3-5年先の問題までを見通して手を打つべき

ソニー生命保険 取締役 執行役員 専務 嶋岡正充氏

ソニー生命保険の嶋岡氏は、同社が開発、基盤構築、維持、管理などの分野から、帳票印刷、ヘルプデスクといった業務に至るまで、幅広い領域に渡り、多数の企業にアウトソーシングしていることを紹介、留意すべき事柄として、委託先の業務特性、強みをよく理解し、自社だけでは不十分なノウハウを補完、吸収していくことを視野に入れた体制を築き、コスト効率の優位性を追求することであるとした。

また、数多くの企業に業務を委託する場合、相手先との関係性の構築、維持も要点となる。委託先とは、緊密な連絡を取り、粘り強く、要求内容を伝達し、時間をかけ、最適な関係を構築、任せきりにはしないこと、などが重要であるとしている。

さらに嶋岡氏はアウトソーシングからの教訓として「オプションを手にして、種を蒔いていくことが最も重要なのではないか。いま、現実に起きている問題だけをみて対処しようとすると、後手に回ることがある。3 - 5年先の問題までを見通して、手を打っていくことが大事だ。さまざまな情報に耳を傾け、深掘りしていくことが大切だろう」と述べた。

場当たり的なアウトソーシングは長期的には効果をもたらさない

ガートナーリサーチ リサーチ バイス プレジデント ヘレン・ハントリー氏

ゼネラルセッションでは、ガートナー リサーチ リサーチ バイスプレジデント ヘレン・ハントリー氏が「戦略的ベンダー管理のベスト・プラクティス」との表題で、アウトソーシングが広がるとともに、今後、1つの企業が、業務を委託する先の企業はさらに増加する傾向にあることから、これらのいわば企業群をどう管理していくべきか、また、その重要性について解説した。

アウトソーシングによる効果を最大化するには、まず、十分な戦略を立てることが肝要であるとハントリー氏は強調する。「そもそも、なぜ、アウトソーシングをするのか。生産性の向上、迅速性を高める、コスト効率性を上げる、オペレーション管理、競争力強化など、さまざまな理由がある。これらのような要因が導入の動機であれば、好ましい」が、しかし、「競合他社がすでに導入しているから、単にIT予算を削減したい、というようなあいまいな理由で、問題解決の意識につながっていなければ、うまくいかない」という。

アウトソーシングの機会が増え、業務を委託する企業の数が多くなると、戦略的ベンダ管理が必要になってくる。IT投資に占める委託費の比率が上昇するなか、投資対効果の明確化が求められるが、統合的な発想なしに、さまざまな業務をあちこちの企業に委託していては、効果は期待できない。ハントリー氏は「委託する企業を分類し、どの企業に何を委託するか精査し、委託したきりにせず、継続的にコミュニケーションをとり、相手先にもメリットのあるような関係を築くことが重要」としている。