アウトソーシングについての最新状況、今後の見通しなどを考察/論議する「アウトソーシング・サミット2008(主催: ガートナー ジャパン)」が都内で開催された。今回は、日本企業のアウトソーシングへのこれまでの取り組みから得られた「成果」と「教訓」をあらためて整理し、これからのソーシングのあるべき姿を探ることを主題としている。

ガートナー ジャパン リサーチ グループ バイスプレジデント 山野井聡氏

初日、冒頭の基調講演には、ガートナー ジャパン リサーチ グループバイスプレジデントの山野井聡氏が「日本企業のソーシング2008: 今だから問う成果と教訓」、ソニー生命保険 取締役執行役員 専務 嶋岡正充氏が「IT課題解決のためのソーシング戦略」と題し、登壇した。

山野井氏は、すでに国内企業のIT予算の43%が委託費で占められていることを紹介、委託の目的としては、人材不足解消、ITコスト削減、高度ITスキル調達などが挙げられているが、「満足度は全体としては高いものの、人材不足解消については不満感が強い」と指摘した。経済産業省などの調査によれば、全体の97%は、IT要員の数、要員のスキルのいずれか、あるいは両方に不足感をもっているという。この3年間で企業の正社員技術者は1万5,000人増えているのにこうした感覚がある。「企業のIT要員数、求められるスキルの補充が泥縄式になっている」(山野井氏)との背景がある。

一方で、IT運用・保守関連コストの点では、10 - 30%未満、10%未満程度は削減ができている、とのガートナーによる調査結果があり、これらの面では、「アウトソーシングは一定の効果をあげている」(同)といえる。しかし、「これらのコストを削減して、それでおしまいではなく、次の一手ができていないのでは」と山野井氏は疑問を呈する。「アウトソーシングにより、IT部門の強化につながっているのかどうか、あるいは、イノベーションの創出といった、戦略的価値を得ているかと考えると、それはできていない」(同)のが実態だ。特に、「新たな事業の創造や、自社で開発したアプリケーションを同じ業界で、流通させるなどのような効果の実現までは未だ発展途上」(同)にあり、戦略化という観点から「アウトソーシングの実効性を再評価すべき時期に来ている」(同)という。