NHK放送文化研究所は16日、「岐路に立つテレビ」と題したシンポジウムを東京都内で開催した。作家の堺屋太一氏や慶応大学教授の竹中平蔵氏も交え、広告収入の減少やテレビ離れに苦しむテレビ局が、放送と通信の融合の時代をどう生きていくべきかについて討論した。
パネリストは、堺屋氏と竹中氏に加え、北海道テレビ専務取締役の樋泉実氏、TBSメディア総合研究所取締役相談役の前川英樹氏、総務省情報流通行政局長の山川鉄郎氏、NHK専務理事の金田新氏の6人。「テレビ経営」「アナログ停波」「地域・社会貢献」の3つ課題を中心に議論した。
竹中氏「インターネットの登場でテレビの独占崩れた」
シンポジウムの第1部「テレビ局経営は大丈夫か?」で、竹中氏は「(地上デジタル放送への移行など)テレビ局を取り巻く枠組みはできつつある。あとは経営の問題」と指摘。「これまでは電波の独占で生じた超過利潤をコンテンツや文化事業に注ぎ込んできたが、インターネットの登場で独占は崩れた。今こそ必要なのはコンテンツ力を上げること。テレビ局のブランド力を生かすことだ」と訴えた。
また堺屋氏は、海外のテレビと比較し、日本のテレビ局のコンテンツ制作力を「素人(しろうと)芸」と表現。その理由として、東京一極集中によるキー局主義・都道府県別の地方局制度・高コスト体質などを挙げ、「(ネットとの)融合のなかでテレビが高い文化水準を保ち日本の社会に貢献できるかは、非常に深刻な問題」と危惧した。
テレビ局側では、TBSメディア総合研究所の前川氏が「メディア側からいえば告知力、消費者からみれば認知力という点でテレビ媒体は非常に強い。テレビ以外の媒体とどうリンケージすべきか、自ら新たな手法を見つけていくことが重要」と発言。放送外収入については「放送の周辺の部分で付加価値性のあるビジネスするのは当然の戦略」とし、映画制作や赤坂サカスなどのアミューズメント施設を例として挙げ、「特にインターネット系メディアでの番組コンテンツの二次利用は大きな可能性がある」と期待を示した。
地方局の立場から参加した北海道テレビの樋泉氏は、同社の広告外収入について「現在は(全収入の)14%ぐらい。2003年ぐらいから放送外収入が顕在化した。コンテンツの価値の高め方は多岐にわたっており、変化に応じてコンテンツの成熟度を上げていくことが必要」と述べた。
堺屋氏「55年体制でがんじがらめ」とテレビ局批判
テレビ局の経営面の問題では、竹中氏、堺屋氏の両氏がテレビ局の意識の甘さを厳しく指摘。前川氏がテレビ局の経営不振の要因について「経済の要素が一番大きい」と述べたのに対し、竹中氏は「不況のせいではなく構造の問題。(このままでは)テレビ局は構造不況の業種になる」と反論。テレビ局社員の給与についても「やっぱり高い。給与をカットし、そこからでてきた資源をコンテンツ力に注ぐべき」と苦言を呈した。
また、前川氏が「テレビ産業はどれだけ制作能力のある人材が集められるかが大きな課題」、金田氏が「英BBCと比べるとNHKは予算が少ない」などと"言い訳"ともとれるような発言をしたのに対し、堺屋氏は「テレビ局の方の意見を聞いていると金融再編したときの銀行の言い方とそっくり。55年体制でがんじがらめか、頭にカチッとはまりこんでそこから一歩も出てはいけない、と言っているようだ」と痛烈に批判した。