電子行政サービスの拡充、地方自治体のシステム連携が鍵

日本政府は2001年、欧米諸国と比較しIT活用率が低いという指摘を鑑み、日本を最先端のIT国家に成長させることを目指して情報政策を立ち上げた。「e-Japan戦略」がそれだ。それ以降もe-Japan戦略IIやe-Japan重点計画、u-Japan政策などを立ち上げ取り組みを継続している。情報通信技術を活用して公共サービスを向上させ、より効率的な業務の実現を目指す。

情報政策は一定の成果をあげているが、インターネットの普及と一般化にともない現在の公共サービスよりもより進んだ情報通新技術の活用が求められている。しかし実際にサービスを提供する地方自治体内部やほかの地方自治体、企業との連携が難しいうえに管理負担も高く、さらなるサービス拡張が難しいという現実がある。

電子行政サービスをさらに推し進めサービスの向上を実現していくには、地方行政における情報通信技術の連携と管理の簡素化が欠かせない状況にある。プライバシー対策やサービス進展の監視、問題発生時対策のためのモニタリング実現も必要だ。こうした取り組みは地方自治体の担当者レベルで理解し取り組んでいく必要があるため、実施経験や技術ノウハウを現場レベルで共有していくことが欠かせない。

産官学が3年かけて地方行政情報通信技術プラットフォームを開発

総務省は平成17年度から平成19年度までの3年間、前述したように異なる運用ポリシーやアーキテクチャで構成されているサービスを連携するための基盤技術研究開発に取り組んできた。実際に業務を担当したのは情報通信研究機構(NICT)、日立製作所、富士通、日本電気、NTTコミュニケーションズなどで構成される産官学共同組織だ。

同研究開発では複数のシステムを連携するための基盤プラットフォームの設計、検証技術、プライバシー保護管理技術、サービス進展状況把握技術、負荷状況や異常事態などに対処するための監視技術などが検証され、まとめられた。平成20年度となる今年は、この取り組みが実際の行政サービスに適用できるものであるかを最終評価する段階にある。

具体的にはSOAを活用したプラットフォームの提案が同研究開発の成果となる。構成技術はSOAPやBPM、WS-BPEL、XMLなどのオープンスタンダートで構成され、具体的にどういったアーキテクチャを組み上げ相互接続性を実現すればよいか、モニタリングやアクセス管理をどのように実現するかがまとめられている。

基盤となるアーキテクチャがあるのとないのとでは、地方行政におけるシステム開発や運用にも大きく影響してくる。同研究開発が有効なものであると認められた場合、地方行政における積極的な活用が期待されることになる。