないからだそうだ。

Photo38: 排気口が大きくなっているが、これは単にレイアウト的にゆとりができたからだそうで。それなら通常のDisplayPortコネクタにしてくれればよさそうな気もするが、ボード上での部品配置が難しくなりすぎるそうで。

Photo39: ということは消費電力が増えたために6P×2の構成で持たなくなったと考えられるが、Doven Nekechuk氏(Product Marketing Engineer, Desktop Discrete Graphics Division)によれば「ほんの数W」との事。平均的な消費電力は殆ど変わらないが、6ポート出力でピーク時に225Wを一瞬越える可能性があるというあたりの様だ。

Photo40: これは日本AMDにおける発表会で展示されたEyefinity^6 Editionの基板裏面。当然通常バージョンのものもカバーを外して確認したいところだが、残念ながら許可が下りなかった(借用品なので致し方なし)。もっとも、既に幾つかのサイト(例えばこちら)が公開しているので、そうしたサイトが参考になるかもしれない。

ベンチマーク環境

長い前置きも終わったところで、では実際に結果を見てみたいと思う。今回はRadeon HD 5870に加えてRadeon HD 4870とRadeon HD 4890、更にASUSTeKのENGTX285/HTDI/1GD3(GeForce GTX 285)とLEADTEKのWinFast GTX 295(V2)(GeForce GTX 295)を用意して、比較対象を行ってみた。その他の環境は、表1に示す通りだ。

■表1
CPU Phenom II X4 965
M/B ASUSTeK M4A79T Deluxe
BIOS BIOS 1801
Memory DDR3-1333 CL9 2GB×2
Video ASUSTeK ENGTX285/HTDI/1GD3(GeForce GTX 285)
LEADTEK WinFast GTX 295(V2)
Radeon HD 4870
Radeon HD 4890
Radeon HD 5870
Driver Forceware 190.62 Catalyst 9.9 8.66_RC6_Cypress _Windows_Vista_7_Sep11
HDD HGST DeskStar HDP725050GLA360×2 (RAID0, NTFS)
OS Windows 7 Ultimate 英語版(RTM版)