上場企業に内部統制を求める日本版SOX法の施行を前に、すでに専用ツールによる体制構築を終えている企業も多いかもしれない。だが、12月期決算などの理由で体制構築にまだ余裕がある企業にとって大きな味方となるのが、マイクロソフトが提供する作図ツール「Visio」だ。Visioは、単に文書化ができるだけでなく、他のOffice製品との連携が期待でき、スムーズな導入が可能となる。Visioの最新版である「Microsoft Office Visio 2007」の活用法について、マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 Office製品マーケティンググループ シニアプロダクトマネージャの高田修一氏と、同社ソリューションセールス統括本部 Visioグループ エグゼクティブアドバイザーの杉山彰氏にインタビューした。

マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 Office製品マーケティンググループ シニアプロダクトマネージャ 高田修一氏

マイクロソフト ソリューションセールス統括本部 Visioグループ エグゼクティブアドバイザー 杉山彰氏

――「Visio 2007」は内部統制にどのように役立つのでしょうか。

Visioの持つ作図機能を使い、内部統制で最も手間がかかる「文書化」をスムーズに行えるのが特徴です。具体的には、まず、 業務プロセスを可視化する「業務フロー図」をビジュアルに記述することができます。また、ExcelやWordと連携させることも可能なため、Excelで作成した「リスク・コントロール・マトリックス(RCM)」や、Wordで作成した「業務記述書」を業務フロー図と関連付けることもできます。Visioを使えば、これらのいわゆる文書化3点セットの作成が、簡単かつ効率的に行えるのです。

Visioで作成した業務フロー図。リスクの高さ、低さを、赤と濃い青で表現している

業務フロー図はVisioにて、リスク・コントロール・マトリックスはExcelにてそれぞれテンプレートを無償提供しています。VisioとExcelには互換機能があるので、例えば、先に作成した業務フロー図を利用してリスク・コントロール・マトリックスを作成したり、逆に先に作成したリスク・コントロール・マトリックスを利用して業務フロー図を作成したりすることが可能になります。

作成後も、業務フロー図とリスク・コントロール・マトリックスの各データを関連付けて、一方の変更を他方に反映させることが可能です。また、業務フロー図上の図形や図面から、Wordで作った業務記述書にリンクさせることができます。

このように、業務フロー図を作るだけでなく、弊社の他のOffice製品との連携ができるのが、大きな特徴なのです。

Visioを使えば、いわゆる文書化3点セットの作成が簡単かつ効率的に行える

導入教育のしやすさが大きな利点

――テンプレートを無償で提供している狙いは何でしょうか。

2006年から無償で提供を始めたのですが、「とにかく使ってもらいたい」という思いがありました。さきほど申し上げたように、Visioは業務フロー図の作成において力を発揮しますが、日本では業務プロセスをVisioで作成するメリットを伝えきれてないという感覚がありました。そこで「まず使ってもらおう」ということで、テンプレートの無償提供を始めたのです。

以前は業務フロー図をExcelで作る方が多かったのですが、「これを修正するときどうしよう」という問題が生じる場合が多くありました。こういう場合も、Visioを使えば、修正がしやすくなるという利点があるのです。

――Visioを使ったユーザーの反応はどうだったのでしょうか。

米国の事例にもあるように、内部統制においてはとにかく文書化が大変な作業となります。そうした状況では、業務フロー図とリスク・コントロール・マトリックス、業務記述書の3点セットの整合性を保ちながら修正ができるVisioは、非常に評判が良かったのです。

冒頭に申し上げたように、Visioは他のOffice製品との連携ができるため、IT部門以外の人、例えば財務や経理といった部門の人にとってもなじみやすいという利点があります。ExcelやPowerPointと同じ様なユーザーインタフェースになっているため、導入の際の教育がスムーズにいくというメリットもあります。

専用ツールを導入した場合、それを使いこなすための教育が必要となりますが、Visioの場合は比較的簡単に導入が行えるのです。

また、なじみやすいという以外にも、文書化の専用ツールを導入した場合に比べ、コストを5分の1~10分の1に抑えることができるのも大きなメリットです。そうした意味では、内部統制対応に際して、あまり大きな投資ができないというような企業にとっても、非常に大きな力になるのではないでしょうか。